第13話 接点
名前が出てきたと言う事は『ただの自殺』では無い可能性が高い。
どの様に関わったのかは解らないが、二人の人間が高部先輩の死に関わっていた事だけは確かだ。
一人は『犬神翼』もう一人は『湯浅萌子』だ。
此処迄は良い。
此処迄は俺の能力で確実に解っている事だ。
間違い無い…
ここからどうするかだな!
『調べる』
どうやって?
俺は探偵じゃない。
調べ方が解らない。
殺人?自殺?そこに繋がる話なら、おいそれとは話してくれないだろう。
犬神先輩とは知り合いじゃないから今はどうする事も出来ない。
まずは気軽に話せる萌子の方に行ってみるか?
◆◆◆
「珍しいね!今日は陽子ちゃんと一緒じゃないんだ?」
「幼馴染だからって、いつも一緒に居る訳じゃ無いよ」
確かに幼馴染だから陽子と一緒に居る時間は多い。
昔は良く冷やかされたな。
「まぁ、そりゃそうだね? それで今日は何かようなの? 司くんから声をかけて来るなんて珍しいじゃない? もしかして、見つめ合っていたから私の事好きになった?」
口元が笑っているから、これは只の冗談なのは見え見えだ。
「そういう冗談はおいて置いて、高部先輩の自殺の事なんだけど? なんか可笑しいと思わない?」
俺は探偵じゃないし、まして刑事でも無い。
遠まわしに聞きだすなんて技術は無いから、直球勝負だ。
「え~と?なにが?」
「いや、高部先輩ってこの高校のアイドルみたいな存在だっただろう? 自殺するにしても公衆便所は無いんじゃないかな?」
「う~んどうだろう? 確かにトイレは無いと思うけど?人間切羽詰まったら結構、どう言う行動をとるか解らないんじゃないかな?」
どう考えても、萌子が関わっている様には思えないな。
俺の目を見ながら動揺1つしないで普通に話している。
もし、何か関わっているなら、普通は何かしら様子が可笑しい筈だ。
「確かにそうだけど? 可笑しいと思わないか?よりによって公衆便所…確かに人通りは少ないけど、全く無い訳じゃない!普通なら選ばない気がしてね… 高部先輩ならもし死ぬとしたら海とかでドラマチックな死に方をしそうな気がするんだよ」
「司くん、不謹慎だよ! まぁだけど、そうだね…あんな場所で死ぬとは確かに思えないよね! だけど、私達が考えてもしょうがないんじゃないの? 司くんって高部先輩と仲良かったの?」
「全然」
「それなら、調べても仕方ないんじゃない? まさか探偵ごっこ?」
「そう言う訳じゃないけど、逆に萌子は知り合いだったりする?」
「少しだけ、とは言っても読書クラブで一緒だっただけだよ」
「読書クラブ?」
「楽そうだからクラブの選択で選んだの…似合わないとか言わないでよ」
高部先輩は読書クラブだったのか?2人とも全然似合わないな。
「確かに、萌子も高部先輩も似合わないね」
「うん、別に本が好きな訳じゃないから、二人していつも寝ていたよ!担当の先生も静かにしていれば別に寝ていて良いって言っていたから、あははお言葉に甘えていた」
そんなに楽なら俺もクラブ活動は読書クラブにすれば良かったな。
陽子に何故か誘われて囲碁クラブに入っちゃったんだよな。
失敗した。
「そうなんだ」
「あっ、もうこんな時間、悪いけど私行くね」
「何処へ?」
「司くん、折角のイケメンなのにデリカシーが無いね…女の子にそんなこと聞かないでよ」
「あっごめん」
休み時間に行く所といえば…トイレだな。
萌子はパタパタと早歩きで去っていった。
◆◆◆
萌子は元から俺の目を見て話す。
だから、凄く観察がしやすかった。
素人だから本当の所は解らない。
だが、本当に何か関わっているなら此処まで普通に話せるものだろうか?
少なくとも動揺した風には俺には思えなかった。
結局、解った事は萌子は同じクラブに入っていて高部先輩と面識はあった。
それだけだ。
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