第43話 決戦 ①


カタカタカタカタ


地面から骸骨が涌き出てきた。


「眷属の召喚と言う所か。面白いでは無いか。それがお主の力か。 フン!」


ズガン!!


バキバキバキッ!!


火凜は巨斧を振るい涌き出て来た骸骨を粉砕する。


「カタカタカタカタ」


骸骨戦王が口をカタカタと震わせると粉砕したはずの骸骨が急速に元に戻っていった。


「厄介な!」


火凜は何度も巨斧を振るい骸骨を凪ぎ払う。そして、次第に違和感がおしよせる。


「粉砕され再生させる度に強化されるようだな!?」


容易に粉砕されていたはずの骸骨が次第に原型をとどめるようになっていた。


フン!!


巨斧が紅く染め上がる。巨斧が熱をおびていく。その一振りは骸骨を熱し斬り燃え灰へと変える。


「遠慮する事は無い。数と力、全てを使って我を退いて見せよ! 我はその全てを砕きお主を屈伏させて見せようでは無いか。」


「カタカタカタカタ」


「そんな事も出来るのか!?」


骸骨戦王は灰になった骸骨を再生させ合体させた。そして、更に眷属を召喚させた。合体させた骸骨は一回り大きくなった。


眷属を上位種へと進化させた!?


魔物はそう簡単に進化するのはあり得ない。どうやら特殊な能力を持っているようだ。


「ククク、まだまだ隠し持っていそうだな。こちらも色々と試したいと思っていたのだ。心行くまで楽しもうぞ!」


それから骸骨戦兵と火凜が激しくぶつかりあった。



◆◇◆◇◆◇



肌にピリピリと感じる凄まじい威圧に圧され無いように身体に力を入れる。


魔王スキル【万王神脚】


魔王スキル【万王神脚】で拘束した敵のテロリストを回収して[氷獄の絶壁]の外側へと移動する。首魁だった少女は別な場所に移動させている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

魔王スキル【万王神脚】

・どんな場所でも神速で駆け抜ける神の足。

・どんなものにも神撃の一撃を与える神の足。

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「えっ!?」


急に現れた俺に驚く少女達。少女達は高ランクの魔物に立ち向かっていた少女達だ。


「話は後です。この者達を見張っていて下さい。」


拘束されたテロリストを投げ捨てる。魔王スキル【七魔獄糸】で造った紐である。麻痺効果を付与しているので拘束から逃れる術はコイツらには無い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

魔王スキル【七魔獄糸】

・万能な魔法の糸を生み出す。

・魔法の糸に七種の効果を付与する。

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再度【万王神脚】でグラトニースライムの正面へ移動する。グラトニースライムは移動せずに俺を待っていた。


「待たせて悪いな。早速初めようか。」


俺の呟きに答えるように、行動に移すのはほぼ同時だった。グラトニースライムは無形だが、だいたい半径1m程の球体の魔物である。ただし、球体から無数に飛び出て来る触手は一般人であれば見えぬ程のスピードと触れただけで弾け飛ぶ程の威力を誇っている。


二人は確かめるように攻防を繰り返す。二人は全く本気では無く、少しずつ激しさが増している。


端から見ると暴れ狂う暴風のようだった。


「やっぱり身体の調子が悪いな。思うように身体が動いてくれない。荒療治になるが戦いながら合わせるしかないな。」


拮抗していたように見えたが次第に天秤が傾き始めていき、そして・・・


「グフッ!」


ズドドーーン!!!!


グラトニースライムの触手が腹部に突き刺さり吹き飛ばされた。鍛え抜かれた腹筋のお陰で触手が腹部を貫通することは無かったが凄まじい衝撃が身体を巡った。


「ククク。そんなに甘くは無いよな。」


身体の調子を考えて、なるべくスキルの使用を控えていたが、流石にこの魔物が相手では無理だったようだ。相性も良く無いしな。しょうがない・・・


エクストラスキル【闘峯身氣とうほうしんき


以前とは段違いの力が身体を満たして行く。溢れ出しそうな力を即時に抑え込む。


ダン! ズウゥーーン!!!!


神速で移動してグラトニースライムに強化した拳を叩き込んだ。グラトニースライムは少し圧されるがダメージは余り与えられていないようだ。


【黒雷】


バリバリバリバリ


「駄目か。強力な打撃耐性に加え、黒雷ですら食べる暴食の能力は鉄壁だな。魔法系は食べて吸収して自身の糧とする。お前を屈伏させるのは大変そうだ。」



◆◇◆◇◆◇


「何故俺は生きている?」


「無理をするな。ポーションを使ったが完全には治せてはない。生きている理由は魔物と戦ってくれている少年のお陰だ。」


「少年? あれ? 何で龍坊が!? そうか、龍坊が居るなら任せておけば安心か?」


ボディーガードで雇っていた冒険者が一瞬驚いた表情した後に、何処か納得した表情を見せた。


「あの少年がどなたか知っておられるのですか!」


「彼女達はあの後に魔物の標的とされ、間一髪であの少年に助けられたのだ。」


その冒険者に前のめりになる彼女達のフォローを入れておく。


「私のクラン〈豪傑の集い〉のクランマスターについてはご存知ですか?」


「それは当たり前だろう。日本でも数少ないSランク冒険者でもある獅童蓮司殿であろう?」


「そうです。そのクランマスターがまだ正式にクラン申請していないクランと同盟を結んだのです。そのクランのマスターがあの少年真甚龍人です。そして、クランマスターの娘さんである獅童萌衣嬢の婚約者であり、マスターが自身の息子のように可愛いがっている少年です。」


「婚約者!? 息子!?」


「知事、あれが一握りの高ランク冒険者の戦いですよ。私達とは次元が違う生き物です。マスターが俺以上の化け物と言うのも頷けます。」


「獅童蓮司殿が化け物と呼ぶ少年か。目の前の光景を見て居なければ信じられないことだ。」


「知事、あれはまだ遊んでいる段階です。お互いに相手を探っている状況です。」


「あれで・・・」


そうなのだ。私でも辛うじて見えているだけだ。一般人であれば何がおきているかわからないだろう。


「あの! 婚約者が居るって本当ですか!」


ガシッ! グラグラ!


龍坊の事を聞いて来た少女が鎧を掴み揺らして来る。揺れる度に身体に痛みが走る。


「詳しいことは私にはわからないかな?」


これ以上、関わると面倒だと思い誤魔化したのだが


「あっ!? もう龍人くんが戦ってるよ!」


「少し遅かったですね。やはりこの結界は入る事はできても出られないようですね。」


「本当だ!? でも良いんじゃない? 下はオジサン達に任せて来たんだしね。」


「どちらにしろ建物からは出られない訳ですから、何処にいようと余り変わらないです。」


うっ・・・何故このタイミングで・・頭が痛くなる。


「御嬢!? 何故ここに・・・」

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