第42話 魔王種


ショッピングモール前には、異常を聞き付けてマスコミや警察や野次馬でごった返していた。


「ご足労願いまして申し訳けありません。獅童様。」


「構わねぇよ。それで状況は?」


「何らかの方法で出入りを封じているようで、何が起こっているのかは不明です。」


「出入りが封じてあるねぇ。朱莉、調べてくれ。」


朱莉は使い捨ての虫眼鏡の形の魔道具を取り出して調べる。この魔道具は摩天楼ショッピングで購入したものである。


「これは結界のようね。解除しないと中には入れないわ?」


「中に入るのは難しいようだな。」


「大変だ! 蓮司! 中に萌衣の嬢ちゃんと娘も居る!」


副ギルドマスターの歓崎真かんざきしんが息を切らせてやってきた。


「何!? どういうことだ!」


「クランでクリスマスパーティーするってんで全員で買い物に出かけたらしい。」


「龍人は一緒か!」


「あぁ、一緒らしい。それが救いだな。」


「そうだな。龍人が一緒なら解決出来るだろうが状況が知りてぇところだな。」


「それなら私が取ってみるわね。」


「頼む。」


朱莉は魔力操作に長けている。いざと言う時の為に魔力の繋がりを通して念話できるように練習していた。


(朱莉さん、どうしたんですか?)


「繋がったわ! 悪いのだけど蓮司と真にも繋いでくれないかしら?」


(蓮司さん、真さん、聞こえますか?)


「おう! 問題ねぇぞ!」


「こちらも聞こえている。」


「本題に入るわね。今、龍人くんはショッピングモールの中よね?」


(ショッピングモールの中に閉じ込められていますね?)


「外に情報が一切無くて困ってるの。状況を教えてくれないかしら?」


(良いですよ。現在ショッピングモールはテロリスト〈悪の猛獣使い〉に占拠されています。)


「はぁ! テロリストに占拠されているだと! 大丈夫なのか!」


(クランメンバーと従魔達で俺が居る場所以外は制圧済みのようです。)


「何だ!? 龍人が手こずるようなのが相手なのか?」


(ハハッ! 今まさに激闘の最中です。ショッピングモールで上級迷宮の魔物より高ランクの魔物と戦うとは思っても見ませんでした。建物内というのがネックですが、認めさせて従魔にしてやりますよ。)


「上級迷宮以上の高ランクの魔物ですか!? それが本当なら大変な事になるわね。それでこの結界は解除出来ないかしら?」


(この結界は敵が持つ魔道具によるものです。倒して奪うか、相手が解除しないと難しいですね。少々時間を頂ければ全て終わらせます。ショッピングモール内は死者多数で酷い惨状ですので結界が解除されたら後はお願いします。)


「わかったわ。伝えておくわね。だから龍人くんは負けないように頑張りなさい。」


(フフフ、了解です・・・)


念話が切れた。


冒険者ギルドの職員に事情を説明した。


「魔物使いやテイマーが多く所属するテロリスト集団ですね。まさかテロリストがショッピングモールを占拠するなんて・・・」


「あらかたは制圧できたようだが、厄介な魔物が居るらしく結界が解除されるまでもう少し時間がかかるようだ。ショッピングモール内は怪我人や死者が多く居るようだ。それを踏まえて準備してくれ。」


「情報ありがとうございます。関係各所と連携を取り迅速に行動します。そして、クラン〈豪傑の集い〉に依頼を出させて頂きますね。」


終わった後の後始末の為にそれぞれが動き出した。



◆◇◆◇◆◇



悪魔が切り札として召喚した2体の魔物。その魔物から発せられる威圧に耐えられる者など極僅かだろう。


【鬼術-〈獄氷〉】  [氷獄の絶壁]


パキンッ!!


客の前に氷の壁を造る。戦いに巻き込まれて客が死ぬのは目覚めが悪い。


先ずは【魔物鑑定】


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[名 称] グラトニースライム

[ランク] AA-

[レベル] 87

[称 号] 『魔王種』

[エクストラスキル] 『暴食』

[スキル] 『分裂』『超吸収』『打撃耐性』『強酸生成』『滅星』

[弱 点] 聖、神聖

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[名 称] 骸骨戦王

[ランク] A+

[レベル] 71

[エクストラスキル] 『骸骨の王冠』

[スキル] 『骨操作』『骨強化』『骨修復』『骨合成』『骸骨戦兵』

[弱 点] 聖、神聖

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[名 称] 上級悪魔

[ランク] B+

[レベル] 48

[スキル] 『洗脳』『転移』『下級悪魔召喚』『獄炎魔法』

[弱 点] 聖、神聖

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うん? 悪魔が従えている訳では無い? どういうことだ??


ズシャッ!!


「ガハッ! 待て!? 何故我を攻撃する!??」


グラトニースライムの触手が悪魔の腹部を貫き持ちあげる。


「まさか!? や・やめろぉ~」


グシャグシャグシャグシャ


誰に渡されたかわからないが、初めからこいつの餌にするつもりだっただろ!


上級悪魔を喰らって、更に存在感が増したグラトニースライム。先程までとは別物の魔物と言って良いかも知れないな。


「火凜には骸骨を任せる。出来れば従魔にしたいから、屈伏させておいてくれ。『従魔強化』」


火凜を強化させる。


「屈伏であるか。面倒でだな!?」


「火凜が屈伏が難しいと言うなら倒してしまっても良いぞ。俺は骸骨よりやっかいなスライムを屈伏させてみるけどな。」


「出来ないとは言っておらん! 少し面倒だと言っただけだ!」


俺はグラトニースライム、火凜は骸骨戦王へと向かって走り出した。

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