第25話 ケンちゃんの取り調べ

レオナハイツの2階は、めちゃ賑わっていた。


京子姉ちゃんと、ルリコとアイくんが遊びに来ていたのだ。


ルリコは、運命の輪料理長の特製サンドイッチと唐揚げを、京子は、カフェ・マリーの糖質制限弁当を3つとナポリタンを2つ買ってきた。アイくんは自分が飲むビールとワインと、ケンちゃんに麦焼酎を持ってきた。


「わぁ!うまそうー♡」


「さすがはうちの料理長よね!何かのお集まりの際には、唐揚げとサンドイッチ弁当をよろしくお願いします」


さすがは社長、売り込みは全方位である。


「京子ちゃん、どう?慣れた?」


京子は、ルリコの伝手で、ハリウッド女優も客だというネイリストに弟子入りしたのだ。


「うん!すっごく楽しい!すっごく勉強になる!サイコーだよ、毎日」


「悦子と和彦も、うちの実家に来たんだ。姉ちゃんは心置きなく修行できっぺな」


「うん!ケンイチのおかげだよー。ありがとね」


レオナちゃんはみんなにビールのグラスを置きながら、優しく微笑んだ。アイくんは目を細め、口角を上げつつ、この姉と弟を見つめている。


出土した遺物を見てる目と同じだわ。ルリコは思った。


みんなでご馳走を平らげると、女性陣はレオナちゃんの部屋に行った。ルリコが京子の練習台になるというわけだ。


チャンス!

ケンちゃんは、アイくんに500個くらい質問がある!


「アイくん、ワインにすっぺ」


「うん、最初は白がいいな」


「オッケーオッケー」


2人はワインを挟んで向かい合う。へへへへ。


「何よ、ケンちゃん楽しそうだけど」


「だって、やっとアイくんと二人きりになれたからよ、聴きてえこと全部聴いちゃうべと思ってよ」


「おっ、取り調べだね?」


アイくんは、おもしろそうに片眉を上げた。


一番初めの問は、ルリコさんとの出会いはいつ?どこで?


「エジプトのカイロで出会ったんだよ。空港でね。僕らも空港なんだよ、ケンちゃんとレオナちゃんと一緒だよ」


「ヘェ〜」


「ルリちゃんは、入国審査出て手荷物検査のところで、係員と揉めててさ」


そりゃあもう派手で、空港中に響き渡る声で怒鳴ってた!と言うので、ケンちゃんは腹を抱えて笑った。


「まあ、賄賂よこせ、だよ。スムーズに出してやるからと。そんな脅しになると思ってんのか、クソ野郎!この国の偉い人に今電話するからな!って大騒ぎ」


ケンちゃんはのたうち回って笑った。


「ルリちゃんの剣幕に係の男も引いてた。そこで僕がどうしたんですか、と割って入ったの。エジプトの言葉もできるし、ルリちゃんのリュックに相撲取りのキーホルダーが見えたから、日本人だってわかったし」


うんうん、それでそれで?


「ルリちゃんに、そのくらいにしといて行きましょう。ピラミッドですか?俺、車あるから送りますよって言って。そこからいろいろ始まったんだよ」


ふーん。


他人事みたいに聞いてるけどさ、、


「ケンちゃん、そこにはレオナちゃんもいたからね」


「えええええーーー!!」


目をまん丸にしているケンちゃんを見て、今度はアイくんがのけぞって笑った。

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