第24話 訓練 ①
魔物の大氾濫から3ヶ月が経過した。学校も少し落ち着きを取り戻して来ている。問題があるとすれば、気軽に迷宮へ入れ無くなった事と目の前で騒いでいる生徒くらいなものだろう。
「萌衣! 雫! Sクラスに戻ってまた一緒にグループを組もう! 二人はここに居て良い存在では無いんだ!」
「何度も言っているけど、私はSクラスへ戻るつもりは全く無いよ! 悪いけど別の人とグループ組みなよ? 轟くんだったら直ぐに見つかるでしょ?」
「私も同じです。今は新しいグループで活動していますし、解散するつもりも抜けるつもりもありません。」
一月前くらいから何度も行われている光景を眺めながら関わらないように気配を消す。何が行われているかと言うと、ゴブリンにボコボコにされていた男子生徒が復帰して、もう一度グループを組もうと勧誘に来ているのだ。ただ、何度断っても諦められないのか毎日のようにFクラスへとやって来るのだ。
「Fクラスだと迷宮にも入れないと聞くよ? 俺達とグループを組めば優先的に実習に参加出来るんだ。断る理由がわからないんだけど?」
「別に実習に参加しなくても迷宮には入れるから問題ないかな?」
「そうですね。お父さんにお願いして、Cランク冒険者に護衛を頼めば良いだけですしね。」
「グッ・・でも! Sクラスに戻った方が将来を考えると有利だよね!? 俺は二人と一緒に冒険者に成りたいんだ。お願いだから戻って来て欲しい。」
う~ん、二人は可愛いから惚れられたのかな? それとも二人の家の力を当てにしているのだろうか? 両方かも知れないな。流石に毎日毎日これでは嫌になってくる。
「はぁ~もう、本当に面倒くさい・・・」
ボソッと男子生徒に聞こえ無い声で雫が呟く。
「何度も言っていますが、轟くんのグループに入るつもりはありません。それに毎日来られるのも大変迷惑です。金輪際私達に関わらないで下さい!」
おぉ! 珍しいな。萌衣は基本的にFクラスでも皆に優しく接しており、ここまで厳しい言葉を発することは無かった。そんな萌衣がここまで厳しい態度を示した事に皆が驚いた顔をしていた。
「何で!? 俺はただ二人の事を思って・・」
「それが迷惑なのよ。私達の考えを無視して勝手に自分の考えを押し付けないでよ。私達は自分の意志でここに居るのよ。わかったら二度と来ない・・うむぅ」
今まで我慢していた雫がヒートアップして要らぬ事まで話しそうになったので口に手をあてて止めた。
「駄目だよ。雫さん。その先は言い過ぎかな? これで二人の気持ちは伝えたのだから様子をみようよ。」
相手も子供なのだ。甘やかすわけでは無いけど、二人の言葉を聞いて、少しは察してもらえると有難い。
クランハウスもいつの間にか賑やかになった。優香さん経由でメイドを5名を雇い入れ、蓮司さんから萌衣の護衛という名目で歓崎さんと宝生さんがクランに加入することになった。
それに加え、一月前から魔物の大氾濫で会った柳原さんが率いていたグループがクランハウスへ見学に訪れて、それから頻繁にクランハウスに訪れるようになっていた。
「龍人くん、何か良い方法は無いかな?」
現在、俺はクランメンバーの訓練に精を出していた。職業関係無く最低限の身体能力を持って貰う為だ。厳しめのメニューだが皆必死について来ている。その成果は着実に実のって来ているのだが、並行して行っている魔力と気力の扱いは上手くいっていない。そもそも、自身の魔力と気力を感じられていない。1月程経過したが誰一人として上手くいっていない。
俺は不思議に思って聞いた。なら日頃どうやって魔法を使っているのかとね。
結果、スキルの弊害だと思ったよ。肝心なところはスキルがAUTOで済ませるから使っている本人もどうやって魔力を扱っているのかわかっていないのだ。ただそれが、この世界の常識で職業やスキルに依存している理由だったりする。
雫が根をあげるように、体内の魔力や気力を感じるのは難しいのだ。俺も前世で同じ経験をした。その時はアイラに荒療治で・・・
一度感じてしまえば後は自然に感じられるようになったはずだな。なので、最初の取っ掛かりさえ与えれば先に進めるんだが・・・その方法が女性だと抵抗があるんだよな。
◆◇◆◇◆◇
「ハァ~レオン!? 気力の〈き〉も理解していないで良く俺様と殴り合えるな。正真正銘、お前は化け物だよ。だがな!」
ドゴン!!
ズズズゥーーーー!!!!
強烈な拳が俺の腹部を直撃し、余りの威力に数メーター程後方に押し込められる。
!??
腹部に今まで感じられなかった、暖かい何かが存在する事がわかった。
「それがお前の丹田だ。その丹田から気力を体中に行き渡らせろ! お前の身体なら耐えきれるはずだ。」
言われた通り丹田から気力を取り出して体中に広がるイメージで動かす。気力は俺のイメージ通りに広がり体内を満たしていった。
あっという間に体内の気力が飽和状態に陥り、そして一つの壁を越えてしまった。
気力が体外に一気に放出され、
体外に吹き出した気力を身体を覆うように留める。徐々に吹き出して霧散していた気力も落ち着きを取り戻して身体を覆っていた。
「それが『
ゲイトリョートも闘気を纏い初め、今まで以上に激しい模擬戦となっていった。
「レオン! 服を脱ぎなさい!」
アイラが俺に魔法を教えてくれるらしい。そして、開口一番に服を脱げと言われた。理由を聞いたら、どうやら修行に必要な事らしい。それと、全部では無く上半身だけで良いらしい?
ペタペタ
「なぁ、アイラ? 流石にそんなに触られると恥ずかしいだが?」
「良く鍛えられてる身体ね。今から私が直接レオンの身体に魔力を流すわ。だから、魔力を感じなさい!」
アイラは俺の右胸に手を置くと目を閉じた。アイラの手を通して何かが流れて来るのが直ぐにわかった。これが魔力なのだと。
「レオンの身体は本当に出鱈目ね!? 属性への適性が皆無な代わりに魔力経路が多く太いわ。私の弟子になる素質は十分よ!」
「いやいや、属性の適性が皆無の段階でそれは無理だろう? アイラの弟子に成りたい優秀な者は五万と居るんだからそいつらに譲るよ。」
「うっさい! レオンは私の弟子なの! 良いわね!」
こうなったアイラは俺には止められない。大人しくアイラの弟子になることにした。
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