第24話 アイくんとルリコ

ケンちゃんとレオナちゃんは、カフェ・マリーでランチをしていた。


マリーでも、小松菜の卵とじがリストインして、ケンちゃんはご機嫌だった。


「今日、ルリコさん来るって言ってたな」


「はい。そろそろ来るんじゃないですか」


血糖値の上昇など関係ない、スリムなレオナちゃんは、オムカレーをパクパク食べている。


社長、いらっしゃいませ、あ、アイくんも!


店主のサオリと、美咲ちゃんが出迎える。


「おはよー、ケンちゃん、レオナちゃん」


ルリコが南米のおかしな服を着て手を振る。隣のアイくんは軽く頭を下げて挨拶。


「なによ、ケンちゃん。あたしの服をジロジロ見て」


「い、い、いや、変わってんなーって…へへ」


「変わってるに決まってるでしょ。アイくんのお土産なの」


「インカのシャーマンの服と言われてるんだ。ルリちゃんは、何でも似合っちゃうよ」


それは、どうだろう

うーん…


「えっと、私はほうれん草のグラタン。アイくんは?」


「僕は…、レオナちゃんと同じやつ!」


こうして4人のランチ会が始まった。


「ルリコさん、うちの姉ちゃんのこと、ほんっと、お世話になりました」


離婚が成立したケンちゃんの姉・京子は、ルリコの知り合いの友だちの、すごいネイリストに弟子入りすることになったのだ。


「よかったよね、京子ちゃん。やっと好きなことできるわ」


「何にも知らなくてよぉ、俺たち家族は…。姉ちゃんには悪いことした」


「そんなことないわよ、今なの!京子ちゃんが飛び立つのは、今!だからそんなこと思わなくていいのよ」


「これ、お義姉さんにやってもらったんです」


レオナちゃんが手をルリコに見せた。


練習台になってあげてんのね?いい!いい!かわいいよ♡


レオナちゃんの手を取ったルリコの手首に、見慣れないバングルが着けられていた。


あ、これ?


ルリコがてへへへと笑って、アイくんを見る。


アイくんも右手の手首に、同じバングルを着けていた。


「僕たち、結婚したんだ、クスコで」


「そうなの」


えええええ!

えーっ!


キッチンではフライパンが落ちる音がした。


アイくんは細かい作業や、土を掘ったりも多いから、腕輪にしたという。


「おめでとうございます」


「ありがとう、レオナちゃん」


「けけけ結婚式はやんねえの?」


やらないわよぉー、もう。やってきたもの。


インカスタイルで。


「サオリちゃん、美味しくできてるわよぉー」


「ありがとうございます」


サオリの店も最近では安定の繁盛ぶりである。彼女は休みの日はいつも、運命の輪で研修しているので、腕が滅法上がってきた!


「この前のササミとブロッコリーのは習った?」


「はい、でもまだ思うように行かないので、また習いに伺います」


そうだね、とルリコはニコニコ笑った。

以前とはまったく違う笑みだなぁ、とレオナちゃんは思った。


「んじゃ、この前のペルーが新婚旅行ってわけだったのけ?」


「ちがうよ。職場訪問だよ、あれは。蛇が怖すぎて、実際は大人しくホテルにいたけど」


「新婚旅行は、どこかの温泉を何軒かハシゴしたいって、僕は言ってる。外国はもう面倒だし、美味しいものを確実に食べたいし」


「それでね…」


「僕は……」

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