ケンちゃんとレオナちゃん
錦木シャロン
第1話 お母ちゃんの証言
「シンガポール空港でも、目立ってたよねえ。年が離れた二人連れでぇ、大きい方は金髪で、小さい方は真面目そうな若い子で。親子って感じでもねえべ。私らのツアーでもない、どこのツアーでもなく、ぷらっと二人だけでさぁ、慣れた様子なのはわかったね」
お母ちゃんは挫いてしまった足を、そうっと引き寄せて、湯呑みからお茶を飲んだ。
お母ちゃんは組合で行ったシンガポール旅行を終えホッとしたのか成田空港の通路で、他の乗客の荷物につまずいてでこけてしまったのだ。
「大丈夫ですか?!」
走ってきてくれたのが、大きいのと小さいのの謎の二人連れだった。
大きい方はあたふたしている組合の老人たちを尻目に、空港の人をすぐに呼びに行ってくれ、小さい子はずっと付き添ってくれたという。
「ここからは何で帰られるんですか?お迎え来るんですか?」
「息子さんがいる?んー、じゃあ、来てもらいましょうよ。皆さんとマイクロバスじゃ何かとねえ」
車椅子で医務室に運ばれたお母ちゃんは、大きい方の仕切りに従った。
小さい方が押してきた成田空港のカートには、すでにお母ちゃんのスーツケースとたんまり買ったお土産があったという。
「あ、皆さんに聞いて、栗林さんのお荷物預かってきました。心配しなくて大丈夫!」
どう驚いた?みたいな顔で大きい方が報告した。
「なんか、申し訳ないねえ。知らない人なのにここまで世話になっちゃって」
消えいるような声でお母ちゃんが詫びると、やだー♡気にすることないですよ、旅人の縁ってやつですから!
「ねえ、レオナちゃん?」
「はい」
(小さい方、レオナちゃんていうんだ…)
栗林ヤス子は、なんだかわからないうちに包帯され、湿布をもらい、息子の迎えを待っていた。
そして、二人の地元が同じ県だと聞き、一緒に行きましょう!家まで送らせると言った。
「えっ!本当ですか?ラッキー」
一回くらい遠慮するかと思ったが、二人は大喜びで乗せてもらうと言ってきた。
そして、イシバシルリコと申しますと言い、小さい方はホシカワレオナと名乗った。
それから一時間後、栗林ヤス子の長男・ケンちゃんはレオナちゃんと運命の出会いを果たす…
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