第四章 回答編
第46話 【萌子の過去】 貧乏の中の幸せ
子供の頃、私は凄く惨めだった。
あの男と母さんが結婚するまでは、貧乏で他の子の持つように玩具すら持ってなくて、服は親戚のお古ばかり…せめて下着位は新しい物が欲しかったけど…それすら買う余裕はうちには無かった。
『母さんは頑張って働いている』
だから不満は言えなかった。
他の子が新しいランドセルを背負っているなか…私は母さんが貰ってきた中古のヨレヨレのランドセルを背負って学校に通った。
習字セットもお絵描きセットも使い古しばっかり…
新しい物で、私の手にある物なんて、何も無かった。
友達と遊んでも惨めになるだけ…だから遊ぶのは止めた。
一緒に遊んでも、皆がお小遣いを持ってきて合間にジュースやお菓子を買うなか、私だけが買えない。
偶に、お菓子をくれるけど…それが一層私を惨めにした。
子供の私には、どうする事も出来ない。
そんな中、私の唯一の楽しみは読書だったの。
図書館に行けば、本は無料で貸して貰える。
しかも、名前を書いて入会したら、黄色い綺麗なバックまで無料で貰えた。
私が初めて、手にした『新品の物』それはこの図書バックだった。
綺麗で手垢一つ付いていないバック…しかも鳥さんの絵が描いてあって可愛い。
このバックを持って図書館に行って本を借りる。
これが私の唯一の楽しい時間。
本を読んで空想をする。
それが私の唯一の楽しい時間…
本を読んでいれば嫌な事を忘れられる。
本を読んでいる間は、惨めな自分の姿を見ないで済む。
空想の世界の私は、お姫様にもお嬢様にもなれた。
本を読む時間、空想する時間…それだけが私にとって唯一の幸せな時間だった。
そんなある日…お母さんが男の人と付き合い始めた。
私のお父さんはろくでなしだった。
暴力を振るい、いつもお母さんや私は痣だらけ。
『ろくでなし』
そういう人だった。
何時も怒鳴り、お金を家に入れない。
貧乏な今より、更に貧乏。
そして気に入らないと暴力を振るう。
逆らったら顔の形が変わる迄殴る…最低の男だった。
いつも泣いていたお母さん。
自分が殴られるのを顧みず、私を庇って痣だらけだったお母さん。
今度こそ幸せになって欲しい。
「お母さん、私応援するからね」
まさか、この後…本当の地獄が待っているなんて思って居なかったの。
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