俺の日課

俺の朝は近くのお稲荷様へのお参りから始まる。


朝1番で近所のスーパーで油揚げを買い、それを紙皿に乗せて近くのお稲荷様にお供えをして手を合わせる。


それが俺の朝の日課だ。


これを祖母から受け継ぎずうっと続けている。


願い事は余程困った事があった時以外はしてはいけない。


それが、祖母から受け継いだお稲荷様とのルールだ。


『良いか司、お狐様は神様の使い、神様では無いから頼み事は本当に困った時しかしてはいけないよ』


そうお婆ちゃんに言われていた。


お婆ちゃん、あきさんは昔、霊能者をしていた。


と言っても華々しい物ではなく、近所の困りごとの相談に乗っていただけで、テレビや物語の様に何かと戦っていたわけでは無い。


お婆ちゃんは豆腐屋をしながら『霊的に困った』話を聞くと、話を聞きに行き、解決していたようだ。


『不思議婆ちゃん』そう言われ近所の子供や老人にはそこそこ人気があった。


俺は、小さい頃、お婆ちゃんが嫌いだった。


友達からいつも、お婆ちゃんの事で冷やかされていたからだ。


『詐欺師ババアの子供』とか『嘘つきババアの子供』そう言われていた。


俺は孫で子供じゃないし…


それに詐欺師と言うが婆ちゃんは謝礼は基本的に受け取っていなかった。


精々が受け取っても野菜や果物、お酒、お菓子位で現金は受け取らない。


これで詐欺だなんて言えないだろう。


でも、そう言って反論してもきっと『嘘つき』呼ばわりで終わりだな。


そんな婆ちゃんも10年前に死んで、それからこの油揚げをお供えするのを俺が引き継いだ。


俺の両親は豆腐屋を継がなくて普通のサラリーマンだから油揚げの代金は俺のお小遣いから出している。


結構、財布に厳しいものがある。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る