第35話 萌子...運命の人


私は司くんを『何故か知っている』


幼い頃、地獄の様な人生を送っていた時…何故か、司くんの事が頭に浮かんだ。


直接、知っていたわけじゃない…ただ、その容姿が良く頭に浮かんだ。


会ったことが無い…幻想の中の王子様、それが司くんだった。


義父に犯されている時…辛い時、いつも微笑んだ司くんの顔が浮かんだ。


この時の私は司くんに出会って居ないし、その存在を知らない。


何故かそれなのに、辛い時にはいつも司くんの顔が浮かんだ。


優しい笑顔で...私を見ている。


義父に犯され、初恋の相手、武くん、いや武に犯された私の唯一の救いはこの幻の王子様への妄想だったのよ。


私が、全てに絶望して『死のう』そう思った時に『神?』から声が掛った。


これは幻聴なのかも知れない。


私はこの頃、精神を病んでいたから…真実だと言い切れない。


だが、その神?は私に言ったのよ…


『お前の伴侶は 東狐 司…お前が思い描く見た相手だ』


あの人が本当に居るの?


だけど...私は誰かの伴侶になる資格はない。


「私の伴侶?! 何の冗談! こんな汚れた私にそんな人が現れる訳ない…それに…私なんかと付き合っても碌な事は無いわ」


私は汚れ切っている。


あの王子様の伴侶になんてなれない…


もし、成れたとしても犯された過去がある以上…嫌な噂が広まり傷つける可能性があるかも知れない。


無理だわ...


『何故だ』


私は自分の実情を話した。


『成程、それなら、お前を抱いた者や、その事を知る存在を無くしてやろう…我は、東狐 アキと約束し、お前を司の伴侶に選んだ。だからそれを邪魔する存在は排除する…だが、お前に近い、家族には使えぬ…そこは自分で解決するのだな』


神?は約束を守ってくれたのか…私を抱いた存在、知る存在は…皆気がふれた。


精神に異常をきたし…武を含み、皆が自殺したり、精神病院送りになった。


神が私に声をかけてきたのはその1回。


そして…私は…私の王子様と出会った。


私が夢に見た王子と寸分狂わない姿の…東狐 司くんと出会った。


司くん…私が自分の命以上に大切な存在『私の伴侶』だ。


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