第39話 ある筈が無い都市伝説


萌子と一緒に探偵の真似事は案外簡単だった。


町内の犬猫探しは、何処にいるのか? それを思い浮かべただけで『居場所が分かった』過程が必要ないから、簡単。


近くの動物病院の貼り紙を見て探すだけだ。


此方から請求しないでも、大体が謝礼金を幾ばくかくれる。


大体が1万円~3万円だが、偶に10万円くれる人も居た。


これなら、充分…卒業後も生活出来そうだ。


「やっぱり、凄いね、その能力…」


「確かに恵まれているとは思うけど、決して万能な能力じゃないんだ」


この能力の最大の欠点は『過程』が一切解らない事だ。


ペット探しみたいに結果だけで済む問題は簡単だ。


だが、そこに『理由つけ』が必要になると途端にハードルが高くなる。


俺はその事を萌子に再び話した。


「あははっ、アマチュアなんだから、そう言った事に直面した時に考えれば良いんだよ」


「そうだね」


「うんうん、それじゃ今日は外食にでも連れて行ってね」


「共用口座からで良いよな?焼肉でも食べに行くか? 初音で良い?」


「うん、良いよ」


この辺りに焼肉屋は2件あって…初音は安い方だ。


高い方は…2人で5万位飛んじゃうから節約しないと。


ちなみに、共用口座は探偵の真似事で得たお金を入れている口座で、二人が合意した時のみお金を使う事に決めた。


◆◆◆


「うんまい! このカルビ蕩けるぅ~」


「そりゃ良かった」


お店は汚いが、肉は美味く、たれは最高。


確かに美味い。


「それで学校の方どうすんだよ!」


「どうするって? 普通に通っているじゃん!」


「確かにそうだけど? 此処迄派手で良いのか?」


「なんの事?」


暇さえあれば萌子がくっついてくる。


休み時間もほぼ一緒に過ごしているから、もう公認カップル状態だ。


ほぼトイレ以外は一緒に過ごしているから、誰が見ても付き合っている様にしか見えない。


しかも移動や登下校の度に腕を組んでくるから、もう言い逃れは出来ない。


「冷やかされたりしないか? 俺は結構周りから冷やかされるんだが」


「ああっ、そういう事ね? 普通に付き合っているって、堂々と言っているけど?当たり前じゃん! 司くんは彼氏でしょう?」


「だな…」


「ああーーっ!また感情が薄い、私的にはもう少し感動してくれても良いと思うんだけど?」


「そうだな」


本当に付き合っているんだから、確かに堂々としていれば良いんだよな。



◆◆◆


此処暫くでは珍しい事に1人で居ると陽子が話しかけてきた。


「司、萌子ちゃんと付き合っているの?」


「まぁな…」


萌子が堂々と話しているんだから、俺も堂々として居るべきだな。


「そう…意外だね」


「そうか?」


「うん、少なくとも司のタイプでは無いような気がするけど? 好みのタイプが変わったのかな? 前はああいうタイプは好きじゃ無かった気がするけど?」


歯に何か挟まった様な言い方だな。


「陽子って萌子と親友だよな? いつも一緒に居た気がするけど?」


「う~ん、親友では無いかな? 普通の友達だよ!」


「その割にはいつも一緒に居た気がするけど?」


「司に会おうとすると何故か萌子が居るんだよね、まぁ幸せそうで何よりだよ…それじゃ私は行くから…そうそう萌子には悪い噂もあるから気をつけて」


「悪い噂?」


「あくまで噂…ゴメン気にしないで」


それだけ言うと陽子は行ってしまった。


悪い噂…何か事情があるのだろう…だが、過去は過去だ。


少なくとも今の萌子は俺が好きなんだから関係ない。


それもそうだが、俺の好みのタイプが変わった?


俺はそもそも、どんなタイプの人間が好きだったのか?


俺の好みのタイプの女性は…なぜだ?思い出せない、まぁ良いか…


◆◆◆


今日の食事当番は俺だ。


餃子を具から作って、チャーハンとスープ。


凄く簡単な料理だ。


「司くんって本当に家事が得意だよね、洗濯、掃除も完璧に出来るし…」


「一人暮らしが長いからな…」


「でも、凄いよね、私の下着まで平気で洗えるんだから…」


「二人で暮らすからには平等にしないとな。あと、この辺りは1人暮らしの女子大生が多く、コンランドリーで普通に洗っている様子を見慣れているから...まぁ慣れだ」


「そう? でも触った事は無いんじゃないのかな? 普通にそこに干してあるけど…少しは気にならない?」


「そんなに気にならないな」


まぁ、気にならないと言えば嘘になるけど…


「本当にそう?」


「傍に、その本体が居て、普通に着替え姿や下着姿を見ているから、見慣れたよ」


「あははははっそうだね…確かに…うん」


ほぼ1部屋で一緒に暮らしているんだから、嫌でも見る事になる。


最初は焦ったけど、今では見慣れた。


「折角だから冷める前に食べよう!」


「そうだね」


餃子を摘まみながらチャーハンを頬張る。


まぁ何時もの出来だ。


「それでね、司くん…面白い情報を掴んだんだけど?」


「情報?」


「うん、石砂高校にまつわる、不思議な話の1つだよ!」


「それって、あの都市伝説みたいな奴だろう? あれは全部嘘だよ…多分」


話しが物騒だから、能力を使って調べたんだ、間違いない。


「根拠があるの?」


「うん、この能力で調べたんだ『石砂高校の都市伝説』はあるかってね…そうしたら無いって出た…但し入学したばかりの頃だけど?」


「そう…だけど、最近3年生の横田さんが自殺した事件があってね」


「そんな話は聞いた事無いよ」


高部先輩の事件の時は学校からちゃんと説明があった。


だが、誰か知らないが横田さんという先輩が死んだという話は聞いた事が無い。


果たして本当なのだろうか?


『横田先輩は本当に死んでいるのか?』


頭の中で問いかけてみた。


『横田は死んでいる』


嘘だろう…萌子の言う事は本当の事だった。


「うん、何故か生徒には知らされて無いんだけど…小岩川にある葬儀場で葬儀をあげていたのを見た人が沢山居るの…それに都市伝説の1つが関わっているという噂なんだ」


「確かに、今能力を使って調べてみたけど、横田先輩は死んでいた」


「でしょう? 不思議に思わない?」


「確かに…だけど俺達に害が無いなら放って置いても良いんじゃない?」


「だけど、折角の探偵団なんだから調べてみない」


「そうだな…」


こっそり能力を使ってみた。


『横田の死に萌子は関わっている』


『関わっている』


これで関わらないという選択は無くなった。


「ねぇねぇ、折角だから調べてみようよ…良い力試しになるよ」


「それじゃ調査して見ようか…」


「うん」


萌子が関わっている以上『関わらない』選択は取れないな。

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