第21話 京子姉ちゃんの野望

「ずっと火種はくすぶってたんだ。でも思い切れなかったんだよ、子供もいたしよ。今は違う。レオナちゃんがうちに来てくれたのも大きいんだ」


「そうなんですか…」


「やっぱ、ケンのことが安心できるまで、あたしが騒ぎ起こしちゃダメだと。でも、もう安心だし、ルリコさんもいるし。身近に心を支えてくれる人がいるって、すごいんだよ」


一人で戦うのは辛いよ…


レオナちゃんは吹き出した汗を拭った。


「離婚したら、どうするかもう決めているんですか?」


「そうなのっ!」


京子も起き上がって汗を拭いた。


笑われちゃうかも知んないけどさ、ネイリストになりたいんだ!


「おお!意外ですね。あっ、でも、いつも綺麗にしてますもんね、お義姉さんの爪」


「誰にもわかんねえように勉強してたんだよ、夜中に。綺麗な色にキラキラとかツブツブ付けるの、本当に楽しくってさあ」


どうせ話してもわかりっこないから、うちの家族は。


娘と息子はもちろん応援してくれている。

夫と、義理の両親は、ネイリストという職業さえ知らないだろう、と京子は言った。


レオナちゃんは頷いた。


「もし離婚したら、とりあえずうちに来たらいいじゃないですか。部屋もたくさんあります。ルリコさんも再来週には戻りますから」


そうなのだ。

ルリコは今、グアテマラだかメキシコだかペルーにいる。


「そうそう!ルリコさんに相談したいよね、この件は。ネイリストの友達とか絶対いそう!」


知り合いの知り合いには絶対いるだろうと、レオナちゃんも思った。


「すっごいよね、しかし。若い恋人を追って、南米に行っちまうんだから♡希望の星よ、あの人は。離婚しようと覚悟を決められたの、ルリコさんのおかげなんだ」


レオナちゃんも同意である。


不可能はない!制限を取り払え!はルリコの会社の社訓。


自分を止めてるのは、自分なんだと。


ハートがやりたいことやってると、どんどん幸せで健康になるんだよ、と。常に言っているルリコは、そもそも他人の評価とは無縁だ。


「あの人に、やりたいことがあるのに、やらないってことはない!って教えてもらったよ」


京子とレオナちゃんは岩盤浴を出ると、冷えたフランスの水をゴクゴク飲んだ。


「じゃあ、小松菜の卵とじ食べにいこ」


「はい。ケンイチさんにもテイクアウト買っていきます」


京子のサッパリした横顔は、ツルツルに輝いていた。


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