第23話 萌子がまたまた来た。
「今日も陽子は来てないよ!」
「ブレないね司くんは、いい加減気がついた方が良いよ? 私が司くん目当てだって」
「あのな…お前みたいな美少女が俺を好きになる訳無いだろう? それに、俺は最近まで萌子と挨拶位しかした記憶が無い!」
「あはははっ、確かにそうだね…冗談だよ? だけど司くん目当ては本当だよ! この部屋居心地が良いし…司くんなら襲ってきたりしないでしょう? うんうん、安心」
「なんだ、部屋目当てかよ」
確かに高校生で1人暮らししている奴は少ないよな。
俺は自分で言うのもなんだが安全パイだから転がり込むのにちょうど良いのかも知れない。
「うん、そうだね」
あっさりしたもんだ。
「しかし、萌子ありがとうな」
「まぁ私も一緒に楽しめるし、家じゃ要らないものだしね!それじゃ次はこれをやろうよ」
俺は認めなくちゃいけないな。
『俺は飢えている』
いや、女の子という意味じゃない…俺が飢えていたのは人だ。
お婆ちゃんが死んでから母さんとも仲が悪く1人暮らしだ。
友達む少なく、居たのは幼馴染の陽子1人。
あとは学校で過ごすだけの友達だ。
「そうだな、やってみるか?」
「しかし、司は本当にゲームが下手だね」
「今までやった事ないんだから仕方ないだろう」
「へぇ~今時珍しいね」
此奴、本当に無防備だよな、今でもうつ伏せになって足をばたつかせているし…チラチラ、パンツが見えるっーの。
「まぁね、少し特殊だから」
「霊能者だから?」
「はぁ~この間も行ったけど、霊能力があったのはお婆ちゃんだけ、俺は何も受け継いで無いよ」
「そうかな~まぁ良いや、私、司くんのその目が凄く好きなんだよね?どんな宝石よりも綺麗だよ!」
「そうか?嫌う人も沢山いるけどな? だけどこの目は俺も好きなんだ…そう言って貰えると…嬉しいよ」
この目はお婆ちゃんが、お稲荷様と閻魔様に頼んで貰った目だ。
だから、色が金色でも、大切な物だ。
面と向かって言われると、嬉しくなる。
「そう、本当に綺麗だよ! 吸い込まれそうになる位に」
いつも萌子は俺の目を覗き込んで来る。
思春期の男の子の目を、キス出来る距離で覗き込んで来る。
それに最近の萌子は眼鏡をかけていない。
萌子自慢の美少女バージョンだ。
なんだか、男が女を口説く時のセリフみたいな感じだな。
「萌子、それ逆だから」
「あははっ、そうね…うん確かに男の子が女の子を口説くセリフみたいだね」
「確かに…」
「だったら、司くんも私の良い所、言ってみてよ?」
ハァ~困ったな。
萌子は、実際に眼鏡を外して髪型を変えた今の姿は、本当に可愛い。
好き、嫌いじゃなく、ちょっとしたアイドルみたいなレベルだ。
『全部』って言えるレベルだ。
だが、それを言うのもなんだかな…
「そうだな、俺を覗き込んでくる時の表情が可愛い…あとは足かな?長くて綺麗だ」
「本当?! ありがとう!」
また、俺の目を覗き込んでくる。
本当に誤解しそうで怖いからやめて欲しい。
「あのさぁ、萌子、最近よく俺の家に来るよな? 本当に大丈夫なのか?」
「うん、全然大丈夫だよ! うちは今は放任主義だから」
それも可笑しいんだよな…
昔の萌子の家庭は解らない。
だが、今の萌子の家は東方(ひがしかた)だ。
東方って言えば文京区の田園調布って呼ばれる高級住宅街。
金持ちばかりが沢山住んでいて、医者や弁護士、上場企業の社長も多数住んでいる。
此処では3億円の豪邸ですら小さく見える場所だ。
連れ子とはいえ、そこに住んでいる萌子は『お嬢様』って事になる。
それがこれだけ俺の家に入り浸っていて問題が無いのだろうか?
「だけど、萌子の家は東方だろう? お嬢様じゃないのか?」
「うん…お嬢様だね?!…だけど、そんなのは関係ないじゃん…ほうらゲームに集中して、ダダでさえ弱いんだから」
「解った」
本当に大丈夫なのか?
◆◆◆
「ふぅ~お腹すいたね」
「仕方が無い、虎の子の袋ラーメンがあるけど食うか?」
「あっ、貰う、貰う…」
もう時間は夜の8時を回っている大丈夫なのか?
「それじゃ、作るから、それ食べたら近くまで送っていくよ」
「ええっ、良いよ…なんなら泊っていっても…痛っ」
「そういう冗談は言わない! 俺じゃなかったら本気にするから」
「あははっ、本気にしても良いのに…だけど司くん、いきなりチョップは酷いよ」
「あっ、ついゴメン…」
「まぁ良いや、ラーメン食べたら退散するよ…その送ってくれるんでしょう?」
「流石にな…」
「それじゃ今日はそれで手を打ちますか…」
即席ラーメンを美味しそうに食べる萌子はお嬢様には見えなかった。
送っていった家は東方らしく豪邸なのに…
なんでだろう…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます