第一章 高校篇 アイドルの死

第8話 6年後


 


「早いものだな、もう6年か?」


「そうだね…」


俺は親父と一緒に墓参りに来ていた。


俺の目が治ってから暫くしてお婆ちゃんは死んだ。


尤も90歳を超えているから大往生だと思う。


お婆ちゃんが死んでから約6年、俺ももう16歳になっていた。


「しかし、お前相変わらず、稲荷神社へのお供えをしているのか?」


「お婆ちゃんとの約束だから」


お婆ちゃんとの約束、それもあるが、本来盲目になっていても可笑しくない筈なのにそれを助けて貰ったんだ。


感謝を忘れちゃいけない。


「そうか…まぁ、良い。お前はお婆ちゃん子だからな、だが母さんの前ではその話をするなよ!」


「解っているよ!」


俺の母親、光江は心霊的な事を一切信じないし嫌っている。


その為、お婆ちゃんとは喧嘩する程、仲が悪かった。


死んでからもお参りに来ない程に今も嫌っている。


その原因は俺にもある。


お婆ちゃんと一緒に可笑しな話ばかりしている息子。


目がある日突然金色に変わった薄気味悪い息子。


それが母さんにとっての俺だ。


だから、母さんはお婆ちゃんだけじゃなく俺も嫌っている。


父さんと母さんと離れて、俺は近くの古い長屋で一人暮らしをしている。


関東大震災後からある長屋でトイレだけを水洗便所になおして、他はボロボロのまま。


まるで時代劇に出てきそうな長屋に見える。


この地域にはこう言う長屋が未だに結構ある。


この長屋はお婆ちゃんが友人から譲って貰って、残した物だ。


まぁ使い道のない遺産って所だな。


お風呂が無く台所、トイレ、洗濯機置き場に6畳の部屋みだが、案外快適な一人暮らしである。


風呂に入りたくなれば、近くの両親の家に行くか、銭湯…そんな感じ。


案外、お金を払っても銭湯の大きなお風呂は魅力的で通う価値がある。


まぁ高校生なのにこんな感じに自由気ままに1人暮らしをしている。


◆◆◆


あの能力は、あの時使以来って無い。


犯人が解っても碌な事は無い。


給食費を盗んだ奴が母子家庭でお金に苦労している奴だったり、女子の体操服を盗んだ奴がクラス一のイケメンだったりと…どうして良いか困る話ばかりだった。


『知らなければ良かった』『証拠が探せず解決できない』そんな事ばかりあったのでいつしか俺は能力を使わなくなっていた。


多分、これからも俺はきっとこの能力は使う事は無いかも知れない。

























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