第46話 決戦 ③
闘峯身氣を発動して殴り合う。グラトニースライムは次第に形を変えていき、気づけば人の形を取っていた。
面白いことに人型を取っているが、手足は自在に伸縮し常識外の攻撃が続いた。変幻自在の攻撃が厄介だが面白い。
[八卦透過衝]
ズウゥーン!!
グラトニースライムの体内に波紋が広がる。この技は重厚な鎧の中に攻撃を通す技であり、グラトニースライムを体内から破壊するつもりだったのだが、体内に通したはずの衝撃が直ぐに消えていく。
「強力な打撃耐性に加え、超吸収で衝撃まで吸収するとか卑怯過ぎじゃないか?」
ブシャアーー!!
【鬼術-〈黒土〉】
[黒壁の甲羅]
ジュウゥ!!!!
グラトニースライムから強力な酸が大量に噴き出される。咄嗟の事で、急遽鬼術でドームを造り酸を防御することに成功する。
酸は黒壁の大部分を溶かし、ギリギリ耐えた感じだ。少量であれば【黒魔王鋼】で耐えられそうだが、今回の量の強酸ともなれば耐えきれず溶かされる可能性が高い。
【黒魔王鋼】は鋼のように硬くは出来るが、酸による攻撃は相性が悪いようだ。
バチバチ!!
「大体わかったかな? 放出系の魔法は【暴食】で喰えるが身に纏った魔法は喰えない。ようするに打撃以外の近接攻撃が弱点だな。」
手に纏った【黒雷】はグラトニースライムを手刀で焼き斬った。
プルプル
「ハハッ!? そう言えばそんな能力を持っていたな・・・」
グラトニースライムが5体に分裂した。再生するし、分裂するし・・・最高かよ!!
第2ラウンドが開始した。
至るところから拳が撃ち込まれる。分裂しても強さは変わらないようだ。重い一撃が次々に身体に突き刺さり痛みがおそう。どう考えても全てを防ぐ事は不可能だ。
「流石にこれ以上はこのままでは無理だな。」
1体でも厳しい相手なのに、5体が相手ではこうなるか。
既に5体のグラトニースライムの攻撃でボロボロだよ。せめて3体であれば何とかと言ったところだったのにな。これ以上、格闘にこだわるのは俺の我が儘でしかない。
【
【氷霊王槍セルシウス】
【蒼炎竜槍イグニール】
〈厄災殺しの槍-ディクリス〉
俺の周りに白氷の槍と蒼炎の槍、更に漆黒の槍が浮かんでいた。氷と炎の槍は魔力操作で自在に操り、漆黒の槍は【神通力】の[超能力]で操る。
新たな戦闘方法を模索して行き着いたものだ。
第3ラウンドと行こうか!
◆◇◆◇◆◇
「あの! 助けに入らなくて良いんですか!? このままだと死んでしまいます!」
グラトニースライムが5体に増え劣勢が続いている。その光景に見ることしか出来ない人達の顔は絶望に染まっていく。そんな中でアイドルである彼女達は懸命に戦う龍人くんが心配で問いかけて来る。
「う~ん、手助けは必要無さそうだね? そもそも私達が行っても邪魔にしかならないかな?」
「えっ!? 何で!?? このままでは」
「私達が龍人くんを心配していないわけでは無いんです。ただ、まだ武器すら使っていない状態で心配しててもって感じです。」
「武器を使っていない!? えっと、拳が武器とかでは無いんですか?」
「違うよ! 龍人くんの得意武器は槍と盾だよ!」
驚くのも無理は無いでしょう。傷を負いながらも必死に戦う姿には余裕は感じられない。身体中から血が流れているくらいなのだ。
何度目かになるだろうか。グラトニースライムの攻撃に吹き飛ばされ壁に激突した。
「本当なのかい? 私には少年が成す術無く負けそうに見えるのだが?」
「主は負けず嫌いじゃからのう。じゃが、そろそろであろうのう。」
穂花さんが呟きを発したのをさかいに戦いに変化が起きた。
「凄い! 凄い! あれどうなってるの!?」
雫が興奮した様子で騒いでいる。でも、興奮するのも良くわかる。左手には黒い重厚な盾、右手には黒い大きな剣、そして周囲に漂う白と蒼と黒い槍。
「凄い・・・」
千変万化とはこう言う事をいうのですね。5体のスライムの攻撃を捌きながら剣で槍でと武器を持ち変えて攻撃に転じている。
「戦いの申し子のようじゃ」
少し呆れた風に呟く穂花さん。
「あれどうやってるの?」
「魔力の糸ですね。見え無くなっていますが糸が張り巡らしているようです。」
手から離れた大剣が勝手に手元に戻る。更に見えない斬撃によりスライムが切り刻まれる。
「黒い槍は[超能力]と糸で操っておるのう。器用なもんじゃな。」
武器を次々に持ち変えては戦場を駆け回る。大盾を放ったかと思うと両手に槍を持ち凪払ったかと思うと、気づけば大盾で攻撃を弾いていた。どう動くか全く予想できない行動に私を含め、従魔の皆さんも呆気にとられていた。
「基礎が大事って言っていた意味が良くわかりますね。」
「そうですね。盾による受け流しにパリィ、シールドバッシュは比較的早く習得できるスキルですがここまでになると別物に見えます。」
「槍が一番得意って言ってたけど剣も大概だよね。何であんな大きい剣であんな事が出来るの?」
黒い大きな剣を軽々と片手で振るい、多彩な剣術が繰り広げられていた。
戦いは最終局面に移っていく。
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