第三章 確定推理 (2人の事件簿)

第38話 鐙坂探偵団


司くんとの甘い生活。


毎日が楽しすぎるわ。


多分、あの『神』は稲荷神社の神様だったのかもね…


何となく声からして獣っぽい存在に思えた物。


しかも、私こそが、司くんのお婆様、東狐アキ様のお眼鏡に叶った伴侶…


あの時まで神様なんて信じなかった。


だけど『神様』は本当に居た。


他の神様なんて『死んでしまえ』お稲荷様と閻魔様、そしてアキ様には生涯手を合わせてあげる。


だって、私をこんなにも幸せに導いてくれた神様なんだもん。


あとは…私が18歳になって高校を卒業したら『あのペット』をどうにかすれば、うんうん、今以上に甘い生活が待っているわ。


◆◆◆


「萌子、いつ見ても凄いな…それ…」


今、俺達は稲荷神社に来てお供えをして手を合わせている。


「そうかな~司くんと巡り合わせてくれた神様だもの!この位は当たり前だよ」


萌子の手にあるのは稲荷寿司だ。


今迄は、いつも油揚げだったのだが、萌子の提案で稲荷寿司に変わった。


近くにある和菓子屋さんの物で1個180円の高級な物だ。


それを3個買ってお供えする。


此処の和菓子屋さんはお婆ちゃんの顔見知りで、和菓子の仕込みを朝3時から始める。


顔見知りの特権で朝早くてもこっそり裏口から売って貰える。


稲荷寿司以外にも出来た和菓子を2個くらい追加している。


しかも、このお供え代は萌子が出してくれている。


何だかな…ちょっと情けない。


「確かに、そうじゃ無ければ萌子みたいな可愛い子が俺を好きになるわけ無いか」


「うん? 今、なんて言ったの?」


「何でも無いよ」


「萌子みたいな…その後が聞きたいな?」


「なんだ、聞こえてるんじゃないか? なら言わない…」


「司くん、何気に少し意地悪だよね」


「こう言うのは偶に言うから良いんだよ…」


「ケチ…まぁ気持ちは解っているから良いんだけど?!」


顔を少し赤くして口を尖らせる萌子が可愛い。


これで俺は、ますます稲荷神社の神様に足を向けて眠れなくなった。


目、の次は恋人…しかも、その相手がどう見ても俺には不釣り合いの美少女萌子だ。


多少性格に難があるが…俺みたいな引っ込み思案には丁度よい。


神様ってよく見ているな…そう思う。


かなり昔から俺の事を好きだった。


それだけで救われた気になる。


孤独な高校生は…うんチョロいな俺。


◆◆◆


「それでね、司くんは前にも聞いたけど、何かやりたい事は無いの?私応援するよ! 大学でも専門学校でも支援してあげるから」


萌子は凄いお嬢様らしく、こう言う事を良く言う。


だが、俺は本当にやりたい事が無い。


今の生活がゴールでも構わない。


あとは2人で生活出来る収入があれば充分だ。


「特に無いな、公務員試験でも受けて受かれば、それで良いと思っている」


「その凄い力を使って何かしようと思わないの? 医者でも探偵でも何でもなれるじゃない?」


「特に無いな…逆に萌子は何かやりたい事無い? あればその手伝いを逆にするよ」


「そうね…それじゃ、残りの高校生活、探偵の真似でもしてみない? 流石に医者や弁護士は出来ないけど、探偵は基本無資格でやれるじゃない?」


「探偵の真似?」


「うん、別に看板をあげなくても、猫や犬探しの貼り紙はよく見るし、何事件を見つけたら、練習がてら調べてみる…そんな感じ…どうかな?」


探偵になる練習か…


「俺に出来るのかな?」


「司くんは答えが解かるんだから、あとはそこにたどり着く道を調べれば良い…やり方によっては金田一や明智すら超えるかも知れないよ! 試しにやってみない?」


探偵の卵みたいな物か…何時でも辞められるから良いんじゃないかな。


「良いかもな」


「それなら決まり! 鐙坂探偵団 活動開始ってね!」


「なんで鐙坂なんだよ! あそこまで歩いて5分は掛かるし意味が解らない…」


「だって、あそこに金田一耕助が住んでいたんでしょう? なんだかカッコ良いじゃん!」


此奴、勘違いしている。


「あそこに住んでいたのは金田一京介さんという言語学者さんだから別人だからな」


「それなら、名前変える?」


「いや、特に思いつかないから、それで良いよ…


「それじゃ決まりだね」


こうして俺は萌子と『探偵の真似事』をする事になった。



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