第14話 ハンドクラフトの女王爆誕
レオナちゃんは、超絶に器用だった。
このことを、ケンちゃんはずっと知らなかった。
ある日、カフェ・マリーに超絶技巧の折り紙作品が飾ってあり、焼きホッケ定食を食べていたケンちゃんは、すげーな、これ。と言ったのだ。
「やだー、ケンちゃん。そのペガサスと孔雀、お宅の奥さんが作ったんだよー。知らなかったのけ?」
「えー!全然知らねえ!うちのレオナちゃんが!」
妻の特技を他人から聞かされガーン!となったが、ケンちゃんはこだわらない明るい男だった。
さっそく、頼むべ。
ケンちゃんが頼んだのは、小松菜の折り紙である。
誰かにギフトで送る時、小松菜の折り紙が段ボールにくっついてたら、どんなに可愛いだろう。
「小松菜?やったことないけど、多分できます」
レオナちゃんは、緑と白の折り紙でカワイイ小松菜をあっというまに折った。
「すげ〜!可愛いなぁー♡」
ケンちゃんは大喜びでお母ちゃんに見せに行った。
それに近頃では、レオナちゃんは小松菜をビニールに入れる作業も手伝っているのだ。
ケンちゃんはレオナちゃんが、家業を何もやらなくても全然かまわなかったが、手伝ってくれるのは本当に嬉しかった。
「若奥さん、手先が器用でぇ、あっという間にやっちまうんで、びっくらこいたわ」
熟練のおばちゃんたちが舌を巻くほどのスピードで、綺麗に小松菜を袋入れしているらしい。
これ見てくれよ、みんな!
とケンちゃんが小松菜の折り紙を見せると、わあかわいい♡欲しい!親戚に送るのに付けたい!と大絶賛だった。
かくして、レオナちゃんは栗林家が作る野菜の折り紙をたくさん折ることになった。作品は、段ボールの中に入れられ、各地に届けられた。
開けたら嬉しいサプライズとして、超絶技巧折り紙はSNSで拡散され、栗林家の野菜はめちゃくちゃ売れた。
レオナちゃんは、お父ちゃんからお褒めの言葉と共に金一封をいただいたのだが、
そのお金は受け取れないですよ、ケンイチさん。
遊びで折ったのに…レオナちゃんが恐縮するので、栗林農園で働くみんなと一席設けることにした。
こんな美味い美味い鍋はねえな、レオナちゃん。
美味しいですねー。
「若奥さん、ご馳走さまね。ありがと」
いえいえ、みなさん、ありがとうございます。
完璧な夜だっぺ。
ケンちゃんはぐいっと盃を干した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます