第55話 二人が幸せなら、それで良い
「これが、ポチとタマか…」
「うん…嫌いになった?」
「たた、助けて…頼む、此奴狂っているんだ…」
「助けて下さい…逃がして下さい」
俺は犬も猫も好きだ。
ペットに会わせて欲しい…そう頼んできた結果がこれだ。
「いや、別に嫌いにならないけど?」
能力があるから、答えを出すのは簡単だった。
『此奴らが萌子に刺青をいれたのか?』
『虐待をしていたのか』
それだけ聞けば、もう充分。
もし、この能力が無ければ、悲しむ萌子から話を聞かないと成らなかった。
「本当?」
「本当!」
萌子の体の刺青からして性的虐待をしていた可能性が高い。
それは聞きたくないから聞かなかったが、まず間違いない。
『そういう人間は…報いを受けても仕方が無いよな』
「本当に良いの?」
「俺がちゃんと答えると萌子が悲しむから言わないけど、その刺青を見れば何をされていたか解る『萌子は被害者』だから、それで良いんじゃないか? あとはそのペットをどうするか、考えよう」
「え~と…良いの?」
「ああっ、足も手も完全に戻らないし、もう歩けないだろう…そうだな、それこれからも飼育し続ける? それとも処分するの?」
「う~んどうしよう?」
「まぁ、萌子が成人するまでは面倒見るとしてどうするか? 殺しちゃう…それとも…」
「「ひぃっ…」」
「司くんが好きにして良いよ」
「それじゃ、介護が良いか?」
「介護…?」
「うん、介護ベッドや介護用品を揃えて、ベッドで寝かして置けばいいんじゃない? あとは、今みたいに様子を見ていれば良いよ」
「それで良いの?」
「後は面倒だけど、介護日記をつけて二人が如何に医者が嫌いか書いて置けば問題無い…暫くはそれで後は保留…そんな感じで良いんじゃない...そこまでやれば死んでも誰も可笑しいと思わないんじゃない」
「そうね」
尤も、これは萌子が成人するまで…そこでどうするか、もう一度考えれば良いか。
「なぁ、萌子、これで心配事は解決したろう…頼むから…泣かないでくれると助かる」
「うんうん…司くん、グスッ…ありがとう…ありがとうね…」
最大の難関はもう片付いた。
俺は別にヒーローでも何でも無い。
萌子と俺が幸せなら…それで良い。
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