第30話 それぞれの朝


「萌子は一旦帰るんだ…」


「うん、毎日、朝一回だけ家に帰る…それだけが私の義務だからね」


「そう、それでどうする? その後は俺の家に帰って来てから登校する? それともそのまま登校する? 俺はどちらでも良いけど?」


「どうしようかな? 司くんは、朝どうしているの? それに合わせるよ」


「俺の場合は習慣で必ず、稲荷神社に油揚げをお供えしに行ってから戻ってきて登校かな」


この習慣だけは俺に目をくれた感謝の気持ちを込めて、余程の事が無い限り続けるつもりだ。


「へぇ~そうなんだ、それはアキさんの影響?」


「まぁお婆ちゃんは稲荷信仰していたから、その影響もある」


「そう? それなら司くんと一緒に登校したいから、家の用事を済ましたら戻ってこようかな? 朝が難しいなら、学校帰りにして良いかどうか親に聞いてみるよ…ううっ、司くんとの登校を選ぶか、下校を選ぶか凄く悩むよ」


「そうか…それ以外は一緒にいるんだから、別にどっちでも良いじゃないか? 萌子の都合の良い方で良いよ! どうせ暫くは俺の家に住むんだろう?」


「あはははっ、ゴメンね」


「別に構わないよ! 流石に自分を好きだ…そう言ってくれる女の子を放りだせないから」


「ゴメン、迷惑を出来るだけ掛けないようにするね」


「別に迷惑とは思っていないから大丈夫だよ、取り敢えず今日は『朝』何だろう? それじゃ俺はお供えを供えに行ってくるから、戻ってくるなら簡単な朝食を用意して置くけど…まぁ、本当に簡単な物だよ」


「司くんの手料理が食べられるなら、絶対に戻ってくるよ!」


「そう? それなら朝食を用意して待っているからな」


「うん、楽しみにしているね」


誰かに好かれているのは、こんなの心地が良いのか。


案外、俺ってチョロいのかも知れないな。


さて、萌子も出ていったし、俺も出かけるか。



「毎度あり~」


いつもの豆腐屋『豆屋』に寄ってお供えようの油揚げと厚揚げ二丁と豆腐を一丁買った。


お豆腐屋さんの朝は早く6時には開いているから、学生には凄く助かる。


ご飯は昨日炊いた残りがあるから、おかずはこれで良いよな。


いつもの様にお稲荷さんに行き、油揚げをお供えして手を合わせる。


「目を頂き有難うございました!お陰様で楽しく暮せております」


感謝の気持ちを伝える。


あとは、家に帰って朝食を作り、萌子の帰りを待つだけだな。


◆◆◆


動物の世話って面倒くさいよね。


まして、自分が飼いたいって思わない物だと特にそうだわ。


これが無ければ、もっと司くんと一緒に居られるのに…仕方ない。


お世話しに行きますか。





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