第10話 黒い悪魔 ①


「あのぅ・・真甚くん、私の家に商品を卸さない?」


うん?


「どういうこと?」


「真甚くんの能力で造ったポーションとか武器や防具を家で取り扱いたいんだ。駄目かな?」


雫さんの家で??


「問題無いけど雫さんの家に卸せば良いの?」


「えっ!? 真甚くん二階堂グループを知らないのですか?」


二階堂グループ??


「ごめん・・・」


「二階堂グループは日本有数の大企業ですよ。大きい迷宮がある場所には必ず支店をおいている程に日本でも影響力が高いのです。」


えっ!? そんな凄い家の子なの!?


「何言ってるのよ。それこそ萌衣のところなんて、日本で一・二位を争うクランのマスターの娘じゃない。」


ちょっと待って・・・どうなってんの!?


「ハハハ、そんな二人と友達になれるなんて嬉しいなぁ・・・」


「全く嬉しそうじゃないわね。」


「いずれ両親には逢って貰いますね。」


嫌々、遠慮願いたい。


「え~とね、俺に家族は一人も居ないんだ。だから俺には何の力も無くてね。学院を卒業したら冒険者になって平穏に暮らすくらいの考えしかないんだ。」


『それなら私達が家族になります!』


二人の声が綺麗にハモった。嬉しい気持ちになった。


「ありがとう。それで話しを戻すけど、雫さんの家に商品を卸すのは問題無いよ。それと二人にプレゼント。」


探索時に着る用の防具一式をプレゼントした。雫は青で萌衣は黄色をモチーフにしている。蟻甲殻で所々補強しているので、今まで着ていた物より性能は高い。


「魔糸を使用しているから、サイズは自動で調整してくれるみたい。実を言うと俺もお揃い。昨日作ってもらった。」


「ーー格好いい! ありがとう。」


「大切に着ますね。」


それから毎日のように迷宮へと通い探索を進めた。魔物の討伐数は回を重ねる毎に凄い勢いで増えていった。


「この蟷螂剣凄い斬れ味だね。その上軽いから使い安い!」


蟷螂剣には『斬撃上昇』がついている。雫さんの剣の腕なら大抵の魔物は斬れる。


「蜂毒槍も使い安いです。ランダムで麻痺効果も付与出来ますしね。」


萌衣さんの槍も様になってきた。


「土日で迷宮のボスに挑む。あの迷宮では物足りなくなって来たからね。それで雫さん、もの凄い金額のお金が銀行に振り込まれていたんだけど」


「あぁ、結構良い値段で売れたみたいだよ。それでこれからご贔屓にって言ってた。」


「後で二人にも渡すね。」


「いらない。」


「私もいらないです。」


そんなぁ


「それなら貯めて家を買おうかな。寮だと訓練するのに不便だしね。頑張ろう!」


「そう言う事なら私も手伝うわ」


「私も手伝います。」


土曜日の朝早くに集合して迷宮へ向かい、黒金と白雪を召喚して探索を開始した。黒金と白雪もレベルが上がり、最初とは見違えるように強くなっていた。


蟻、蜂、蜘蛛、蟷螂の素材を集めながら奥へと進む。


「そろそろお昼にしよう。何が食べたい?」


画面を出して、メニュー表を見せる。探索の為に大量に食材を入れていた。最近、能力が成長してきたようで〈食堂〉で作れるメニューが増えて来た。きっと施設にも熟練度のような物があるのかも知れない。


「私はハンバーガーセット!」


「私はカツ丼セットでお願いします。」


「俺はおにぎりセットにしよう。」


黒金と白雪は漫画肉のような肉を頼んでいた。本当にこの能力は便利だよな。魔力は消費するけど、色々と出来る。減ると言っても、今の俺の魔力だと減っても直ぐに回復するから正直、デメリットが無い。


ゾクゾク・・・


何かヤバイ感じがする。この感じは久しぶりだ。


「ストップ! ヤバそうなのがこっちに来る。悪いけど俺に任せてくれないか?」


「一人で戦うの?」


「私ではお邪魔になるのでしょうか?」


「違う、違う。強い魔物っぽいから従魔契約を試そうかなって。従魔契約の条件が俺に屈伏させる事と認められる事なんだ。だから、俺一人で戦いたい。」


何かあの気配を感じた時に従魔契約が過ったんだよね

。直感が契約しろと言っている。どんな魔物かわからないけど。


ドサドサバキバキドスンドスン


森の奥から大きい何かが近づいて来る。直ぐにそれが何なのか目の当たりにする。


「く・・黒い悪魔!? 何でこの迷宮に!?」


「高難易度迷宮で生まれた突然変異の魔物。高ランク冒険者が多く犠牲になった魔物です。」


有名な魔物何だな。だけど、負ける気がしない。


俺もこの一週間遊んでいた訳ではない。4人に指示を出しながら己を鍛えていた。


ドドドドド・・・


「止まれ!〈鉄壁〉」


ズン!!


「ギギギィーー!?」


巨体の魔物を受け止める。黒い悪魔と呼ばれる魔物はどうやら巨大な蜘蛛の魔物らしい。違う所と言えば悪魔のような翼が生えている点だ。


キン キン ガンガン 


〈シールドバッシュ〉


ズガン!!!!


八本の脚から繰り出される攻撃を盾でいなし、次の攻撃に合わせて〈シールドバッシュ〉で弾き飛ばす。すかさず盾を仕舞い間合いをつめる。


スキル『黒魔王鋼』


拳を鋼化する。


スキル『怪力魔王』


力を引き上げる。そして、体勢を崩した悪魔に叩きつける。


ドゥン! メキメキメキメキ


「ギャアアアアーーーー!!!!」


悪魔の悲鳴が森に木霊した。固有スキル『超回復』があるからと、エクストラスキル『闘峯身氣』を発動して身体に負荷を与えて回復するを繰り返した。そのお陰で体力、筋力を効率良く鍛えられた。まだまだ鍛えたらないが、それは追々頑張るつもりである。


その他にもスキルについても試している。わかった事はスキルにも熟練度がある。使えば使う程に色々と出来るようになる。


もう二度とあんな思いはしたくないからな、出来るだけ強くならないと何も守れない。


だからこそ、強さに貪欲になろう。

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