第14話 調査
良く刑事ドラマや探偵ドラマでは現場100回という言葉を耳にする。
やはり此処は現場を見ない訳にはいかないだろうな。
俺は陽子と一緒に家に送ったあと、1人で事件のあった元弥生第3公衆便所に来ていた。
流石に事件から暫くたったせいかテープは剥がされていたが、女子便所の方には入れないように木で塞がれていた。
普通に使える男子便所に入ってみたが…
やはりそうだ。
何処を天井は高いが首をつる為のロープを掛ける場所が見つからない。
確かに梁はあるが洋便器に乗っても届かない。
あそこにロープを掛けるには梯子が必要だし、便所のパテーションより上だから、あそこに掛けるなら入ってきたら一発で見られる。
そんな場所を自殺の場所に選ぶのはどう考えても可笑しい。
だったら…
自殺だとしたら、態々この不便な場所を選ぶ理由があり、殺人だとしもこの場所でなくてはならない理由がある筈だ。
さて、問題は、どうするかだ?
男子便所が高部先輩の亡くなった場所じゃない。
隣の女子便所が高部先輩が死んだ場所だ。
釘で板を打ち付けてある女子便所。
多分、もう捜査は終わった場所だ。
だが、男である俺が女子便所に入って良い物だろうか?
いや、それもあるが態々入れない様に閉鎖した場所に入って良い物なのだろうか?
此処までやったんだ…入らない選択は無い。
俺は女子便所の方も調べてみる事にした。
板で閉鎖はしてあるが、所詮は木の板。
思いっきり何回か蹴飛ばしたら板が外れた。
薄暗くて気持ち悪いな。
昼間だが、電気が消えているせいか薄暗くて、少し気持ち悪い。
男子便所は割と綺麗だったが、女子便所は少し、いやかなり汚い気がする。
しかも、壁には卑猥な言葉の落書きが幾つもあった。
ヤバいな…この落書きはどう考えても男が書いたとしか思えないから、この女子便所に平気で入る位の変態がいた。
そういう事だよな?
だが、その変態は犯人じゃない…
もし他殺だとしたら犯人は解っている。
スマホの画面を明かりにし、個室に入り中を確認した。
鼻からはツンとした臭いが漂ってきた。
臭い…カブトムシを死んだ状態で放置すると凄まじい悪臭がする。
それと魚が腐った様な臭いを併せたような臭いが漂ってきた。
思わず吐きそうになったが何とか堪えた。
床に茶色いシミが残っていた。
これは血なのかも知れない
個室のパテーションは一部ペンキで塗られていた。
此処にもしかしたら何かが書かれていたのかも知れないな。
今となっては解らない。
ただうっすらと赤字が見える。
もしかして遺言なのか?
梁は高いから、あそこにロープをかけて首を吊るのは不自然だよな。
そう考えると個室のパテーションにロープを掛けて死んだと考えるしかないが、これじゃ足がつく。
余程、死ぬ気が強く無ければ死ねない、無理だ。
暫く手がかりを探して見ていた。
もし、手がかりがあったとしても警察が回収した後だろう。
帰ろうか…そう思った時だ。
「えっ」
目の前を黒い何かが通り過ぎた気がする。
その瞬間、ゴッ…頭に衝撃が走った。
『痛い』
そう思った時に、頭から液体が流れだした。
血だ…
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーー」
思わず、俺は大声をあげた。
『おんぎゃぁぁ、おんぎゃぁぁ、おんぎゃぁぁぁ』
遠くから赤ん坊の声が聞こえた気がする…
そして
「次は…殺す」
明らかに何者かの殺意ある声を聴きながら、俺は意識を失った。
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