第17話 岩盤浴パラデイザ

「ああー!気持ちいいなぁー」


栗林武雄がため息と共に思わず言った。


「いいでしょ?いいでしょ?社長さん、ありがとうございます♡」


隣にはルリコが寝ている。ヤス子は来客があるので留守番だ。


最近、ルリコはカフェ「運命の輪」の近所に、パラデイザという岩盤浴施設を作った。かかるお金の半分を武雄が出してくれた。


完全会員制、予約制なので、2時間半の間岩盤浴やり放題、世界のミネラルウォーター飲み放題である。


これがクチコミで広まり、軌道に乗るのは早かった。2人まで入れるので、カップルや友達でゆっくりできる。


料金は10000円(1人でも2人でも)と安くはないが、とにかくみんな疲れてるし、プライベート空間でくつろげる。絶対こういうの欲しいはず!というルリコの目論見は見事に当たった。


お父ちゃんは長年畑仕事をしてきたが、ほぐすことを知らない。騙されたと思ってやってみて、ね、ね、とルリコに説得されて来てみたら、すっかりハマってしまった!


「借金返すまで、武雄さんは無料です!」


ルリコさんが金を受け取らないんだよ、とお母ちゃんに言うと、いいんじゃないの、甘えなよと言う。


こういうの、好きじゃねえんだが。…とにかく気持ちいいなぁー。


「この前ケンちゃんの前の嫁、来たんだってね」


「…らしいな。うちのお母ちゃんが怒ってたわ」


「これで、お互いにケリついてよかったよ。ケンちゃんもスッキリしたって言ってたもんね」


「レオナちゃんには悪かったよなあー。気分悪いべ」


大丈夫だよ、お父ちゃん。


そうか。


「今度は左の脇腹を下にしてみて!」


「おっ、そうか。よっ、と!ああー、あったまるなあー」


「帰る頃、ケンちゃん迎えに来るって。すき焼きだってよ、今夜」


「おっ、そうか。そりゃ、楽しみだ」


温かい岩に横たわって、身体を休めるって、こんなにいいもんなんだな。俺はいいことをおしえてもらったなー。


また、いい投資したっぺ、俺。




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