第4話 黒い卵
フンッ!!
氷で創られた槍を横凪に払うと、刃先から氷の刃が発生してゴブリンを切り裂き周囲を凍らせた。氷の刃は鋭く容易にゴブリンを切り裂いた。
へぇ~この場合だと槍は俺が望まないと消えないんだな。便利だ。
【ーーレベルが上がりました。】
【ーーレベルが上がりました。】
【ーーレベルが上がりました。】
【ーーレベルが上がりました。】
ギャア!!!!
ゴブリンを殲滅し終えると、体格が大きいゴブリンが現れた。今までのゴブリンとは違い武器と防具を装備している。やっぱり可笑しいな? この迷宮はゴブリンしか出ない筈なんだが? どっからどう見てもゴブリンの上位種だよな?
スキル『魔物鑑定』
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魔物鑑定 『ゴブリンリーダー』
[ランク] 『E』
[ステータス]
L V 5
H P 50/50
M P 10/10
STR 46
INT 21
VIT 38
MND 18
[スキル]
『指揮』『腕力上昇』
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やはり上位種だな。これは危険何じゃないか? 流石に一般生徒が上位種を相手にするのは難しいだろ。それが5体も出る・・・異常なのは間違いない。
ギャギャガ!!
おっと、危ない。考え事は後にして倒しておくか。
スキル『黒魔鋼』
氷の槍を地面に突き刺し、魔力で身体を鋼のように硬くする。次はこのスキルを試そう。
ガン!
あの巨体から振り下ろされた剣の側面を弾いたけど、痛みや衝撃が一切感じなかった? これならまともに受けても問題無いかな? しないけど。それにしても武器を持っているけど、全くもって脅威に感じない。
両腕を鋼化して攻撃にも使えるか試して行こう。
ドン! バキッ!
攻撃にも使えそうだが、攻撃面では氷魔槍の方が有効。だが、場合によってはこちらの方が良い場面もある。武器の携帯が禁止された場所で戦う場合だな。それに格闘技との相性が良い。
ふと、前世で出会った戦友の顔が浮かび懐かしさを感じた。鋼の手刀で核を貫き、鋼の拳で砕き、スキルを試しながら5体の上位種を仕留めた。
【ーーレベルが上がりました。】・・・
【ーー条件を満たしました。スキル『魔力回復力上昇』を習得しました。】
何とかなったが従魔契約でステータスが上昇したのと、強力なスキルのお陰だな。
そろそろ戻るかな
『キャアーーーー!!!!』
奥から女性の悲鳴が聞こえた。俺は周囲を警戒しつつ悲鳴が聞こえた方向へと駆け出す。
悲鳴がした場所に来たんだけど、これはちょっと不味いな。この感じは《死》の気配、前世で幾度も経験した死地だ。このまま進めば死ぬ・・かも知れない。
はぁ~でも俺は行くんだろうな。結局、生まれ変わっても根本的に何も変わらない。あんな悲鳴を聞いてしまえば放っておけない。
肌がヒリ付く気配が漂う洞穴に足を踏み入れる。奥に進む程におぞましい気配が強くなり足を重くさせる。
「ダレカ・・タスケテ・・・」
「オネガイ・・ダレカ・・・」
何だあれは!? 洞穴の奥には何かの祭壇のような物があり、その祭壇の中心には巨大な黒い卵のような物が鎮座していた。本能が危険だと訴えて来る。
魔物は4体、スキル『魔物鑑定』の結果〈ゴブリンシャーマン〉が1体、〈ゴブリンジェネラル〉が2体、〈ゴブリンキング〉が1体だった。
捕まったのは学生5名。男子生徒が3名と女子生徒が2名で男子生徒は3人は裸にされ殴られて酷い状態だった。女子生徒の方は裸にされているが暴行は受けておらず恐怖で震えている。そんな二人を面白がって見ているのが2体のゴブリンジェネラル。
厄介なのが男の3人だな。しょうがない。
〈黒金と白雪は動けるか?〉
〈ギャガ!〉
〈俺が攻撃して撹乱したら、黒金と白雪で倒れている人間を担いでここから離れろ。〉
〈ギャガギャガ!〉
さぁ、始めよう。
4つの氷の槍を生み出し放つ! 同時に1本を武器として発現して駆け出す。ゴブリンシャーマンは氷の槍に貫かれ倒れる。2体のゴブリンジェネラルにも突き刺さるが倒せてはいない。だが氷で動きを封じる事には成功した。ゴブリンキングは氷の槍に気づき大剣で砕かれてしまった。
「行け!」
黒金が男を二人担ぎ上げ、白雪が一人を担いで予定通り洞穴の出口へと走って消えていった。
「何している? お前らも行け!!」
ブルブルガクガク
「・・・・・・」
クソッ! 二人を抱き抱え出入口に向かって走りだすが少し遅かったようだ。先程まで祭壇の上にいたゴブリンキングが道を塞いで佇んでいた。
「モウオソイ。スベテハテオクレダ。」
パキパキパキパキ
ゴブリンキングが言葉を発した事に驚愕したが、それどころでは無かった。黒い卵に罅が入り、それから漏れだした気配に背筋が凍った。
ビキビキ パリン!!
ざわざわざわざわ
ブシュッ!!
バリバリ ゴリゴリ グシャグシャ。
何が起きた? 気づいたら、ゴブリンジェネラルと入口にいたゴブリンキングが喰われていた。見えなかった・・・
それにしても何だコイツは!? 全身が黒く、頭には3本の角、瞳は紅く、背には4枚の翼、臀部には鋭い尾まで持っている。こんな魔物は聞いた事も見た事も無い。
フッ
ヤバイ!
スキル『黒魔鋼』
バキッ! ドゴォーン!!!
グファッ!!!!
氷の槍でガードするが、魔物の拳は氷の槍を容易に砕き鋼の身体をも貫通してみせた。転生して初めての大きなダメージを受けて俺は悶絶する。
させるかよ!
震えている少女に標的を定めた魔物に氷の槍を放ち牽制する。効果は低いが足止めにはなる。
ヒッ!
「大丈夫です。落ち着いて下さい。」
はぁ~情けないな。前世の俺であれば彼女達を怖がらせずにすんだのにな。俺も鍛えて来たが流石に前世の強靭な肉体を取り戻すにはまだまだ時間がかかる。俺は二人の少女の頭を優しく撫でて落ち着かせる。
「俺がアイツを引き付けますから、そのうちに逃げて下さい。でも、その前に俺が着ていた物で恐縮ですがこれを着て下さい。」
急いで上着を脱ぎ二人に渡す。流石に裸のままでは可哀想だ。
「必ず逃げる時間は作りますので逃げて下さい。良いですね。その時が来たら振り返らず全力で逃げて下さい。」
そろそろ時間稼ぎが終わる。少女達を背にして奴と相対する。さぁ、久し振りの死地を始めようか。
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