第15話 あきない、とは

サオリは荷造りと、家族への挨拶を済ませて車のエンジンをかけた。


離婚ではなく、研修という名の修行に出かけるのだ!


カフェ・マリーの売り上げが落ちてきた、とサオリが寿賀子に相談をしたのが昨日。


「飽きられたか…」

「量が多いか…」


ルリコと寿賀子が可能性を探りつつ来店してみると、その両方だった…。


マリーで食べ続けると太る。

これが常連客の結論だった。


「よし!まったく違った切り口でやり直せばいい」


「明日、5日分くらいの荷造りして、会社に来てください」


「店は?休み…ですよね」


「なーに言ってんの!私がやるわよ」


ルリコが手を出すので、店の鍵を渡したサオリであった。


その翌日、会社に着くと、サオリは寿賀子に連れられて、ルリコが経営するカフェ「運命の輪」へ入店した。


店の中は、タロットカードにちなんだ飾り付けがしてあり、落ち着いた焦茶のテーブルは快適で、年齢層は高めであった。


「男の人、けっこういますね」


「気がついた?男の人がくつろいで、ランチタイムが終わったあともご飯を食べられて、パソコンが広げられる店にしてるのよ」


運命の輪は7:00オープン、19:00クローズ。


モーニングはお茶漬け、おにぎり、サンドイッチの3種。飲み物とお新香が付いて850円。


どれもまんべんなく出るという。


ランチはナポリタン、ハンバーグ、生姜焼き、すべて目玉焼きのせ、で900円。男は目玉焼きが好きなの♡と説明する寿賀子。


そして名物は、糖質カット飯!糖尿の人はもちろん、ダイエット中の人、お腹空いてなくてもランチに来た人、いろんな理由で人気なのである。


まずは大根おろし。どんぶり一杯。これに特製の出汁を入れ、美味しく飲めるようにしてある。


本日の練り物。がんもどき、つみれ、油揚げ、厚揚げ、豆腐などが、3種類のっている。


味噌汁。豚汁、けんちん汁、かき卵スープの日もある。


本日のゼリー。みかん味、いちご味、杏仁豆腐味、など。


これで500キロカロリー以下に抑えて、なかなかお腹いっぱいになる。価格は1200円。


美味しいうえに、罪悪感なし、とても良いと評判である。


なるほど。うちは、真逆のメニューやってたんだ!不健康メニューしかないから、お客さん離れたんだ!


サオリは気が強いくらいだから、パワーもあり、納得すればめちゃめちゃ頑張る女だ。


「もうわかったみたいね、サオリさん!今、店長呼んでくるね。ここで5日間働いて覚えてね」


「はい!ありがとうございます」


夜はルリコの会社の簡易ベッドに泊まり、朝から晩まで働き、勉強し、5日後サオリは戻ってきた!


カフェ・マリーの名物、クロックムッシュはやめる必要はないということで残し、その他をガラリと変えた。


どういう年代の人が来るのか

何が喜ばれるのか

ピッタリした価格はいくらか


5日で自分なりに分析し、自分の作れる料理を吟味した結果、またまた素晴らしい店になったカフェ・マリー。


だし巻き卵と納豆、味噌汁、小さいハンバーグのランチ。


あっさりした和風のスパゲティと、ミートソースのスパゲティ、両方ある。


大ヒットになったのが、茹でたほうれん草と、こんがりベーコンにホワイトソースを掛けてチーズで焼いた、マリー風グラタンである。


隠し味がポイントで、家でやっても同じ味にならない。


「サオリちゃん、素晴らしいね」


「ありがとうございます、ルリコさん!寿賀子さん!またメニュー考えるので、見てください!」


「いつでも」


「うんうん」


あ、ケンちゃんとレオナちゃん。


早速、新メニュー食べに来たわね。


ご馳走になりましょう!


そうしましょう!

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