第18話 萌子 解決篇
俺は頭の中で『犬神 翼』を殺したのは誰だ。
そう静かに考えた。
やはりそうだ『東狐 司』と俺の名前が浮かんできた。
これで、はっきりした事がある。
俺の能力だと、直接手を下したり、追い詰めたりしなくても、その原因になった人間は犯人として浮かんでしまう。
そういう事だ。
俺は犬神先輩とただ話しただけだ。
特に何かしたわけでは無い。
だが、恐らく俺が『赤ん坊の声を聴いた』と話したが為に良心の呵責に耐えかねて自殺してしまった。
恐らくはそういう事だ。
法律的に俺は無罪だ。
だが、俺の能力的には『殺した人間』となる。
確かに、俺が『赤ん坊の声を聴いた』そう言わなければ、犬神先輩は自殺しなかった可能性が高い。
だからだな。
これで萌子の件も憶測の範囲だが想像がつく。
多分、俺と同じような物だろう。
萌子が無意識のうちにきっと俺と同じようにやらかしたのだろう。
それこそ、罪の意識も無い状態でだ。
◆◆◆
「ちょっと聞きにくいんだが良いかな?」
俺は萌子を屋上に呼び出した。
「どうしたの?ああっまさか私に惚れて告白とか?」
「いや、違う…」
さてどうやって切り出そうか?
『妊娠について高部先輩と話した?』
率直に聞けたら楽だけど、流石に聞けないな。
「そうか? 残念だなぁ~! もしかしてまた高部先輩の事? あれなら犬神さんが犯人だったんでしょう?」
「そうだね」
「まだ、何か気になるの?」
「高部先輩は、その結構精神的に追い詰められていたみたいなんだけど?…なにか相談とかされなかった?」
「相談かぁ~ 特に無かったかな。ただ、そう言えば一度『友達が妊娠したんだけど?どう言ってあげたら良いと思う?』そう聞かれた事があったかな」
「それで萌子はどう答えたんだ?」
「まだ学生だし、生活出来ないだろから家族が歓迎してくれないなら『堕ろすしか無い』と思う…そう答えたよ! 現実問題として難しいしね…」
萌子は実際に妊娠していたのが高部先輩とは知らない。
それならこういうアドバイスも可笑しくはない。
この質問に答えは無いから、自分の意見を伝える位しか出来ないしな。
「確かに…」
「うん、それに私、だらしない女も男も嫌いなんだよね。愛し合っているならまぁ、そういう関係になるのは仕方が無いよ!だけど『避妊位はしっかりしなよ』そう言いたい! それに男だって同じだよ…避妊しないでそういう事するなら、しっかり責任位とれっていうの。
親になる覚悟が無いなら、そんな事するな、馬鹿…って感じかな?」
「それ、高部先輩に言ったのか?」
「友達にちゃんと言ってあげた方が良いと思ったから…言ったよ」
萌子は高部先輩が実は妊娠していた事は知らなかったんだから仕方が無いな。
「そうか、変な事聞いてゴメンね」
「まさか、司くんとこんな話をするとは思わなかったよ。だけど、うちのお母さんシングルマザーで今のお父さんと結婚するまで大変だったからね…まさか司くんも私とそういう事したい?とか?」
そう言いながら萌子は体をくねらせた。
「いや、別に興味無いな」
無くはないが、どうせ萌子は揶揄っているだけだ。
「残念、司くんなら責任取ってくれるなら…良いよ、そう言おうと思ったのに!」
「どうせ冗談だろう?」
「あははは、バレた…ああっ、もうこんな時間だ、私行くね!」
「ああっ、それじゃぁ」
これでスキっとした…解決だな。
「そうそう、司くん…」
「?」
「世の中、知らない方が良い事が沢山ある…余り危ない事に首を突っ込まない方が良いよ…」
「ええっ?!」
「うふふ、何でも無いよ、司くん…またね」
また、萌子の奴俺を揶揄って…まぁこれで萌子が犯罪者じゃない事も解ったし…無事解決、明日からは普通の暮らしが待っている。
少なくともこの時の俺はそう思っていたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます