第2話 京子姉ちゃん馳せ参じる

「ちょっと!ケンイチが再婚するってほんと?」

実家にぎゃんぎゃん電話してくるのは、栗林家の長女・京子だ。


とにかく威勢がいい。威勢と書いて京子と呼ぶくらいいい。気が強い。はっきりしている。威張ってるけど意地悪ではないので、嫁ぎ先でも支持者は多い。


「大丈夫なの?あの子は前の女で嫌な思いしてるからさ、心配なんだよ。お母ちゃん、その人に会ったの?」


京子は気のいい弟が嫌な思いをしたり、傷つけられるのは我慢ならない。


「あの女、今思い出してもハラワタが煮えてくる!もっと引っ叩けばよかった」


「ちょっと、京子!落ち着いてよ。あんた、早いとここっち来てレオナちゃんに会いなよ。そしたらわかるよ」


京子はすぐに来た。


「あらー………」


「レオナちゃん、俺の姉。京子。よろしくね」

ケンちゃんは照れたように紹介した。


「小せえころから面倒みてもらってて、…つか、今もみてもらってる。なんつーか、もう一人の母ちゃんみてえなもんなんだ」


レオナちゃんはうなづくと、真面目な顔でお辞儀をした。


「星川レオナです。よろしくお願いします」


京子はなぜかわからないけど涙ぐんでいた。大丈夫だ、今度こそ。うちのケンイチは幸せになれる。…と思ったのだ。


「レオナちゃん、どうかケンイチをよろしくお願いします」


ケンちゃんはこんな姉ちゃんを始めて見た。心臓がドキッとするほど、真剣な様子の姉ちゃん。


そうか、俺はこんなに姉ちゃんに心配かけてたんだ。あれからずっと…姉ちゃんは、俺以上に落ち込んでたんだ。


ケンちゃんもなんだか泣けてきた。


レオナちゃんは泣いてる姉弟を交互に見て、困っている。


「なーに、泣いてんだお前ら」


ガハハと笑いながら父ちゃんが居間に入ってきた。畑から戻ってきたのだ。


「レオナちゃん、見てみろ。困ってっぺな。ごめんな、うちの子供らみんな涙もろいんだ。気にすんな」


京子も笑った。


「いやー、ごめんごめん。こんないい子がケンイチんとこ来てくれるなんて、感激しちゃったもんだから」


「レオナちゃんは最高だよ、姉ちゃん」


「はいはい。よかったね、ケンイチ」


「こいつめ、臆面もなくのろけやがって。京子、帰りに米持ってけ」


お父ちゃんは風呂に行ったようだ。


「空港でお母ちゃんを助けてくれたんだって?」


「あ、はい…たまたま居合わせて」


「お友達といたとか?なんか、すごい、迫力のあるお友達なんだって?」


レオナちゃんはクスクス笑った。


「ふふ、ルリコさんです。一緒にいろいろ旅行するんです」


「海外たくさん行ったんだね?」


「はい。カンボジアとか、トルコとか、シンガポールはこの前で3回目でした」


「へえー、大したもんだねえ。そのルリコさんて人はなにやってるの?」


京子姉ちゃんの取り調べは、母ちゃんに怒られるまで続いた。

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