第9話 ゆっくりする二人

「ごめんなぁ、迷惑ばっかかけてよう…」


珍しくケンちゃんがしゅんとしている。


興奮しすぎです。

旅は始まったばかりです。

オーロラ見るころにはバテちゃいますよ!


飛行機内で寝られなかったケンちゃんは、もうムニャムニャしていて入国手続きするのも、ホテルにチェックインするのも大変だったのだ。


「これからはちゃんとする。そのー、はしゃいだり、変な時間に寝ちゃうとかよ、しないようにすっから」


珍しくレオナちゃんにお灸を据えられたので、小さくなって謝った。


「もう寝ましょう。明日早いですから」


明日ヘルシンキの観光を済ませ、明後日にはオーロラを観られるツアーに参加する。それがけっこう過酷なので、その前に疲れすぎてはいけない。


ケンちゃんは目が冴えてしまっていたが、ここで起きていると、飛行機と同じことになってしまう。また叱られるのはごめんだ。


俺より10才も年下なのにしっかりしてんな、と思いつつ、仕方なく目を閉じた。


翌朝から、二人は美味しい朝ごはんを食べ、元気に観光した!


ヘルシンキカードを買いましょう、とレオナちゃんは言った。


このカードで公共交通機関、全部乗れるのだ。


「すっげー、レオナちゃん!観光バスとかじゃなくてよ、外国を自分らで歩くのなんて、考えられねえ!」


ケンちゃんは奥さんを誇りに思い、胸を張って歩いた。


なかでも、初めて乗るトラムをとても気に入った。


「こういうの、イスタンブールでも乗りました」


「へえー!すごいねえ、カッコイイよ、ほんと」


プラプラ歩いて、疲れたらカフェに寄り、かわいい雑貨をお土産にたくさん買った。


「ここでだいたいお土産買わないと、オーロラ観光じゃ何も買えないと思います」


「うんうん。これ、お母ちゃん好きかな?」


「お義母さん、…たぶんお菓子がいいです。これはお姉さんに買いましょう」


「そうか、そうだな。お父ちゃんは?」


「手編みのマフラーとか?」


「いいねえ!俺らも買うべ、マフラー!お揃いで」


「お揃いは嫌です」


「えっ」


レオナちゃんはこれ買ってきますね、と会計へ行った。


知らねえうちにお揃いにしちまうべ。


ケンちゃんも強くなってきた、ヘルシンキの午後。すべてが輝いていた。




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