第48話 進路

京子のネイルサロンがとうとう完成した。


今日は関係者のレセプションパーティということで、カフェ・マリーのサオリも手伝いに行っていた。


店舗プロデュースはもちろんルリコの会社で、レセプションの料理も運命の輪!


サオリは「タダで」駆り出されるのだが、料理長やサッちゃんの盛り付けを学び、運搬しても崩れにくいレシピをゲットできるので、実質時給10万円以上なのである。


その間、マリーは、美咲ちゃんとサオリの長男康太で回していた。


美咲ちゃんはサオリの「鬼のような仕込み」で腕を上げ、ほとんどのメニューを調理できる。


じゃあ、よろしく。行ってきます。


サオリが何も言わずに出かけて行って、自分への信頼を感じる美咲ちゃん。いつも以上に気合を入れて頑張り、無事にランチを終えた。


「ねえ、美咲ちゃん…」


康太がモジモジ声を掛けてきた。


美咲ちゃんは、こーちゃん、私たちもランチにしよう!と2人分のプレートを差し出し、一度店を閉めた。


美咲ちゃんは占い師。

ちょっと人と違う目を持っている。康太がサオリのいないこの時、何かを相談してくるのがわかっていた。


「こーちゃん、何か相談あるんでしよ」


生姜焼き大食を食べながら、さりげなく水を向けてやった。


「うん…あのさ、僕がネイリストになってもいいかな」


「もちろん、いいんじゃないの。ネイルなんてセンスだしさ、頑張ればできるよ」


「お母ちゃん、びっくりするかな?」


美咲ちゃんは、吹き出してしまった。


ここにいる誰よりも、うちの息子は女らしいね、と爆笑しているサオリが、今更何を驚くというのか。


「なに?変?僕の質問…」


「いや、さ、…こーちゃん、お母さんは何一つ驚かないから相談した方がいい、今夜にでも。で、京子さんに習うんでしょ?」


「うん。できればそうしたいなって…」


案の定、何一つ驚かなかった母サオリが、京子に連絡して、あっというまに康太は東京へ行くことになった。


「うちの息子にやりたいことがあって良かったわ」


「本当ですよ。私もいつかこーちゃんにネイルやってもらいます」


「あっという間に大きくなっちゃってねえ…」


「今度会うのが楽しみですねえ」


「あっ、美咲ちゃん!この前料理長にいいレシピもらったのがあって、今から試しに作るから。食べてみてちょうだい。メニューに入れられるかどうかさ…」


「わあ!楽しみです」


カフェ・マリーは今日も元気に営業中である。

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ケンちゃんとレオナちゃん 錦木シャロン @yurikomotoharu

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