第40話 解らない
石砂高校の不思議な話は結構ある。
まぁ、その殆どは何処かで聞いた様な話ばかりだ。
花子さんや合わせ鏡…まぁこの辺りは間違いなく作り話にしか思えない。
だが石砂高校独自の物で、他には無い物が二つある。
その二つは
1. 近くにある呪いの木
2. 殺人クラブ
この二つだ。
呪いの木はこの高校からすぐ近くにあり、普通の道路のど真ん中にある。
普通だったら邪魔だから木を抜くなり移動するなりする筈だが、その度に工事に携わる者が事故に遭ったり、死んだりするから最後にはこの木を残す事になった。
今現在は、道路の真ん中に木があり、それを避ける様に左右に道が別れている。そして、その下に祠がある。
二つ目は『殺人クラブ』
これは、とある教室にあるスピーカーの上に殺したい相手の名前、理由、そしてお金を置くと、殺してくれる。
そういう都市伝説がある。
だが、これは伝説じゃない。
実際は2年生の不良が遊びでやっていた事だが、本当に『殺人の依頼』があった。
しかも、置いてあった金額は50万円。
当然、金だけ受け取り誤魔化すつもりだったが相手が悪かった。
依頼をしたのは3年生の不良で暴走族とヤクザに繋がりのある人物だった。
『自分から宣伝していた事をやらないとは許せない』
そう言うと2年生の不良を脅し、逃げられないように当時中学生の妹を人質にとった。
その結果、2年生の不良は引くに引けなくなって『女生徒を殺した』
後になって解った事だが、その女生徒は3年の不良に犯され子供が出来た為に、警察に訴えを起こす所だった。
更に人質になっていた妹は帰ってきたが犯された後だった。
妊婦を殺した事で、2年生の不良は罪を重く問われ実刑判決を受けた。
妹は本当は同情される立場だったが兄の行動で『レイプされた女』『殺人者の妹』として見られるようになり精神が可笑しくなった。
その結果、家族で自殺する道を選んだ。
2年生の不良は施設から出た後…3年生の不良の家族を滅多刺しにして自殺。
3年生の不良は行方不明…だが、どこかで死んでいるだろう
そんな話だった筈だ。
これは当時新聞に載った位の事件だから嘘じゃない。
だが、これは俺が子供の頃の話だから10年以上前の事。
だから、事件であって都市伝説じゃない。
だが、多少脚色され、この学校の都市伝説になっていて、スピーカーの場所は誰もが知っている。
尤も遊びで精々が10円玉があるだけだ。
もし横田先輩の死に、砂浜高校の都市伝説が関わっているなら恐らくこのどちらかだな。
「それで、萌子に聞きたいんだけど?一体、横田先輩の死はどの話が関わっているんだ?」
「それがね…不思議な話が進化したみたい」
萌子の話では、どうやら二つの話が混ざって新しい話が出来たみたいだ。
呪いの木の祠の中に『死んで欲しい相手の名前を書いた紙』とお金を置いておけば、相手を何者かが殺してくれる。
そういう事だった。
そんな話があったのか…
「だけど、それ俺は知らないぞ…最近出来たのか?」
「うん、半年くらい前からね…あくまで噂だけど…だけど横田先輩の死にも他の死にも関わっているって噂があるの」
「本当にそうなのか? 調べてみるか?」
『呪いの木の話が横田先輩の自殺に関係あるのか?』
『関係ない』
すぐに頭に浮かんだ。
やはり、関係は無いみたいだ。
だが、まだ何かある気がする。
何を聞けば良い。
俺の能力は『結果』しか解らない。
もう一つの話が関係しているのかも知れない。
『殺人クラブは存在するのか?』
『解らない』
解らないってどう言う事だ?
答えが解らない…そんな事ではない筈だ。
『解らない理由は?』
『これが殺人クラブかどうか解らない』
何がなんだか解らない。
「何か解ったの?」
「それが…」
俺は自分の能力で手に入れた結果を萌子に話した。
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