第17話 概ね解決した...謎はまだ残る。
いよいよ今日の夕方には退院だ。
病室でやる事も無くゴロゴロしていると、警察官が今日もやってきた。
今日はスーツの人間も居る…多分刑事かな。
「昨日はDNAをはじめご協力ありがとう、また情報の提供もありがとう…ある程度事件の目途がたったので一応報告にきました」
事件の目途がたった?
俺が提供した情報?
「どう言う事でしょうか?」
「ショックを受けないで下さい! 犬神翼が昨日、例の公衆便所で自殺しました!」
確かに顔色が悪かったけど、あの後自殺したのか?
そうすると、やはり高部先輩を殺したのは犬神先輩、そういう事か?
「それで、なんで事件が解決した事になるんですか?」
正直訳が解らない。
何故だ…
「ああっ、東狐さん、貴方がオカルトみたいな事でしたが犬神翼が怪しいと言ったでしょう?だからまぁ、念のために調べたんですよ!そうしたら高部麻美子さんのお腹の子と犬神翼のDNAを調べた所、親子関係が解りました…あとは簡単でしたよ」
警察の調べではこうだ。
高部先輩と犬神先輩はひっそりと付き合っていた。
そして肉体関係にありその結果妊娠をしたそうだ。
ただ、此処からが色々と問題だった。
高部先輩はアイドルとしてかなり人気があり次回のテレビドラマ『女極道刑事』の主演が決まっていたそうだ。
そんな中の妊娠。
プロダクションではこっそりと堕胎させるつもりだったが高部先輩は『絶対に産む』と言って反対。
だが、プロダクションとしては大きなチャンスを逃したくないから真向対決。
それでも折れない高部先輩に『莫大な損害賠償金』を請求したそうだ。
それは一般的な家庭では到底払える金額では無かった。
どうする事も出来ない高部先輩は恋人で子供の父親である犬神先輩を頼った。
高部先輩は犬神先輩に「駆け落ちして欲しい」と懇願。
だが、犬神先輩はそれを断り「子供を降ろして欲しい」と高部先輩に頼んだそうだ。
その言葉に絶望した高部先輩は犬神先輩の家に近い公衆便所で自殺した。
そして、そこを俺が調べていたから後ろから近くにあったレンガで殴った。
そんな話だった。
「良く、こんな短期間に解りましたね」
「いや、これは犬神翼の遺言書で解った事なんです。ですが、概ね間違い無さそうです」
「そうですか」
「本当の所は解りません。ですが、『妊娠をしてどうする事も出来なくなって自殺』『その時の事を悲観して自殺』これだけは間違いありません。警察の方はこれで捜査は終わりです。本当は伝えては不味いのですが、今回は東狐さんだったので伝えました」
なんでだ…
「俺だからですか?」
「東狐さん、貴方の亡くなったお婆様には捜査の手伝いをして貰った事がありましてね、その時の条件が『結果を伝える』そういう約束でしたから、お伝えに来ました」
「お婆ちゃんが」
「もうかなり昔の話です。まぁ私が駆け出しの頃かな」
「そうですか…ありがとうございます」
「いえいえ、それじゃ私達はこれで…そうそう、貴方が聞いた赤ん坊の声ですが、あの辺りは千駄木や谷中が近く野良猫が沢山住んでいるんですよ! さかりのついた猫の声は赤ん坊の声に聞こえるそうですから、多分、それだと思います」
そう言うと刑事たちは去っていった。
これで解決…
じゃない…
俺を殴ったのは犬神翼、これは良い。
だが、後ろから殴ったのなら前を横切った黒い影は何者なのか?
それに俺の頭に浮かんだもう一人『湯浅萌子』がどう関わったのか?
まだ完全に終わったわけじゃない。
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