第4話 突き落とし事件

俺がこの能力を手に入れて間もない時の事だ。


同級生の松戸美津子が階段から突き落とされる事件が起きた。


美津子は、ボーイッシュな女の子で男の輪に加わって遊ぶ事が多く、女の子と余り遊ばない女の子だ。


だからと言って、女の子から嫌われている様には思えなかった。


だが、突き落としたとされる女の子が見つかり、今先生と職員室で話している。


職員室に居るのは、俺の幼馴染の三浦陽子だった。


陽子と美津子は確かに仲は良くない。


体を動かす事が好きな美津子と文学少女の陽子。


水と油と言えば水と油だ。


美津子がいつも日焼けをしていてボーイッシュなのに対して、陽子はおかっぱ頭で色白な、いかにも女の子らしい女の子だ。


話が合わないから良く口論をしていた。


だけど、それは、じゃれあいみたいな物で決して本気じゃない。


俺にはどうしても、陽子がそんな事をするとは思えなかった。


逆ならまだしも、陽子は大人しく、人に手を挙げるなんて考えられない。


それに二人が喧嘩したら、恐らく勝つのは美津子だ。


だから、絶対に犯人は他に居る…そう思った。


誰だ…


俺は目を瞑り、誰が犯人か考えた。


俺なら、誰が犯人か解る。


だが、俺の頭に浮かんだのは『三浦陽子』だった。


嘘だと思いたいが、俺のこの能力は今迄外れた事は無い。


一体、何があったんだ。


◆◆◆


暫くすると泣きべそをかきながら教室に陽子は帰ってきた。


横には梅川先生が付き添った状態で陽子はランドセルを持って教室から出ていった。


そのまま暫く自習となり、暫く経つと梅川先生だけが教室に帰ってきた。


「皆も、もう知っているとは思うけど、今日、松戸美津子さんが階段から突き落とされる事件が起きました…幸い命に別状はありませんが、頭から落ちたので八針縫う大怪我です! この事について何か知っている人はいませんか?」


犯人は…陽子だ。


梅川先生も恐らくは知っている。


もう職員室で話を聞いて帰らせたんだから確定だよな。


「はい! 私、三浦さんが突き落としたのを見ました」


「私も」


「私も見ました」


証人まで出てきたんじゃ、間違いじゃないな…


「やはり、そうでしたか? 三浦陽子さんが私は悪くないと言い張るので帰しましたが…間違いないですね?」


「「「はい」」」


「全く、あの子も本当に、ご両親にも報告しないと…今日はこのまま自習で、時間が過ぎたら、そのまま帰宅して下さい…良いですね」


そう言うと返事を待たずに梅川先生は出ていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る