第28話 お願いとお願い。

「そうだった。預かっていた4人だが、今日でCランクに上がるみたいだぞ。スゲェ優秀だって、うちの奴らスカウトしてくれって煩いのなんの。」


ダンジョンへ入る条件が冒険者ランクCの護衛だから、蓮司さんにお願いして黒金、白雪、朱音、久遠を冒険者登録して最速でCランクにしてもらうように頼んでいたのだ。


「私の方にも報告が上がって来ているわ。とても優秀で是非にってね。」


人化したら、美男美女だからそういう面も関係しているのだろう。でもこれで、うちのクランだけでダンジョンに入れるようになった。


「4人はあげませんよ!? 4人は私の大切な従魔なんですから!」


「わぁってるよ! それだけ優秀だって話だ。それでだ、話が変わるんだが龍人にお願いがあるんだわ。」


蓮司さんが急に真面目な顔になりお願いがあるという。普段は一切無い真面目な顔に聞くのが少し怖くなる。


「お願いですか? 日頃、色々とお願いしている立場なので、出来る事ならお手伝いさせて頂きますがお願いを聞いても?」


「暫く、俺が連れてくる3人をここで預かってくれないか?」


誰かわからないけど、3人をここで預かる? 黒金達の件があるから断りずらいんだが!


「詳しい事を伺っても良いですか?」


「私が説明するわね。預かってもらうのはアメリカに居る知人の奥さんとお子さんの3人なの。その知人は例のダンジョンの事件に関係している組織の調査を本格的に始める前に家族を安全な場所に避難させたいと連絡を頂いてね。依頼と言う形式で受ける事になったの。」


「それなら蓮司さんのところで預かった方が良いのでは?」


「その組織に問題があるのよね。全てが謎に包まれた組織で構成員の人数も規模も不明。わかっているのは全世界で活動していて、相当の手練れが所属そていること。うち見たいな大所帯だと組織の者が紛れ込んでいても不思議では無いの。」


あぁ、なるほど。


うちのような少人数のクランの方が安全と言うことか。誰が組織のスパイかわからない状態で守るのは骨がおれる。それにずっと仲間を疑い続けたくないよな。


「預かっている間は俺が頻繁にここへ来て護衛してやろう。それと御嬢さん達は龍人と同じ学校に編入させる。学校での護衛と御嬢さん達は冒険者志望だから訓練をつけてやってくれ。勿論、気を使う必要は無いから遠慮なく鍛えるようにな。」


「蓮司さんは今も頻繁にここへ来ているじゃ無いですか。でも、まぁ、色々と御世話になっているので引き受けさせて頂きます。その代わりに報酬はいりませんので、私を上級迷宮に連れて行ってくれませんか?」


前々から考えていた事を行動に移す。


「理由を聞いても良いか?」


「従魔のレベル上げと新たな従魔の獲得です。戦力は多い方が良いでしょ?」


「面白ぇな。上級迷宮は俺達でも生きるか死ぬかの場所だ。だが今の俺の力を試してぇのも事実だ。朱莉、龍人を上級迷宮に連れて行く方法はあるか?」


朱莉さんは何やら考えた結果


「私達のパーティーに荷物持ちとして入ることね。確か素材を多く持てる能力があったわよね?」


摩天楼に預ける事が出来るので頷いておく。その能力を開示して荷物持ちとして臨時で加入するというのが朱莉さんが考えた方法である。


子供が上級迷宮に入いるには、蓮司さんのクランの信用と俺の有用性を冒険者組合に示す必要がある。それほど上級迷宮の扱いは冒険者組合でも慎重になる案件なのだ。


「今回は収納能力を公開してでも上級迷宮には入っておきたいです。」


「わかったわ。上級迷宮の魔物の間引き依頼に同行できるようにしておくわね。準備が出来次第連絡をいれるわ。」


「ありがとうございます。私の方も準備はしておきますね。」


それから2週間程して、待ちに待った連絡が来た。どうやら冒険者組合から許可がおりたらしく次回の依頼に参加できるようになった。


4人が冒険者ランクCとなって、初級迷宮の探索も開始しているけど新たな従魔は見つからなかった。それでもクランメンバーの訓練には最適なので定期的に皆を連れて探索している。


そうそう蓮司さんのところのサブマスターの二人は何と歓崎麗さんと宝生椿さんのお父さんだった。これには本当に驚いた。


色々と問題はおきたけど予定通りその二人に加え、シスコンを患った萌衣の兄に魔改造を施した。凄く疲れたとだけ言っておこう。


それからはクランの仕事や従魔やクランメンバーの訓練にせいをだし、頻繁に訓練にやってくるようになった蓮司さん達の相手をしながら日々を過ごしていた。


そして、ついに上級迷宮の探索日の日をむかえた。

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