第18話 二人目の犠牲者②
宇佐美が踊り場まで階段を駆け下りると、下から上って来る美土里と出くわした。
美土里は両手に大きなビニールの袋を下げている。
顔がひどく疲れていた。
「宇佐美様、皆様にお食事をお配りしてよろしいでしょうか」
宇佐美は急いで階段を下りた。「お持ちします」と美土里からビニール袋を取り上げる。
缶詰やスナック菓子、ペットボトルの飲料などで、袋はかなり重かった。
美土里は恐縮したが「ここにいて下さい」と宇佐美は美土里を待たせて、袋を手にしながら今下りてきた階段を上がった。
上がりきったところに藍子と朱美がいた。
藍子の後ろにマミ達三人も立っている。
「梅子さん、いなくなったの?」と藍子が訊いてきた。
宇佐美は床にビニール袋を置いた。
「美土里さんからです。みなさんで分けて下さい。誰も部屋からは出ないで下さい」
それだけ言うと宇佐美は階段を下りた。
自分の荷物の中に黒のワンピースが入っているのを見つけた時、廊下を歩く足音を聞いた。
あれは、梅子だったのか——。
足音を聞きつけてすぐに、宇佐美はドアを開けて廊下を見た。
だが誰もいなかった。
その人物は階段を下りていったのか?
踊り場まで下りると、こちらを見上げてくる美土里と目が合った。
美土里は宇佐美に言われた位置で待っていた。
また何かありましたかと、目が不安げだ。
「お疲れのところすみませんが、梅子さんが一階のお部屋に戻られたようですので、一緒に行って頂けませんか」
宇佐美が言うと、「そうでしたか」と美土里はホッとした顔をした。
物置を片付けて作った梅子の部屋を宇佐美はノックした。
中からの返事はない。
「梅子さん、開けさせてもらいます」
スペアキーを使って宇佐美はドアを開けて、電気をつけた。
急拵えの部屋にしては客間らしい体裁が整った部屋には、誰もいなかった。
梅子の車椅子がぽつんと置かれているだけだ。
宇佐美は美土里を連れて、一階の他の部屋を見て回った。
美土里と
今井の遺体が横たわる食堂も鍵を開けて確認した。
だがどこにも梅子はいない。
一階の部屋を次々見ていくうちに、美土里の様子が落ち着かなくなってきた。
「……宇佐美様……あのお部屋でしたら——」
美土里は首にぶら下げた鍵を服の中から取り出した。
「——鍵はこれだけですし、私が常に身につけていますから、誰も入ることは出来ません……梅子様がいらっしゃるとは思えませんが、お入りになりますか?」
「確認ですが、僕にゴム手袋を持ってきてくれた時、誰かと階段で会いませんでしたか?」
「もちろんです」美土里はしっかりと首を振った。「どなたも下りて来ませんでした」
宇佐美は苦笑いした。
「二階に戻ります」
はあと、美土里はぽかんとした。「梅子さんは、二階に戻られたんですか」
「あなたの言葉を信じなかった僕のミスです」
梅子が一階の部屋に戻ったと言ったマミの言葉を鵜呑みにもしてしまった。
「梅子さんは、ずっと二階にいたんだと思います」
宇佐美は嫌な予感がして仕方がなかった。
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