第33話 信用

火凜との戦いで更地となった場所で野営をしていた。ここには戦闘で溜まった火凜の魔力が漂っているお陰で魔物が寄り付かない。


「おお! それなら我が紹介してやろうでは無いか。1体居るのだ。我と同等で優秀な奴がのう。連れてってやるぞ。」


人型となった火凜に目的を伝えると、優秀な魔物を紹介してくれるという。いつまでもここに居る訳にも行かないしな・・・


火凜に紹介して貰う事にした。


「二手に別れましょう。私と火凜はその魔物に会いに行きますので、皆はここでレベル上げの続きをお願いします。そろそろ帰らないといけないですしね。」


「ここの指揮は俺が引き受けてやる。さっさと従魔にして戻ってこい。」


「この周辺なら私達だけでも大丈夫よ。気をつけて行って来なさい。」


「わかりました。黒金、白雪、朱音、久遠、任せたぞ!」


話し合いを終えて竜の姿となった火凜の背に乗り飛びだった。


飛びだって2日が経過した。竜が飛んで丸2日だ。前方の火山をぐるっと迂回して目的地へと向かった。火凜から話しを聞くと火山の頂上は上級迷宮〈煉獄火山〉のボスエリアで近づき過ぎるとボス戦に突入とのことだ。


それを回避しつつ目的地へと飛んでいた。地上では遭遇しなかった魔物が多く襲ってきたが、俺と火凜の敵では無く素材となってもらった。


そして・・・


目の前には火凜と同じくらいの大きさの狐が現れた。火凜が話しをしているところを見ると紹介してくれる魔物なのだろう。


「話しがついたぜ。従魔になってくれるってよ。」


「はっ!? 戦わなくても良いのか!?」


(儂はそやつと違い戦闘狂では無いのじゃ。そやつが手も足も出ないと言うのであれば戦うまでも無いしのう。無駄な事はしたく無いでのう。)


「それはこちらとしても助かる。」


戦うこと無く天狐の〈穂花〉と契約を結ぶことが出来た。穂花を連れて皆と合流する為に急いで戻る。穂花は自らの足で空を駆けて火凜と並走する。


帰りも同様に高ランクの魔物が襲って来るが穂花の加入で行きよりも早く目的地へと到着した。



◆◇◆◇



龍人が無事に目的の魔物と従魔契約を終えて戻ると報告が来た。どうやら離れていても連絡は取り合えているようだ。


「初めてだな。ここまで一気にレベルが上がるのはな。」


「当たり前でしょ。普通なら上級迷宮の奥で狩なんてしないわ。命が幾らあっても足りないもの。」


目の前には先程まで戦っていた地竜が横たわっていた。激戦の末に倒す事ができた。


「今回の戦いで龍人が言っていた意味を少し理解できたぞ。気力と魔力の伸ばし方は人それぞれ。龍人は基礎は教えてもその先は自身で伸ばし方を考えた方が良いと言っていた。」


「そうね。人それぞれ適性と言うものがあります。私達なら職業と言う絶対的な指針がある以上、それに合わせた方が良いはずです。なので活かし方は千差万別であり、自身で考え導くしかない。」


「そう言うことだな。スキル、武器それに加え魔力と気力を如何に組み合わせ強化させるかだな。龍人の従魔達のように色々と試行錯誤する必要があるな。」


「自身の特性を理解して、自身の強みを伸ばそうとしている。そう言う風に龍人くんに仕込まれているのね。」


「だろうな。毎日のように模擬戦しているだろうし、そのように訓練されているだろう。ほんと勉強させられるわ。」


格上の魔物に対しても怯まず冷静に対処し、スキルを活かして有利に戦う姿は見事なものである。スキルだけでは無く、武器の扱いもだな。


それに互いの事が良くわかっているのか、互いがカバーしあい連携も良く取れていた。混戦の状態ならばこそそれが良くわかる。見習う点は多い。


「それにしても『怪力』は良いな。俺の全てに対して有利に働いてくれる。」


「『氷魔槍』も有用ね。魔力操作と魔力制御の良い訓練になる上に近距離攻撃、遠距離攻撃にも対応出来ます。戦略の幅が広がります。」


「龍人が外さない限り、半永久的に使えるスキルみたいだしな。他に知られるとヤバいな。」


「えぇ、そうね。それもスキルの付け代えは出来るようだし、従魔を増やせば使えるスキルも増えます。知られれば大変なことになるのは間違い無いわね。」


「龍人も隠していたようだしな。そこあたりはわかっているだろう。俺達に教えたのも信頼してのことだろうな。」


「フフフ、嬉しいですね。その信頼を裏切らないようにですね。」


二人は龍人が秘密を明かしてくれたことが嬉しかった。龍人にとって秘密にしておいた方が良い状況のはずなのにだ。それがわかっているからこそ、龍人が俺達を信頼して明かしたのだと理解した。


「強くならないとだな。」


「そうですね。」


「帰ったらやる事が山積みだな。」


「えぇ。先ずは上の者から強化をはかりましょう。」


「その方が良いな。例の組織の者が入りこんでる可能性があるからな。信用のおける者から中心に進める。」


二人は帰ってからの予定をつめていくのであった。


==========================================

1章 ー完ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る