第43話 進路相談
その気になれば50人は泊まれる広大な栗林家で、京子の娘・悦子は留守番をしていた。
留守番しながら、軽く緊張していた。
これからルリコが来るのだ。
「じいちゃんが寄り合いから帰るまで、お茶とお茶菓子出して、ルリコさんとお話ししてろよ」
武雄に言いつけられ、お茶とお菓子をセットして待っている。
(チャンス!)
普段、親や祖父母と話すことはあっても、ルリコと自分が話すことなどないのだ。
(聞きたいこと、この際だから聞いちゃお!)
「こんにちは〜!」
来た!
あら、えっちゃん。おじいちゃんいるかな?
ゴングが悦子の脳内で鳴った。
お茶とお菓子をルリコに出し、自分の分も持って来て、テーブルに腰掛けた。
「あ、あの…、先日は楽しい宴会をありがとうございました」
「美味しかった?」
「はい!どれもこれも美味しくて。和彦なんかお土産も欲しいくらいだって…」
「よかった。うちのサッちゃんに伝えとくね。ところで、……えっちゃん、何か話があるの?私に」
ルリコが眉毛を上げながら、イタズラな笑みを浮かべている。
ドキドキ
なんでわかるの?
「そうなんです。実は今、わたし高校2年で、進路を考えてて…ルリコさんが私ぐらいの時って、どういうふうに自分の将来のこと考えてたのかなって、…それを聞きたかったんです」
なるほどねー。私がえっちゃんのころは、遊んでばっかりで、勉強もできなかったね。
「えっ?ルリコさんが?」
「そうだよー。今の私に急になるわけじゃないもの」
満面の笑みでルリコが言った。
結局、好きなことをやるしかないよ。嫌いなことは続かない。誰かに、こうしなさい、将来安泰だよ、と言われても続かないのよ。
悦子は頷く。
「好きだから勉強する、研究する、上手になる、得意になる、プロになる、ってことだよ。飽きないでずっとやれることを一生懸命探すの!お母さん見てご覧よ」
うんうん、そうですね。
「こういうわけでやらなかった、できなかった、なんて言ってる人はそもそも好きじゃなかったの。京子ちゃん、あなたたち育てながらネイルの勉強続けてきたから、今があるのよ」
「母は本当に大変でしたから…。今、幸せそうで嬉しいんです。ルリコさんのおかげです」
「頑張ってるとね、ツテを持った人に必ず会えるんだよ。これホント」
「そうなんですね」
「やりたいことあったら、えっちゃんもガーンとやっちゃいなよ!」
「はいっ。そうします!」
あっ、お茶入れ直しますね。お菓子もどうぞ!
ルリコはごくんと、緑茶を飲んだ。
(これだけ美味しいお茶入れるんだから、できるよ、なんでも)
あっ、じいちゃん来ましたー。
ルリコは武雄に、パラデイザの収支報告書を持って来たのだが、
(えっちゃんかぁー)
自分を呼んだのは、と思った。
(彼女、うちのアイくん好きだしね♡さすがにそれは訊かれないか…笑)
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