第29話 【閑話】俺は孤独だ...
俺を愛してくれた存在…は居ない。
いや、しいて言うならお婆ちゃんだけだ。
俺は…付き合う前に結果が解ってしまう。
だからこそ…人の悪意や気持ちが解り、絶望する。
『騙される事は無い』
それは素晴らしい事なのかも知れないけど…見たくない、聞きたくない事迄、全て解ってしまう。
その為『真面な恋愛』は出来ないんだ。
例えば、俺の両親だ。
特に母親の方だ。
俺に対する愛情は全くない。
微塵も愛してなど、居ない。
これはあくまで推理だが、恐らく『この目』のせいだと思う。
母さんが自分を愛しているのか?
この能力で見たら『愛していない』そういう答えが思い浮かんだ。
そして俺を薄気味悪いと思っているのか?
その答えは『薄気味悪く思っている』そういう答えだった。
母さんは、霊能力者と言われるお婆ちゃんを嫌っていた。
その流れで俺も嫌いになったのだろう。
そして、この金色の目になった事がとどめで、完全に愛情が失せた。
そんな所だ…
父親の方は完全に仕事人間。
家庭よりも仕事優先。
しかも、大学時代に柔道部に入っていて、その付き合いを優先するから、小さい頃から土日も余り遊んで貰った記憶はない。
能力を使って調べた結果…
『愛より友情』それが解った。
母さんよりマシだが、他の家より愛情は少ない…それは間違いない。
だが、育児放棄されたり、暴力を振るわれたりしていない。
それだけ、まだマシだ。
『家族は他人の始まり』その言葉が良く当てはまる家族、それがうちだ。
今では、ボロ屋だが、多少の援助で暮らさせて貰っているから、愛情こそないが悪いとも言えない。
家族による愛情が無い俺は幼馴染である、三浦陽子が凄く気になりだしたんだ…
いつも一緒の事が多かったし、小さい頃は俺と『結婚したい』そう言っていたからな…
だが、それも違った。
本当は使いたくなかった。
だが、俺はどうしても『知りたかった』安心したかったんだ。
誰か1人で良いんだ。
誰かに愛して欲しい…その思いから…能力を使ってしまった。
その結果が『好きではない』だった。
子供の頃からずうっと一緒だった。
母さんの代わりに、偶に俺の世話をしてくれる幼馴染。
てっきり、俺と同じで『好意を寄せてくれている』そう思っていたが違ったようだ。
長い付き合いだから…そう思っていたが違ったようだ。
多分、男女の仲ではなく兄妹か親友だったのだろう。
これは俺も悪い。
ちゃんと途中で気持ちを確かめずに放置した結果だ。
あれ程、小学生時代に俺に執心していた美津子も今では彼氏が出来てラブラブだ。
そして『俺を好きだカッコ良い』そう言っている存在の多くは『観賞用』本当に好きな訳じゃない。
『金色の瞳』は架空だからカッコ良いのであって、実際に居たら…見栄えは良いかも知れないが、異質だ。
獣のような目を持った人間。
実際につきあいたい…そう思う人間は少ないだろうな…
俺は…孤独だった。
これからも1人で生きていくのか?
俺を受け入れてくれる様な存在が現れるのか…全てが本当に不安で寂しく…怖かった。
だから、萌子の好意は凄く嬉しかった。
『俺を好きな人間が居てくれる』それが凄く嬉しい。
だが、その反面『それで良いのか?』そういう思いもある。
『1人が寂しいから誰でも良い』これじゃ駄目だ。
『萌子でも良い』じゃ駄目だ。
『萌子じゃなくちゃ駄目』
そう思えないなら、答えるべきじゃない…だがきっと、俺は萌子の事を好きになる。
そんな気がした。
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