第8話 ワクワク新婚旅行

ケンちゃんとレオナちゃんは、結婚披露宴をしなかった。


ケンちゃんが二度目だから、とかじゃなく、レオナちゃんが「やりたくないです」と言ったから。


その代わり、紅白饅頭を一軒一軒に配りながら挨拶するようだった。


「披露宴やらねえなら、それくらいしろ」とお父ちゃんが厳命したからね。


誰が誰だかわからないけど、レオナちゃんは一生懸命頭を下げた。


首を捻挫したかと思うほど疲れたが、夜ケンちゃんがスーパー銭湯に連れてってくれたし、トンカツをご馳走してくれた。


「レオナちゃん、新婚旅行なんだけどさ」

ヒレカツに舌鼓をうっているレオナちゃんに話を持ちかけるケンちゃん。


「はい」


「俺、オーロラが見てえんだ!」


「ほう…というと、北欧でしょうか。いいですね」


「な、な、いいべ?夢だったんだー、子供の頃テレビで見てさー。憧れたなぁ」


「でも、一週間はかかりますよ。大丈夫でしょうか?」


「小松菜の種蒔く時期避ければ平気だべ。よし!親父に明日言うぞ」


お父ちゃんはもちろん、へえー、オーロラ!いいんじゃねえか。と言ってくれた。


お母ちゃんは私も行きたい♡と言った。

ルリコさんと行こうかな。


「別の日に行ってよ、お母ちゃん」


「冗談だよ」


ちょっと言っただけなのに、冗談通じない息子だよ、もう。


「ケンイチさん、ルリコさんに相談して、どこを拠点に観光したらいいか考えましょう」


「うん、そうすっぺ」


「お父ちゃん、お母ちゃん、ありがとう」


ケンちゃんはケジメをつける人だった。レオナちゃんも、ありがとうございますと頭を下げた。


そして、2ヶ月後、二人はヘルシンキに着いた。フィンランドなんてどこだか知らなかったけど、マイナス二十度とかヤバくねえか。小松菜なんか到底できねえ、ケンちゃんは震えながら思った。


空港でも、飛行機でも、ケンちゃんはテンションMAX!で、レオナちゃんに注意される始末だったが、ケンちゃんはへこたれなかった。


レオナちゃんは耳栓をして寝てしまったが、ケンちゃんは飛行機の全てを楽しもうとして必死だった。だって、初めてなんだよ俺。


旅慣れてるよ、うちの奥さん。すごいね、何でも知ってるよ。


機内食は食えたもんじゃなかったけど、とりあえず全部食べた。

 

12時間50分のフライト。やった!あと30分で着く…という時にケンちゃんは爆睡した。


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