第47話 九州平定
立花山城に到着した後は包囲せず睨み合いをすることにしました。
包囲をしないことに長門が質問してきました。
「殿、包囲しないのですか?」
「向こうと数に大差ないからな、包囲して兵を分ければそこを突かれかねん、故に包囲はしない」
「包囲出来ないのであれば兵糧を、運び入れ放題では?」
「その兵糧が集められないから、動かないのであろう、あるのであれば包囲など必要あるまい」
「この後はどうなさるので?」
「戦の主導権は完全に奪った、後は飢え殺しにするもよし、我慢できなくなって攻めてくるのを待つもよしだ」
「どちらを選びましょうや」
「まあ普通に考えれば攻めてくるだろうが少弐政資は何を考えているのかがわからないからな、華麗に五州を制したと思えば、怯えて出て来れないなぞあるものか」
「つまり少弐政資は我らを偽っていると」
「さて、私は政資ではないからな」
「殿」
「もしかすると政資自身狙いが分からなくなっている可能性もありそうだが」
「どういうことですか?」
「虚実を使ったつもりが自分自身がどちらが虚でどちらが真かわからなくなったのであろう」
「籠城をするのが真だったとしても兵糧がなく、攻勢に出るのが真だとしても殿が万全の構えで待ち受けると」
「城を出るか籠城するかで、こちらの選択を悩ませる予定だったのだろうがな」
「兵糧がないことで結局籠城はできませんし」
「故に包囲せずに城と正対するのが正解なのだ」
「勝算がおありで」
「面白いことを聞く、私が負けたことがあるかのような言葉だな」
「確かに、失礼いたしました」
「まあ攻めてくるまでのんびり待つとしよう」
「殿」
「何か」
「立花山城内部で騒動がおきました」
「大方兵糧の配給の問題だろう」
「お見事です、まさにその通りです」
「大方直臣を優先させたのであろう」
「どうも、そのようです」
「もうすぐ落ちそうだな」
「強攻を掛けますか?」
「待っていれば出て来るさ」
「御意」
しかし、鮮やかに五州を治めた少弐政資はどこにいったのか、あっさり上手く行ったことで奢ったのかもしれないな。
そろそろ潮時だろうに、まだ動かないのかな、取り敢えずはこちらは待つのみだな。
そういえば博多商人が苦情を言ってきたな、博多は都合のいいように立て直すので焼き討ちを計画しているのだが、商人ってなんで、最初はへりくだる癖に最終的にでかい態度に変わるのか不思議だ、そして最後には絶望の表情を浮かべるのも一緒なのが不思議だな。
取り敢えず古湊孝則に命じて博多に対して砲撃を行わせた、慌てて再び面会に来たが追い返してやった。
「殿」
「長門か」
「少弐勢が今夜夜襲をしかけようとしています」
「ふむ、夜になったら陣を下げるぞ、のこのこ降りてきたところを叩き潰す」
「承知」
「使い番」
「は」
「夜になったら陣を下げると全軍に伝令をするように」
「承知いたしました」
「やっと睨み合いが終わるか」
「意外と粘られましたな」
「兵糧が意外と持ったようだな」
「すでに切れているのやもしれません」
「それでここにきての夜襲か、まあ逆に利用させてもらうがね」
少弐政資は兵数こそやや勝ってはいるが、兵質で大きく劣ることからまともに野戦をしても勝ち目はないと思っていた。
その為城を包囲させ一時的に数的有利を作り出し攻撃しようとしたが、忠孝に警戒されていた為失敗した。
事前の策として国人衆との間に亀裂があるように見せかけることで攻勢を誘うという策を弄したがそれも看破された。
こうなると最後の手段として夜襲を仕掛けることとした、入念な準備を行い、いざ忠孝の本陣へ夜襲を仕掛けたところ無人であった。
「いかん、謀れたわ、全軍立花山に戻るのだ」
そして、急いで立花山に戻ると羽津家の旗が翻っていた、政資は呆気にとられたが急いで次の指示を出した。
「岩屋城まで撤退するのだ」
急ぎ岩屋城に引こうとした政資で会ったがそう簡単にはいかなかった。
「我は羽津八徳が一人稲葉景兼なり、通れると思うなよ」
「同じく八徳が一人菅谷義継参上、我らが竜騎兵の力恐れ入れ」
忠孝は夜に入ると同時に本陣を後退させて、別の城門から攻撃させると同時に、逃げ道に足の速い竜騎兵を送り込むとともに少弐勢が引くと同時に追撃態勢に入っていた。
「相手はすでに敗残兵も同様だ、このまま追撃をかけて一気に殲滅させるぞ」
一方立花山を制した小国孝義と佐藤孝政の部隊も眼下にて戦う稲葉勢と菅谷勢を援護するために城を放置して坂を下って行った。
少弐勢の最後尾に取りついた忠孝本隊は一気に少弐勢を潰していった。
「伝令を」
「はは」
「こちらはすぐ片付きそうだから、孝綱と孝久に景兼と義継と戦っている部隊に横槍をいれさせよ」
「かしこまりました」
「さて政資の首は誰が上げるかな」
夜中に入ってから行われた合戦だったか終わってみれば、空が白むころには少弐勢は壊滅していた。
夜中の戦だったので、少弐政資の姿を見つけるのには時間がかかり、昼過ぎになりようやくその首が見つかった。
その後は見せしめに博多を焼き各将に筑前、筑後、肥前の制圧を命じて私自身は立花山城で政務を行いました。
よくあることなのですがまた戦地で正月を迎えてしまいました、これで私は十六歳で桜が十三歳側室の千が私と年が同じなので十六歳になります。
今は戦地なので言われませんが帰ったら、子供はまだかとせかされる日々が始まると思うと暫く戦地にiいたい気もします。
焼いておいてなんですが、博多は重要港なので即修理に移ります、物資の搬入に手間が取らされるので急いで直したいところです。
それとわざわざ飛鳥井中納言が筑前まで来て延暦寺と南都の復興を求めてきました、宗教関係は朝廷に押し付けたとはいえまだ早いのではないかと、言った所、門跡寺院を元に戻したいとのこと、そう言われると断れないので非武装化を条件に羽津で資金を出し復興させることにしました。
九州全域の制圧が終わり、琉球の従属化が終わった頃に藤林長門から提案を受けました。
「もはや九州に敵は有りません、そろそろ江戸に帰るべきかと思いますが」
「それが敵がいるのだよ」
「といいますと?」
「琉球は明に朝貢していたのだ、明からしてみれば従属国が不当に支配されているようなものよ」
「では明が攻めてくると?」
「明に日本に攻めてくるだけの余力はなかろう、ましてや海は今や我らの物だ」
「では何を待っているのですか?」
「明からの和平の使者だ」
「送ってきますか?」
「その為に古湊孝則と舟木孝永に明の沿岸を襲わせている、かなりの痛手だろうな」
「倭寇の如き行為を止めるのと引き換えに琉球がこちらに従属させることを認めさせるということですか」
「そうだ、その為に待っているのだ」
「倭寇共に好き勝手にやらせるわけにはいかん、倭寇を蹴散らしてこい!」
「はは」
後に成化帝と呼ばれた皇帝からの命令により明海軍が全軍で倭寇討伐にあたったところ、倭寇の船を一隻見つけたので追跡を行ったところ、いつの間にか次々と日本の船が増えていき気付いた時には明の全軍より多くなっていた上に完全に包囲されてしまった。
総指揮を取っていた古湊孝則と舟木孝永は作戦が上手くはまったことに上機嫌であった。
「はは、こうも上手くはまるか、船は陛下の物だ傷つけるわけにもいかないから近づかせぬように一気に壊滅させるのだ」
こうして後に黄海の戦いと呼ばれる戦によって明海軍がほぼ壊滅してしまった為、成化帝は日本との和平を考えなければいけなくなってしまった。
「ということが今おこっている、これからは海の上でも情報を調べねばな」
「なるほど、それで今殿は大宰府に近い立花山にいらっしゃると」
「そうなる」
「江戸に戻らない理由にはならないのでは?」
「大海戦の勝利を持って勘違いする者が恐らく増える、琉球の帰属問題以外にも請求すべきと言い出す者がでるだろう、そうなると和平がこじれて本格的な戦になりかねん」
「余計な口が出て来ないように九州にいると」
「そういうことだ、平時ならば国の外交の事重臣にも諮るべきことだが」
「戦時状態でいることで独断で決めたとしてもし方無いと印象付けることができると」
「面倒な事だが、面倒な事にしておかねば国としての根幹が揺らぐ、国は私の物ではないからな」
「それで殿の予想では使者は何時きますか」
「今月中には来てくれないと流石に困る」
その予想通り月末には中国からの使者がきた、当然私が上座に座った状態で会談が始まる、が。
『倭寇を止めさせて欲しい』
『構わないが、その代わり琉球は我が国の帰属とさせてもらう』
『その条件で構わない、琉球なんかより国内が重要だ』
『では、こちらも倭寇を止めて見せよう』
『それでは』
という感じに簡単に会談が終わった、黄海の戦いの敗戦と倭寇による被害が無視できない所まで来ていたのだと思われる。
こちらとしても現状で明と戦をするつもりはなかったので希望通りの結果に落ち着いた。
そうして満足いく結果を残し江戸に向けて船旅をたのしむのでした。
驟雨に駆ける めるりん @hana-hana-meru
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