第13話 京子姉ちゃんの提案

「素敵じゃないのー、ケンイチ」


廊下に敷き詰められた、水色のトルコの絨毯をしげしげと眺めて、京子姉ちゃんはニコニコした。


レオナハイツができて初めて、京子姉ちゃんが訪ねてきた。


「お義姉さん、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」


レオナちゃんは京子に渡すフィンランドのお土産を、袋いっぱいに持ってきた。


「レオナちゃん、元気そう!旅行も楽しかったみたいねー」


「おかげさまで」


「すごかったぞ、姉ちゃん。俺たち、フェリーに乗ったり、バスに乗ったりしたんだ」


はいはい、よかったよ。こんなにお土産ありがと。えっ、うちの子供たちのもあるの?すみません。


「京子ちゃんは絶対、メルヘンヤクザだから。ファンシー好きだから。寝る時はフリフリのネグリジェに違いない」


と、いつかルリコが言っていたので、陶器の人形とか、レースのポーチとかを買ってきたのだが、大当たりだったようで、ものすごく喜んでいた。


いやーん、カワイイ♡

私が自分で買ったみたいだー!好きなのばっかりー!

はい、これ、下で買ってきたよ。


カフェ・マリーのクロックムッシュと、ミックスサンドをレオナちゃんに渡した。


「ありがとうございます」


「繁盛してんじゃないの、サオリのとこ。別人のように素敵になってて、びっくらこいちゃった」


だべ?

そんで、美味いよな、コレ。


で、相談があんだけどさ…と京子姉ちゃんが話を切り出した。


「ここで、ヨガ教室やりたいの」


レオナハイツの一階は、カフェ・マリーがあるが、その隣にもう一つスペースがある。


15畳以上はあるフローリングで、お父ちゃんが「みんなで集まれるべ」と考えたフリースペースだった。


そこに、レオナちゃんのヨガの先生呼べないかな?ということだった。


「いいんじゃねえか。レオナちゃん、先生に聞いてくれよ」


「いいですね。組合の皆さんもやれますし」


「あんまり顔合わせない人にも会えるじゃない?この辺りの人たちの親睦にもなるし」


こうして、ヨガ教室はスタートし、老若男女が参加した。


ヨガのある日は、カフェ・マリーも大繁盛である。サオリはみんなに唐揚げや、マカロニサラダをどっさり振る舞った。


よしとみさんのじいちゃんばあちゃんは、嫁の存在感に圧倒されたし、自慢に思った。


「栗林さんのおかげで、おれんちは万々歳だよぉー。本当にありがてえ」


よしとみさんのじいちゃんは、お父ちゃんに何度も頭を下げた。


「やめてくれよ、吉富さん。うちも助かってんだから。サオリちゃんの腕だよ。うちは何もしてねえさ」


お父ちゃんはそう言ったが、あのじゃじゃ馬が大したもんに化けたわなー、レオナ組のおかげだわ。と思っていた。


「お父ちゃん、一緒に行こうよ」


京子が呼びにきた。


ヨガなどたいしてやりたくもないが、京子に言われたら行くしかないのはわかっている。


うちのヤス子は一番前を陣取っていた。そして、やってみたら楽しいし、腰も軽くなった。伸びるってすげえな。


ヨガの先生も京子さんだ。

俺は京子にはかなわねえ。


見渡すと、この場にいるみんなが楽しそうだ。


よおよお、レオナハイツを作ったのは、俺だぜ!

密かに胸を張る。


お父ちゃんは伸びながら笑えてきた。俺は素晴らしい金の遣い方をしたな。


ヨガの後は、マリーに移動してランチ会だ。


サオリの作ったご飯を、京子とレオナちゃんが運んでいた。ヤス子はみんなから1000円を集めていた。京子先生からは取らない。それが決まりだ。


食べ放題のご馳走、途切れないおしゃべり。


うんうん。


栗林武雄は涙ぐんでいた。すべて素晴らしい。










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