第29話 上級迷宮〈煉獄火山〉
そこは何もかもが違っていた。上級迷宮とはここまで異次元な場所なのか? 俺はこの光景に唖然としていた。
「ククク、これには龍人も驚いただろう!?」
「こんな光景を見て驚かない人はいませんって。」
前方には今まさに噴火している火山が見え、マグマが吹き出し紅蓮の炎が吹き荒れていた。その火山の周辺を飛び回る魔物も何処か幻想的に見えていた。
「貴方達、さっさとクールポーションを飲みなさい。準備が出来たら出発するわよ!」
摩天楼ショップで販売されているクールポーションは暑さを和らげる効果があり、半日も持続してくれる。今回のような環境の迷宮には役に立つアイテムである。
「いやぁ~これは快適過ぎるだろう!? 今までは本当に地獄だったんだぞ!」
入口で軽く40℃は越えてるし、奥に進めばこんなものでは済まないだろう。ただ立っているだけでも体力は消耗し、魔物と戦うとなったらそりゃあ地獄だろう。
「快適で良かったですね。それで今回の依頼は魔物の間引きしながら、俺の従魔探しで良いんですよね?」
「魔物の間引き出来るならそれで良いわよ? 討伐証明の部位だけ忘れずに回収すれば後は好きにして良いわよ? 私達はサポートに付くから、後は龍人くんに任せるわよ。」
今回の探索メンバーは朱莉さんが気を使ってくれたようで、俺と従魔以外は蓮司さんと朱莉さんの二人しかいない。ようするに依頼をこなしさえすれば、後はある程度は好きに動いても良いみたいだ。朱莉さんには感謝しかないな。
「俺と黒金が前衛、朱音は斥候と撹乱、久遠は遊撃、白雪は遠距離から魔法で行く。隊列を組んだら出発する。」
火山の前には広大な樹海が広がっており、クラン〈豪傑の集い〉ではその樹海の浅層の魔物を間引いているようだ。なので燃え上がる火山周辺までは行った事が無いらしい。
盾と槍を装備して樹海へと足を踏み入れる。樹海には濃い魔力が立ち込め従魔は居心地が良いと言っている。4人は人の姿で配置につき油断無く周囲を警戒している。
「前方500m先に1体の魔物の反応有りです。」
「ありがとう朱音。そこまで案内を頼む。」
樹海の中を軽快に進み、あっという間に目的地まで移動した。サポート役の二人も問題無く着いて来れている。流石は日本を代表するクランのマスターである。
『魔物鑑定』
「ファイアーラット、ランクDのレベル32の魔物だ。スキルは『かみつき』『火毛』『火爪』だから爪に注意して行こう!」
体長1mはある大きな鼠の魔物だった。毛は赤く剛毛なのが特長かな? 瞬時に魔物鑑定の情報を共有して対策と作戦を指示する。黒金と同じランクだが脅威は感じ無いかな?
《挑発》
ファイアーラットに《挑発》をかけてターゲットを取る。突進に合わせて《パリィ》を発動して黒金の方向に弾く。宙を舞うファイアーラットに黒金の大剣が振り降ろされる。その瞬間にファイアーラットの毛が激しく燃え上がるが黒金は気にせずそのまま斬り棄てた。
『TYUUU!!??』
ファイアーラットから苦悶の悲鳴がもれた。剛毛のお陰で斬り傷は浅かったが、5m程吹き飛ばされ木に衝突して動けないでいる。そんな隙を白雪が見逃す訳は無く、気づいたらファイアーラットは氷の槍に貫かれ絶命していた。
上級迷宮の初戦闘は危なげ無く終了した。
ドッ! ドッ! ドッ! ドッ! ドッ!!!!
『フゴッ!!?』
ズゴゴン!!!!
久遠の蹴りがランクCのフレイムボアにめり込む。巨体の身体が地に崩れる。ランクCでも大して強くないな?
【ーー真甚龍人のレベルが53へ上がりました。】
上級迷宮の探索を始めてからレベルの上がりが良い。初級迷宮だと全く上がる気配が無かったからな? それは従魔達も同様でレベルが上がったと何度か耳にした。
「ハァ~強いとは予想していましたが、予想以上ですね。この数時間で依頼の数は達成済みです。」
既に数百の魔物は倒していた。大半がファイアーラットのような小型? 上級迷宮では小型の部類に入る魔物を手際良く仕留めていった。黒金の大剣、白雪の氷槍、朱音の糸、久遠の蹴りで難なく倒せるようだった。ドロップ品や素材の回収の方が手間取ったほどだ。
「上級迷宮でも問題無さそうだな。次からは俺達も戦闘に加わることにするわ。指示はそのまま龍人がやれ。」
「わかりました。この変の魔物は確認できたので奥に進みましょう。」
遠くに見える火山を目指して探索を開始する。この迷宮を走破するつもりは無いが強力な魔物が出る奥地までは行ってみたい。上級迷宮を探索する機会はそうそう無いからな。それに予定より随分と余裕もできたし行けるところまで行ってみたいというのが本音である。
ただし、無謀な行動はしない。ちゃんと安全マージンはしっかり取って、危険だと判断したら即座に撤退できるようにする。それが絶対条件だと心に決めた。
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