第2話 初の契約


学院の授業は一般教養と選択科目、特別実習にわかれており、進級する為にはそれぞれで規定の単位の取得が必要となる。


1学年の一般教養は国語、算数、地理、歴史で俺は図書館に通い日本語の読み書きは独自で学んでいる。なので、おさらいも兼ねて真面目に授業を受ける。算数は足算引算を中心に学び、地理では日本地図を広げて地名を覚えるといった授業を受けている。歴史は過去の偉人や日本の成り立ちを中心に学んだ。


選択科目は様々な授業がある中から自身で受けたい授業を選択する。1学年は最低二つ選択する必要がある。俺は〈魔物学〉と〈迷宮学〉の二つを選択して提出した。



「やめて下さい!」

「良いだろ、俺達とお茶しに行こうぜ!」

「結構です!」

「面倒くさいから無理矢理連れて行こうぜ!」

「賛成!」


帰ろうとしたら、門の前で女子生徒が3名の男子学生に絡まれている場面に出くわした。周りに居る生徒も関わりあいたくないのか遠くから見ているだけだった。


ハァ~


「なぁ、何処から見ても嫌がってるだろ? 解放してやれよな。」

「あん!? 何だてめぇは、餓鬼は引っ込んでろ!」

「餓鬼って? そう年は変わらんだろ? それにやってる事を思えば餓鬼はお前らの方だろう?」

「なんだと! 俺達が誰だかわかって言ってんのかよ!」

「いや、全然? 全く興味無いし?」


俺は3人を煽り、3人のヘイトを彼女から俺へと向けさせる。こういう輩は単純で助かる。


「どうやら痛い目にあいたいようだな。オラッ!」


作戦は成功して3人が一斉に殴りかかって来る。その動きはとても緩慢としたもので、繊細さ技量が乏しい攻撃だった。隙だらけの大振りの拳を避けて、軽く相手の顎を拳でかすらせて脳を揺らす。意識を刈り取るまではしない。暫く動けないようにするだけで良い。


「ねぇ、君。今のうちに帰った方が良いよ。」

「あの、ありがとうございます!」

「良いよ、良いよ。俺が勝手にやった事だから気にしないでよ。それじゃね。」


面倒ごとになる前に俺もその場合を離れた。



学校に慣れてきた週末、俺は冒険者組合に足を運んでいた。


〈冒険者組合-国立札幌冒険者学院支部〉


「あちらの世界とは大分違うんだな・・・」


冒険者組合は5階建てのビルというデカイ建物の中にあるらしい。


冒険者組合の中に入る。建物内は清潔感があって荒くれ者もおらず、絡んでくる輩も居ない。本当に冒険者組合なのか? どうしてもあちらの世界と比べてしまう。


「すいません。冒険者登録をお願いしたいのですが?」

「あら? 冒険者学校の生徒さんね。この用紙に必要事項の記入をお願いします。文字は書ける?」


あちらの世界でもそうだったけど、冒険者ギルドの受付譲は綺麗な人ばかり何だよな。少し緊張する。


「ーー問題ありません。」


必要事項とは、『名前』『年齢』『職業』といった簡単なものと注意事項の確認のチェックだけだった。


「最後に担当官と模擬戦をして貰います。準備ができ次第訓練場に行って下さい。」


準備する事が無いので、そのまま訓練場へと移動する。


「随分と若いな。まぁ良いか。木剣を構えろ!」


壁に掛けてある木剣を取って構える。


「ほぉ~行くぞ!」


カン!!


試験官が上段から木剣を振り下ろす。俺はしっかりと木剣を目で追い受け止めた。


「合格だ。受付にこれを提出して登録してこい。」


担当官の剣を受け止めただけで合格となった? 担当官から受け取った用紙を持って先程の受付の女性に提出する。


「おめでとうございます♪ 冒険者Fランクで登録完了致しました。凄いですね、始めからFランクはなかなか居ないんですよ。」


普通はGランクで冒険者組合が行う講習を受けてFランクになるらしい。Fランクからは迷宮への立ち入りを許可される。そう冒険者へと認められた事になる。Gランクは仮冒険者扱いのようだ。


さっそく冒険者組合で鉄の剣を購入して迷宮へと向かう。依頼は〈薬草採取〉と〈ゴブリン討伐〉を受けた。討伐はまだ早いと受付に言われたけど、いつかは経験する訳だし早い方が良い。それに前世では数え切れない程の魔物と戦ってきた。今更である。それに今まで使えなかった従魔士の能力も試しておきたいのだ。


今回は初心者のFランク推奨の迷宮を目指す。冒険者になると迷宮行きのバスに無料で乗れるから凄く助かる。1時間程で迷宮に到着した。


「ここが〈ゴブリンの森〉か。」


この〈ゴブリンの森〉は、ゴブリンしか生まれない迷宮らしい。依頼を受ける時に教えられた。こまめに駆除しないと直ぐに増えてダンジョンから溢れて危険らしい。なので冒険者組合では、常時依頼が張り出されている。


迷宮は魔力の壁に覆われている。迷宮は魔力が充満している場所のようだ。だからこそ魔物が生まれるのだろう。


迷宮内には薬草が多く棲息していた。森を歩いていると至るところで発見出来る。採取ハサミで根を残して採取するのが一般的らしい。根を残しておくとまた其処から生えて来るからだ。


薬草は下級ポーションの素材になるので、低ランク冒険者の良い稼ぎになる。薬草採取をしながら奥へと進むとゴブリン同士が争っている場面に出くわした。2体のゴブリンが集団のゴブリンから袋叩きにあっていた。2体のうち1体がもう1体を庇って既に瀕死の状態だった。俺は安物の剣を構えて集団のゴブリンに突撃した。


死角からの攻撃でゴブリンの首を斬り飛ばす。転生して初めて魔物を殺したが、精神的に問題は無さそうだ。前世で初めて魔物を斬った時は気持ち悪くなって吐きそうにもなったが、前世の記憶がある俺は全く問題にならなかった。


集団で殴られていた2体のゴブリン以外のゴブリンの首を斬り落とした。気づいたらその場は血の海になっていた。


【ーーレベルが上がりました。】


生き残った2体のゴブリンを観察する。最初は気づかなかったが、この2体のゴブリンは普通のゴブリンと違っていた。ボコボコに殴られていたゴブリンの肌は黒く、もう1体のゴブリンの肌は白かった。きっと、それが原因でゴブリンから殴られていたのだろう。


白いゴブリンが震えながらボロボロになった黒いゴブリンを庇っていた。魔物だが討伐する気になれず、折角なのでスキルを試してみることにした。


「なあ? 助ける代わりに俺の従魔にならないか? って通じる訳ないか・・・」


【ーー条件を満たしました。スキル『意思疎通』を習得しました。】


ギャガギャガ!?


「助けてくれるのだって。おお! 何となくだけど言いたい事がわかる。え~とだな、俺は従魔士で魔物と『従魔契約』を結べるはず何だ。」


ギャガ?


「はず? ああ、まだ一度も契約を結んだ事が無いから疑問形だ。もし、君達が従魔になってくれるのであれば、二人を助けよう。どうかな?」


ギャガギャガ!


「そうだな。そうなれば敵同士なわけだから容赦なく行かせてもらう。勿論、お前達も殺す気でかかって来てくれて構わない。それが人と魔物との関係だからな。」


ギャガ・・・ギャガギャガ!


「従魔契約を受け入れる。あなたに万が一も勝てる気がしない。そうであれば生き残る方法は一つだって。ハハッ! お前は賢いな。気に入った!」


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スキル 『従魔契約』

ランク 『A』

*条件:魔物の同意又は屈服させる。

・魔物と従魔契約を結ぶ。

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「それじゃ試すぞ!」


白いゴブリンが黒いゴブリンを説得して従魔になる事を納得してもらった。


『従魔契約』


初めての従魔契約を発動した。幾重もの魔法陣が俺を中心に広がる。身体から魔力が抜ける感覚がする。魔法陣から鎖が魔物へと伸びていき、2体の魔核に巻き付いた。


【ーー魔物へ名を与えて下さい。】


「名前か・・・それじゃお前が〈黒金クロガネ〉、お前が〈白雪シラユキ〉だな。」


黒いゴブリンに〈黒金〉、白いゴブリンに〈白雪〉と名付けた。その瞬間、先程とは比べられない程の魔力が〈黒金〉と〈白雪〉へ流れていった。


MP 9610/10010


名付けに魔力を200消費したと言うことか?


【ーー従魔契約が成功しました。条件を満たしました。スキル『魔物鑑定』を習得しました。】


【ーー条件を満たしました。固有スキル『摩天楼マテンロウ』が解放されました。】


【ーー従魔の力が扱えるようになりました。】


どうやら従魔契約を結ぶと、契約した魔物の能力を自身も扱えるようになるみたいだ。その他にもステータスの向上の効果もある。契約時に情報が流れ込んで来て理解も追いついた。


それと不思議な事に〈黒金〉と〈白雪〉は俺の目の前に現れたボードの中へと消えていった。


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[名前] 真甚 龍人

[年齢] 10歳

[職業] 従魔士

[ステータス]

L V 2

H P 285/285

M P 100250/10250

STR 235

INT 660

VIT 177

MND 162

[固有スキル]

摩天楼マテンロウ

〈黒金〉〈白雪〉

[スキル]

『従魔契約』『意志疎通』『魔物鑑定』

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