第42話 祝賀会

明日の夕飯、ご馳走するからね!6時半にうち出るから、よろしくね。


と娘の京子に言われ、お父ちゃんとお母ちゃんは顔を見合わせた。


「どしたの、あんた」


「いつも、あたしもうちの子供達もお世話になってるからさぁ、ちょっとしたお礼だよ」


水色の、キラキラの爪をヒラヒラさせて京子が言った。


「ふーん」


「俺、着てく服あっか?母ちゃん」


「あんた、あたしより衣裳持ちでしょ!あるよ」


うふふふ


悦子と和彦も、クスッと笑っている。


2人は余計なことは言わない。知っているから…



つい先日、京子は、自分の両親が金婚式であるということに気がつき、レオナハイツへ相談に行ったのだ。


お義姉さん、それはお祝いしなくては!


そうだな!姉ちゃん。いつやる?どこでやる?


そりゃー、決まってるじゃん!ケン!


というわけで、、、


「お任せください!毎度ありがとうございまーす!」


ルリコは大喜びで、閉店後の2時間、運命の輪を開けてくれると言った。


いざとなれば、用事のあるスタッフは帰して、私が料理を作るから心配ないよ!と。


サッちゃんと靖彦店長、2名のスタッフ、ルリコが、栗林ファミリー宴会をすることになったが、噂を聞きつけた美咲ちゃんも手伝いに来ると連絡があった。


一緒に行くとサプライズがバレるので、用意した記念品を持ちながらケンちゃんとレオナちゃんは先に来て、待機!ということになった。


案の定、運命の輪に着くと、栗林夫妻はビックリ仰天!


あれ!ケンとレオナちゃんもいる!

おお、なんだなんだ、これは!


せーの!


「お父ちゃん、お母ちゃん、金婚式おめでとう!」


京子とケンちゃんが声を揃える。


全員拍手!

おめでとー!

おめでとうございます!


二人ともうるうるしつつ、ぺこりと頭を下げた。


鮮魚のカルパッチョ 

栗林農園の野菜のピクルスとチーズ

豚肉と小松菜の炒めもの

キノコのキッシュ

キーマカレー

本日のデザートは柚子のシャーベット


サッちゃん渾身の料理が振る舞われ、武雄とヤス子は感動しつつ、お酒と共に楽しんだ。


悦子と和彦はスマホで、数々のお料理やみんなを撮影した。二人は運命の輪にはあまり来れないので大喜びだった。


「いやー、京子、ケン、レオナちゃんも、本当にありがとうな」


「びっくりしちゃったよ、本当。ありがとね!」


ケンちゃんとレオナちゃんは笑って頷き、ご馳走をパクパク食べた。


お義父さん、キッシュ美味しいですよ!


本当だな。うちの野菜が入ってるから、余計美味いわ。


そこへ美咲ちゃんが紙袋を持ってやって来た。


「本日はおめでとうございます。これ、吉富からのお祝いです」


「あれまあ!サオリちゃんまで!」


「ありがとう!よろしく伝えてくれな、美咲ちゃん」


ルリコはこの様子をライブでアイくんに見せていた。


いい宴会だね!

うん!最高だわ!


「このために、お店やってんのよね」


「…いいですね、やっぱり」


「やっちゃん、今日はありがとね」


普段あまり感情を出さない靖彦が、じんわり感動しているのがわかった。


「いえいえ。うちにとっても大事なお方たちですから、当然ですよ」


「サッちゃんもありがとね!まだキッシュある?あたしも食べたい」


「ないです、すみません」


「ないの?」

多めに作っといてよね、の顔をしてルリコがふくれる。


「グラタンありますよ」


「え!マジ?焼いて焼いてー!あと、今日のスタッフの賄い作ってくれる?私が払うわ」


やったー!

副料理長のごはん!

嬉しいー!


「社長、私のも入ってます?」


「当たり前でしょ。美咲ちゃんもありがと!」


「はーい!参加できて嬉しいです!」


最後は、運命の輪チームもテーブルに座り、栗林ファミリーの和に入った。


「ルリコさん、ありがとうね」


「とんでもございません、お父ちゃんお母ちゃんおめでとうございました!」


帰り、ルリコはダリアや極楽鳥花やグロリオサの豪華な花束をヤス子に渡した。


うちのレオナちゃんを、今後ともよろしくお願いします。もちろん私のこともね!


はいはい。


胸がいっぱいすぎて、ヤス子はもう何も言えなくなった。


武雄が黙ってルリコの手を握って頷いた。


ルリコも頷いた。


今日も、素晴らしい夜だった。





  




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