第36話 四腕黒鬼-黒金
俺は主から黒金と名付けられた。主の従魔となり気づけばB-ランクの『四腕黒鬼』へと進化していた。未だに進化の影響は続いているが戦えないと言う訳ではない。
『人化』しているからか本来の力は発揮出来ないが、その分繊細な動きが出来るので実は気にいっている。
主から頂いた【
ガントレットに魔力を流すと白銀のガントレットが黒く染まっていった。どうやら俺の魔力に染まったということらしい。
D+ランクのシャドウウルフは他のウルフより一回り大きく黒い毛並みは影のように揺らいでいた。シャドウウルフは俺を敵だと認識したのか自身の影に沈んでいき消えた。
死角から殺気が漏れでてシャドウウルフが影から飛び出てくる。なるほど、D+ランク査定はこの影の能力から来るのかもしれないな。
キンッ!!
「ガウ!??」
シャドウウルフの爪は『黒魔鋼』で鋼化した身体に傷一つ付けることは無かった。やはり攻撃力はそこまで高くないようだ。
縦横無尽に襲いかかるシャドウウルフの攻撃を捌きながら観察を続けた。
「こうも殺気が駄々漏れでは居場所を教えているようなものだろう? 折角の有用なスキルが勿体ない。」
通常の攻撃では影になって攻撃が通らないようだが魔力を込めた攻撃なら問題無く攻撃が通る。それがわかってしまえば
「グリュゥ!?」
「能力を見せすぎたな。フン!」
ボキン!
魔力を纏ったガントレットでシャドウウルフの首を掴み、そのまま握り潰した。シャドウウルフはそのまま絶命して黒い毛皮を残して消えていった。
◆◇◆◇
補助魔法と身体強化を併用して、杖と格闘技を組み合わせてウルフを撃退する。補助魔法士だけど戦っていけない訳ではない。まだ正式なクランでは無いけど、訓練に参加して徹底的に体力と格闘技を叩き込まれた。
難しいですが、バフの管理をしながら指揮を出し前衛の補助にも回る。大変ですが遣り甲斐を感じています。
「可笑しいですね? テイマーや魔物使いがここまでの数の魔物を従えられるものなのでしょうか?」
「普通は1体とか? 多くて2、3体と聞いたと思うんだけどな? ここにテロリストが20人は居るってこと!?」
雫が見渡すがそれらしい人影は無い。
「まさか! 後ろの客に紛れているとか!?」
先程から集団を観察していたのだけど、怪しい行動を取る人は確認は出来なかった。
「前方に隠れている3人だ。」
黒金さんが周囲に聞こえるように指摘した。
「3人ですか?」
「そうだ。その魔物達から飼い主へパスが流れている。ただ俺達とは違い薄い繋がりだな。あれでは簡単な命令しか受付ないだろう。」
「なるほど、だから攻撃が直線的なのですね。どうりで迷宮の魔物より弱く感じるわけです。」
「飼い主が隠れている所を見ると〈暴れろ〉とか、簡単な命令なのだろう。」
その命令が魔物を弱くしている。ただ考え無しに暴れてくれるなら対処は容易になる。
「このまま殲滅します。」
徐々に前線を前に進めてウルフの群れを一掃する。
【闘気】
「一気に攻め上がるよ!!」
雫が闘気を解放してウルフを斬り飛ばしながら踏み込む。以前見た闘気のような荒々しさは無く、身体の周囲を水の膜が覆うような清よらかさがあった。
【抜刀-飛斬】
戀夏が雫に合わせるようにスキルを使用した。一度納刀してからの抜刀術の一連の動作は目にも止まらぬ速さで振り抜かれ、前方へ斬撃を飛ばした。
【鬼術-黒礫】
黒金さんが黒い石を多数つくり、散弾銃のように撃ちだす。その散弾に貫かれて次々にウルフが倒れていった。気づけばあんなに居たウルフの群れは死体の山へと変わっていた。
「おい、おい。何でこんな田舎にこんな化け物が居るんだ!? シャドウウルフが相手に何ねぇってどんな化けもんだよ! まぁ、良い。ケケケ、俺のとっておきで殺してやんよ!」
男が球状の物を懐から取り出し握り潰した。何か嫌な予感がする。
「ねぇ? おじさん? 疑問なんだけど何でこんな事するの? 国に不満があるのはわかるけど、こんなことをしても立場が悪くなるだけだよ?」
「ククク、立場だと? 勘違いしているようだが立場なんてどうでも良いんだよ。力だよ、絶対的な力で蹂躙する。この力で恐怖と絶望を与え最後に喰らう姿を見るのが堪らなく楽しいんじゃねぇかよ! やれ! こいつらを喰らい尽くせ! タイガーウルフ!!!!」
「GAOOOOOO!!!!」
男の横にトラック程の虎のような魔物が現れた。魔物の咆哮が肌を震わせ身体を硬直させる。まずい!
バキッ! ドゴーン!!
「うるさい! 犬っころが吠えるな。こいつは俺がやる。お前達は後ろに隠れている奴も合わせて3人の捕縛を頼む。」
黒金さんがタイガーウルフを殴って吹き飛ばす。
「わかりました。こちらはお任せします。」
「おじさんには手加減は必要無いよね? 例えそれで死んでも自業自得だしね。【闘気】!!」
ザシュッ!!
「何つう餓鬼だよ! 躊躇い無く人を斬りやがる! お前らも加勢しろ!」
男は後方で気配を消している二人に声をかける。
「マジかよ! 想定外過ぎるだろ! 魔物使いが魔物無しでどう戦うんだよ!」
「タイガーウルフとやりあえる奴が居るとか聞いてねぇぞ!」
文句を言いながらも、指示を出した男に逆らえないのか男達はしぶしぶ出て来た。驚いたのは成人していないような青年だったからだ。
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