第35話 テロリスト


悪の猛獣使いの放送が終わり、ショッピングモールは訪れていた客の悲鳴でごった返していた。


「悪の猛獣使いってなんだ?」


「日本国内を中心に活動しているテロリストだよ。」


「テロリスト!?」


「初めはテイマーや魔物使いの職業の不遇を訴えて活動していたんだけど、ここ最近は日本各地で残虐な事件を多々起こしていてテロリストとして指名手配されてます。」


テイマーと魔物使いか


「私と似たような職業ですね。ようするに魔物を強化させるために大勢の人間をエサにということだろうな。」


【気配察知】


迷宮でも無いのに魔物の反応が多く察知できた。


「夜に渡すつもりだったんだけど先に渡すことにするよ。」


店内には既に俺達しか居ないため、全員に武器と防具を置いていく。


「これは新しく開発した【成長する武器グロウス・コアバングル】と言って通常は腕輪の形をしているけど任意で自身の武器に形を変える武器です。そして、これの凄い所は戦えば戦う程に成長する武器で他にも色々とした仕掛けがあるんだけどそれはまた今度説明するよ。」


竜って光り物を集める修正があるのは本当らしい。上級迷宮で火凜を従魔にしたときに火凜の住みかに大量の宝が眠っていた。勿論、回収した訳だけどその中にオリハルコンといったレア鉱石も多く含まれていた。火凜に断りを要れて鍛治工房に渡したところ一気にレシピが増え、技量も上がったと報告が上がった。そこで錬金工房と力を合わせて、新たな武器の開発に着手したのだ。その結果生まれたのが【成長する武器グロウス・コアバングル】である。所持者の魔力を取り込んで所持者に合うように成長する武器。クリスマスまでギリギリだったが従魔の分も入れて全員分を造る事が出来た。


「これより暴れている魔物の殲滅作戦を開始します。魔物は5箇所で暴れている。3階のイベントホールに一番強力な魔物が配置されているから私が行くとして、その他の4箇所を皆に頼みたい。黒金、白雪、朱音、久遠、穂花はサポートにつけるから、班分けは美月さんにお願いします。」


従魔達も進化の影響を受けて調子を悪くしていたようだが、摩天楼で療養して大分良くなってきたと報告を受けていた。皆が一斉に進化したことで、相乗効果で俺含めて従魔全体が急激に強化されたのが原因らしい。治療院に診てもらったので間違いない。


進化して初めて人化して召喚したのだが・・・誰? と思う程に見違えていた。


「えっと・・随分と見た目が変わったな。まぁ、今は時間が無いから後で確認するとしてサポートは任せた。火凜は俺と一緒に上に行く。サポートにはむかなそうだからな。」


「火凜は手加減というものを知らぬからのう。それが良いじゃろうな。馬鹿じゃしな。」


穂花は前から知り合いのようで、火凜の性格を良く知っているようだ。


「何を!? 私だってこの建物くらい綺麗に塵に変えられるわ。」


「塵に変えるな。火凜は私が監視するから良いとして、他の者は安心して任せられるからサポートを頼む。後は美月さんの指示で動いてくれ。」


従魔に任せるのでは無く、彼女達を中心に行動させる。従魔達だけに任せては彼女達のためにならない。


「私達は先に行く。少しでも犠牲者は出したくないからね。行くぞ、火凜。」


喫茶店から出て上へと移動する。


〈柳原美月-Side〉


「うぅ・・・」


雫、戀夏、黒金さんと持ち場へと到着した。現場は酷い血の臭いと無惨な死体の山で吐き気をもようしてしまった。


「美月、リーダーは君だぞ! 俺はあくまでサポートがメインだ。指示が無くては動けないぞ。」


「はっ! すいません!! 前に出ます! 雫と戀夏は前衛でウルフの数を減らし下さい! 黒金さんはすいませんがシャドウウルフをお願いします。あの魔物は私達では倒すのは難しいです。」


シャドウウルフはD+ランクの魔物で私達には無理です。


「良い判断だ。任せろ。」


「ありがとうございます。それでは【筋力上昇】【敏捷上昇】行きます!!」


全員に補助魔法をかけて前線へと割って入った。前線では必死に魔物の攻撃を防いでいる男性がいた。


「おじさん! 後は私達が引き受けるよ!」


斬!!


成長する武器グロウス・コアバングル】を展開した剣でウルフを一刀両断する。ウルフは何も抵抗出来ずに綺麗に両断された。


「この剣ヤバいよ! 龍人くん流石にやり過ぎだよ!」


「今更では無いですか!? 流石は私が認めた男です。」


戀夏も自身の刀でウルフを斬りながら、その刀身に魅とれていた。


「子供がウルフを!? でも今は! 私も冒険者だ加勢するぞ!」


「おじさん、武器も無しに戦うの!? もう、しょうが無いな。後でちゃんと返してね。」


雫は鞄から龍人から以前贈られたレッドビートルの剣を取り出し男に投げた。男は小さな鞄から取り出したことに一瞬驚いたが直ぐに剣を受け取り剣を抜いた。


「お嬢ちゃん、サブ武器がこれってどういうことだい!?」


赤い綺麗な刀身と持った瞬間に感じる剣の力に驚愕する。


「凄いでしょ♪ 婚約者からの贈り物だから大事に使ってよね。[赫火]と唱えると火を纏えるからいざと言う時は使ってね。」


そう言うと、少女とは思えないような動きで魔物を奔走する。


「雫! 戀夏! 前に出過ぎない。カバーしあえる範囲で戦いなさい。連携は訓練通りにね。」


『了解だよ(です)!』


「おじさんは右側から抜けて来る魔物をお願いします。私は左側を担当します。」


「了解だ。」


前衛組が少し下がり後衛との距離を調整した。指示が良いからか位置取りが絶妙だった。これで全体をカバー出来る。

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世界最強の騎士、転生して従魔士になる! @DAISHI0526

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