第14話 ドナドナ

クランハウスの購入と退寮について話した。


「なぁ!? 聞いて無いですよ!」


「そうです!」


怒られた。


「ごめん。暫く迷宮の探索は止めて訓練に力を入れたかったから、その為の場所を確保しておきたかったんだ。1週間の休養中に準備を済ませて起きたかったから急いだんだ。」


土日の探索の後に1週間の休養を取ることにした。黒金の怪我もあったが、レッドビートルとの戦いは二人にとっても負担が大きく疲労が隠せていなかったからだ。


「それでも一緒に探したかったな。」


「私もです。」


「でもね、結構良いところ何だ。俺が思っていた何倍もね。来週から訓練を初めるから、楽しみにしておいてね。」


俺は大満足だけど、二人にも気にいって貰えると嬉しいな。


「待てないわね。」


「そうですね。今日の放課後に寄らせて頂きますね。」


えっ!? 今日は


「ごめん! 今日は足りない物を買いに行きたかったんだ。だから」


「問題無いわよ。私が色々と手配しておくわ」


「それは悪い」


「大丈夫です! 私もお手伝いします。」


二人には逆らえる気がしない。


放課後、雫さんが用意した車でクランハウスへと向かった。


「随分と離れているのね?」


「うん。黒金達目立つでしょ。だから訓練場が外から見えない場所だとそこしか無くてね。」


「それは納得ですね。騒ぎになったら困りますしね。」


車で20分程走って目的地に到着した。


「ここが購入したクランハウスだよ。朱音ありがとう。戻って良いよ。」


留守番を朱音に頼んでいた。いずれは防犯システムを整えるつもりでいる。


「皆さんもお待たせしてすいません。」


雫さんが連絡して来て貰っていた人達にお辞儀してクランハウスへと案内する。


「随分大きいのね?」


「部屋は全部で20部屋あったよ。その他にキッチン、食堂、応接室、会議室、資料室、温泉、屋内と屋外訓練場だったかな?」


「お金は足りたの!?」


「郊外だと言うのもあって、お手頃だったんだけど全然足りなかった。けど冒険者ギルドでローンを組んでくれたから何とかね。それにショップも施設も大きくなったから余裕で返せると思うよ。」


ピクッ


雫さんが連れてきた男性が興味を示したようだ。だけど、気づかない振りをして先に進める。


「それで自分の部屋の家具とキッチン用品、温泉で使う備品を買いたかったんだ。」


「それは私に任せて頂戴。内牧さん、後は任せるわよ。」


「お任せ下さいませ、お嬢様。」


えっ!? 急な展開に頭が全くついていけないや。


「さてと、真甚くんは私の家に行くわよ。中条さん直ぐに車を用意してくれる。」


「そうだ! 明日は私の家にも来て下さい。良いですよね?」


俺は訳も分からず車でドナドナされて連れていかれた。正直言って何が何だか分からない。


「え~と、ここは?」


「私の家!」


「何で!?」


「何でって? お父さんに会って貰おうと思ってね。」


俺・・何も聞いて無いんだけど? 可笑しく無いかな??


「心の準備が・・・」


「良いから早く行こ!」


誰か助けて下さい。中条さんという仕事が出来る風の綺麗な女の人に助けを求めるが申し訳無さそうに視線を反らされてしまう。


そして、今・・・


「ふ~ん、それで君は娘の何なのかな?」


怖い! 凄く睨まれてるんだけど!


「同じクラスの友達で、迷宮探索で一緒のグループに入っています。」


「真甚くんは私の愛する人よ!」


な・何言ってんの! 今の状況わかってる!? 俺殺されそう何だけど!


「雫さん、冗談はやめて」


「冗談じゃ無く本気よ! お父さん、私は真甚くんが大好きなの。だから、真甚くんのクランハウスで一緒に暮らしたいの! 良いでしょ?」


ベキッ!


ヒィィ!!


だから俺は何も聞いて無いんですけど!


「許さん! 何処の馬の骨かわからん奴に娘は渡さん! 雫ちゃんはまだ10歳何だぞ。一緒に住むとか早すぎます!」


ごもっともです。正論過ぎて何も言えない。


「お父さんが許してくれないなら家を出るわ。」


家を出る? 


「それは絶対に駄目だよ。こんなに大切にしてくれる家族が居るのに家を出る何て俺は反対だ。俺が原因なら俺は君とは一緒に居られない。それに俺もお父さんと同じ意見だよ。」


「うぅ・・・だって・・」


俺には全く無かった物だけど、きっとそれは雫さんにとって大切な物だから、俺の為に捨てて良い物ではない。


「雫さん、ごめんね。でもね雫さんを大切に思う家族が居るってとても大切なもの何だよ。俺はね、職業が『従魔士』になった瞬間に家族から捨てられたんだ。家に居ても居ないものとして扱われ、家で俺に感心を持ってくれる人は一人も居なかった。最後には家名を取り上げられ、適当に造った家名を与えられ、二度と以前の家名を名乗れなくなった。そして一人になった。雫さんには俺のようになって欲しくない。孤独って、凄く辛いんだよ。」


きっと、前世の記憶が無ければ耐えられなかったと思う。まぁ、あの家と関わりが断てて嬉しいんだけどな。


ハァ~でも、無意識で話してたけど、俺は寂しかったんだな。前世でも親に捨てられ、今世でも親に捨てられる。だから、雫さんの事が凄く羨ましくなってしまう。親の愛って・・・


ビキビキビキビキ


「お父さん・・・誰がお前のお父さんだ! 許した覚えは無いぞ!!」


ヒィィ!


「ごめんなさい! そんなつもりは全く無かったんです! そろそろ私は」


「あらあらどういう状況かしら、アナタ。」


「ヒィッ! 優香が何故ここに」


雫さんのお母さんかな? 何処となく雫さんに似ている。


「何故って雫に呼ばれていたからよ。それでこれはどういう状況かしら? 中条、説明を」


「はい! 奥様」


コソコソコソコソ


俺は一体いつ帰れるんだ?

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