第21話 エアコン


さて頑張って取り付けますか。


我が愛すべきボロ屋…その欠点はお風呂が無い事と暑い事だ。


この建物は関東大震災の前から建っている物で、近くに井戸がある。


元は上下水道も無かったが、後から上下水道を設置したらしい。


6畳一間に土間に台所があり後はトイレがあるだけだ。


尤も近くに昔からある銭湯が2件あるからお風呂に入りたい時にはそこを利用するか、歩いてすぐの実家でお風呂を借りるから不便はない。


それで、今日は…


近所の大学生が卒業して田舎に帰り、使わなくなったエアコンをくれると言うので貰いに行ってきた。


勿論、お金の無い俺は『自分で取り外し』『自分で取り付ける』


このボロ屋のリフォームは基本は俺が行った。


屋根の雨漏りの修理から何から全部…思い出しても、最初は本当に酷かったな。


貰ってきて、どうにかスマホで調べながら、設置してエアコンから冷たい風が吹き出してきた…


『凄く涼しい、これで今日からはぐっすり眠れる』


電気代やガス、水道代金、学費は親が出してくれるから、電気代は気にせずガンガン使える。


◆◆◆



「涼しいね」


「本当に涼しい、あー凄く気持ち良い」


「あのなぁ、二人とも女なんだから、あまりパタパタしない方が良いんじゃないか? ブラが見えているぞ!ブラが!」


年齢=彼女いない歴の俺には目の毒だ


「幼馴染なんだから今更でしょう?」


「それって司くんが見なければ良いんじゃない? まぁ見たければ見ても良いけど?」


エアコンを取り付けているのを見た陽子と萌子が俺の家に突入してきた。


「なんで、俺の家に普通に入って来るんだよ…」


「あははっ、今までは暑いから来なかったけど、見ていたらエアコンを取り付けているじゃん!憩いの場を手に入れたんだよ私は!」


「あのな…」


一応、女なんだから1人暮らしの男の家に来るなよ。


「へぇ~だけど噂で聞いたけど、司くん本当に1人暮らししているんだね」


一体誰から聞いたんだ?


まぁ良いや…


「まぁな、尤も見ての通り、風呂無しだけどな! 昨日まではエアコンも無く暑くて堪らなかったけどな」


「まぁ、これからは涼しくなったから、ちょこちょこ遊びに来るよ」


「うんうん、私も来ようかな?」


来た者は仕方ない。


仕方ないから冷蔵庫から麦茶を出してやった。


「ほら…陽子は兎も角、萌子は不味いんじゃないか?流石に1人暮らしの男の家に出入りは親が怒るんじゃないか?…不味いだろう?」


「うちは放任主義だから親は気にしないから、大丈夫です!」


「そう?」


「司は考えすぎだよ! ここ壁も薄いから大きな声を出せば…誰かくるでしょう」


まぁな、此処は下町、義理人情がある場所だから、そりゃそうだ。


高校生になっても商店街じゃ未だに『司ちゃん』だからな。


「まさか休みの度に来るつもりじゃないよな?」


「あははっ、休みだけじゃなく放課後も来るよ」


「陽子がくるなら私も来ようかな」


陽子の家は親の方針とかで個人の部屋が無い。


だからだろう、気持ちは解らなくもない。


「あのな…いい加減彼氏でも作って、そっちに行けよ」


「司…お前もな!」


「私、フリーだから、なんなら付き合う? 司くんが良ければ同棲しよか?」


また萌子の揶揄が出た。


「ハイハイ、陽子の言う通り、俺はモテないから彼女は居ません…萌子余り揶揄ないでくれ、俺だから良いけど?! 人によっては本気にするからな」


「萌子ちゃん、余り司を揶揄と本気にされちゃうから気をつけないと」


「それは、それで面白いから良いんだけどね」


ハァ~ゆっくりと休むつもりが結局夕方まで二人が居座った為、休めなかったな。

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