第50話 再会 ①

クランハウスは今、静寂に包まれていた。先ほどメイドを見送ったことでクランハウスには俺しかいない。いつもは人が多く賑わっているが、人がいないとここまで静かなのだと驚いたほどだ。


昨日の事件で冒険者ギルドや警察は大忙しらしい。蓮司さんのところも依頼でショッピングモールに付きっきりで家に帰れていないと萌衣が言っていた。


ショッピングモールの件については、知っていることは全て二人には話しているので俺の出番は無いだろう。


「不具合は無さそうだな。特殊なスキルで使い道は無いかなと思っていたけど、直ぐに役に立ったな。流石は白斗だなピッタリだ。」


消失した腕の骨を火竜の牙から白斗に再現して貰いダークマターで腕を再現する。少し重く感じるが問題は無さそうだ。


で、一番の問題はコレだよな。


〈ーー進化しますか?〉


頭の中で問いかけてくる言葉。レベルが100に上がった事で上限に達し進化が可能になったようだ。


昨日帰ってからこっそり調べたのだが、人間が進化したと言う情報は一つも無かった。高ランクの冒険者にレベル100に達している者も居るはずだよな? あれ!? もしかして、レベル100に到達した者が居ないとか無いよな・・・


あぁ、居たとしても公表する訳が無いか。わざわざ争いの種を撒く必要は無いだろう。


〈ーー進化しますか?〉


はぁ~誰も居ない今がチャンスかもな?


暫くはクランハウスに訪れる者も居ないだろう。門も閉めて看板も立てておいた。既に従魔契約で化け物に片足を突っ込んでいる身だからな。進化しても良い気がする。従魔契約での体調不良も改善するかも知れないしね。


器が耐えきれなくなり悲鳴があがっている。これが身体の不調に繋がっている。解決するには進化して器を大きくする必要がある。


〈ーー進化しますか?〉


問いかけてくるのは限界が近いからかな? 早く進化しないとヤバいよって。それを肯定するように身体の不調は悪化している。ハハ、考えるまでも無いと言うことか・・・


(YES)


俺は心の中で了承と呟いた・・・




そこは白亜の世界だった。周囲には何も無く、ただただ白い世界だった。


懐かしいな。


「エリシア様、お久し振りですね。」


俺はこの世界に来るのは初めてでは無かった。前世で一度だけここに訪れていた。


「久しぶりですね。レオン。」


「エリシア様、今は龍人ですよ。レオンは死にました。それで今回は何用ですか? わざわざ異世界の女神様が会いに来るのですから何かあるのですよね?」


流石に違う世界から何の用も無しに会いに来るはずが無い。きっとそれは俺の進化に関することなのだろう。


「えぇ、そうです。本当は何十年後の予定だったのですが、本当に貴方は出鱈目な人ですね。」


普通に心の中をよんでくるな。


「レ・龍人の進化についてですが、少し特殊な状況になっています。」


「特殊な状況ですか?」


「はい。龍人は前世の終わりを覚えていますか?」


「えぇ、覚えております。」


「あの時、龍人は龍化を行った。それなのに龍人は転生してここにいます。」


「それには私も驚いています。龍化は魂をも犠牲にする術でした。魂が無いのに転生できるのは可笑しいと思っていました。」


「この世界に転生させたのは私ですが、原因は龍人にあります。」


「私に原因ですか?」


「滅びるはずだった魂が魔神の核を喰らって融合してしまいました。私はその魂を転生させたのです。」


あの時は無我夢中だった。核に喰らいついたのもそれしか手段が無かったからだ。それほどに強かった。後悔はしていない。


「転生させた理由があるのですか?」


「魔神ゲトレイアは災王と言う魔物が進化したものです。そして、災王とは邪神が生み出した特殊な魔物なのです。」


「邪神とは?」


「五大神の一柱です。創造神、破壊神、時空神、冥神、そして邪神ですね。それと転生した理由は魔神ゲトレイアを倒した報酬と思って下さい。だから龍人は好きに生きなさい。」


「わかりました。それで進化の件については?」


「そう言えば途中でしたね。龍人の中には龍と魔神の力が宿っています。それに加え、生まれて直ぐの災王まで討伐して吸収してしまい私ですら何が起こるかわかりません。」


「・・・進化しない方が良かったですかね?」


「いえ、進化するしか無かったでしょう。偶然とは言え、従魔士となったことで人の器以上の力が宿っております。龍人のことですから、こうなるとわかっていれば進化しなかったでしょう。だからこそ、進化のタイミングを選んだのです。良いですか! 誰も貴方の犠牲は望んでいないのですよ! 彼女達がどれ程・・・」


「すいませんでした。精一杯に生きさせて頂きます。」


「宜しい。ちゃんと彼女達には謝るのですよ。」


「彼女達!? どういう事でしょうか?」


「いずれわかります。それと、邪神関連には気をつけておいて下さいね・・・」


「えぇ!?? ・・・・・

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