第28話 尾張攻め
親衛隊の希望調査をしたところ七千人もきてしまいました。
推薦状とか見る気になれないので、親衛隊は取り敢えず七千人ということにしました。
親衛隊の隊長は猛将ながらいまいち大きな手柄を上げる機会がない六郷虎恭にしました。
「それでは虎恭よ、尾張侵攻までに親衛隊を使えるように鍛えておくのだ」
「御意、このような大役を頂けたこと恐悦至極にございます」
「やり方は虎恭に任せるから頼んだぞ」
これが最大の失敗なのでした、虎恭が張り切り過ぎた結果三千人もの脱落者がでました。
「最精鋭にしなければと思いまして」
じゃねえよ、三千人については原隊復帰としました、そこで最精鋭という言葉に惹かれた私は親衛隊を黒一色に染め上げた部隊にしてみました。
「これは親衛隊らしさがでてきましたね」
親衛隊らしさってなんだ? 一瞬虎恭も未来知識持ってるのかと思ったけど、こいつ反射で会話してるだけだと気付きました。
親衛隊の訓練も済んだのと刈り入れが終わった為陣触を出しました。
陣触が出た後に馳せ集まる事を着到といいます、そして到着しましたよ、ということを示すために着到状を提出してそれに大将などが承了と示して更に花押を押して返却して後日の恩賞の証拠とされます。
しっかしこれが軍勢四万分ですよ、いくら二文字と花押を押すだけとは言えとてつもなく大変なのです。
「殿小身の者まで殿が書かなくてもいいのではないですか?」
「身代が大きく無くても我が陣触に答えた以上大切な家臣だ、碌の多寡で扱いたくない」
何て格好つけた私を褒めるべきなのか叱るべきなのか、今更手伝ってともいえないので困ったものである。
終わった、着到状との戦いがやっと終わったのです、後は現地で待機している宗矩と守房だけですね、ちなみに終わった頃には承了という文字だけ上手くなっていました。
「殿」
「なんじゃ」
「今度から承了は祐筆に書かせて殿は花押をおすだけにしては?」
「なぜもっと早く言わん!」
「花押も任せてしまっては?」
「さすがにそれはいかんじゃろ。それに着到状はきちんと見たい」
「そうなのですか?」
「どこの誰が私の為に兵を出してくれているくらい把握するのは大将の心得であろう」
「むむ」
「そちらも心得よ、簡単だが面倒な仕事を他人に押し付けていてはいつか痛い目に遭うぞ」
ようやく尾張に向け出陣です、ちなみに足が遅い大荷駄隊は馬車軌道を使い既に長島に到着しています。
長島までは領土なので当然暇です。
「長門、なんか話して」
というと藤林長門が現れますが今の私は親衛隊に囲まれている身、長門の前後左右から槍を向けられ動けなくなっていました。
「長門を解放せよ」
それで何とか長門は解放されました。
「いや、怖いね!」
「怖すぎます、八徳衆が可愛く見える程です」
「七衆相手でも容赦しないか、頼もしいが恐ろしいな」
「それでこんな怖い所に何用で?」
「行軍の間暇だから話相手になってほしくて」
「まあいいでしょう、殿この度の目的は」
「尾張の統一と土岐の挑発だな」
「尾張では戦らしい戦はほぼおきません」
「調略がすすんだか」
「ただ斯波と織田は調略禁止という事でしたのでそこで一戦はしていただくことになるかと思います」
「面白うないな、ついでに土岐と義視が出て来んかな」
「そうなると兵力的には拮抗するでしょう」
「拮抗状態になった時に日和見を決めた者の降伏は認めんぞ」
「畏まりました」
「ようやく長島か、しっかしでかいな」
「しかし役目を終えますな」
「まあ記念に取っておこう」
「しかし維持費が結構かかりますぞ」
「それが将来の観光資源になるさ」
そして長島に到着しました、到着したと同時に長門は消えました、あの消えるの少し真似ができるようになってきました。
虎恭に護衛されつつ長島城内を歩きますが広すぎ、正直宗矩も持て余していただろうなと思いつつ評定の間に、するとそこには七衆、奉行衆、奉公衆、譜代衆、外様衆が集まり一斉に頭を下げました。
「はは、これだけ集まると壮観だな、今ここに火をかけられたら羽津は終わりそうだな、頭を上げていいぞ」
「殿、そういうのは冗談でも口になさらないでいただきたい実現したら大変です」
「それもそうだな悪かった、しかしたまには羽津でも大評定をやるべきかね」
「重大事は大抵殿がすぐに解決してしまいますしな」
「虎則と虎永がいないのは点睛を欠く感があるな」
「帰還はまだ先なので?」
「虎則は明にいっただけだからな戦の最中に帰ってくるだろう、虎永は遠方に行かせている上現地の占領を命じているから時間がかかるやもしれんな」
「現地軍がつよいので?」
「いや、言葉が通じない」
「それは厄介な」
「まあそっちは虎永の器量に任せる、ついで尾張の事だ、まず熱田と津島についてだ」
「両者とも手に入れたいですな」
「私が尾張に入ってすぐに使者を送ってきた場合は良しとする、使者を送ってこなかった場合はこちらから一度だけ使者を送る、その後使者が来なかったら熱田も津島も焼く」
「何度か使者を送れば降るのではないでしょうか」
「忠盛勘違いしているようだが」
「何をでしょう」
「私は従わせるのであって従ってほしいのではない、それは今後も同様だ従わない者は焼く、従いたい者は安堵するそれは国人共も同様だ、私は両天秤にかけるような奴は認めない領地の位置的に無理とかいうのでは無ければ尾張に入り次第下らせろ、遠隔地で無理というのであればせめて書状をよこさせろ」
「承知つかまつりました」
「うむ」
「殿」
「なんだ宗矩」
「儂や守房殿も動きたいのですが」
「美濃が動きそうだ斯波との決戦に来るようなら宗矩と守房は大垣を落とせ、美濃が長島に来るなら守房と連携して叩き潰せ」
「承知しました」
「他に何か質問はあるか?」
「寺社の扱いはどういたしましょう」
「熱田は言ったとおりだ、それ以外は歯向かわないのであれば放置でいい、但し安堵状もださん」
「安堵状が欲しいと言ってきた場合はどうされますか」
「寺社政策は今別途に法度を作っているのだ、だから安堵状はだせん」
「分かりました」
「では尾張に向かう」
『はは』
津島と熱田は美味しすぎる是非とも掌中に入れたいが従わないならそれはそれでいい、問題は斯波と織田と美濃の動きか、美濃が無視してきたら厄介だな十年の停戦何て結んだ馬鹿だれだ、私なんだよな、あの時はこんなに状況が楽になるとは思わなかったんだよね、宗矩が斯波義敏を簡単に討ち取っちゃったから状況が楽になっちゃったのよね。
さて尾張入国です、津島と熱田は頭がいいか悪いかここで確認できるな。
「殿熱田神宮宮司の千秋加賀守季平殿が挨拶に参っております」
直接来たか、ばかではないようだね
「お初にお目にかかります千秋季平と申します、これからは羽津家に従います。ついては当神宮で保管している剣についてどうするかご相談したいのですが」
「羽津徳寿丸じゃ、剣はそのまま熱田においておけ、当家は形代を持っていればそれで十分じゃ、それと熱田は当家に従うということだったな」
「はい、全面的に」
「ならそのままでいい、そなたが熱田の面倒をこれまで通りに見るがいい」
「はは」
「行ってよいぞ」
「あれでは降した意味はあまりないのでは?」
「熱田を支配しているというのが重要なのだ、実効的な支配なぞ面倒なだけだ」
「津島の四家が一人大橋が来ました」
「ふむ」
「羽津様だか知れませんが津島は誰にも従いませんよ」
「よく言った!」
「え?」
「さっさと帰れ、そして津島と共に燃えろ」
「つ、津島を燃やすというのですか」
「従わないならいらん」
「さあ送り届けてやれ」
「そんなことしたら地獄に落ちますよ」
「丁度いい地獄とやらを見て見たかったのだ」
「お供します」
「よし、津島を焼け野原にしてやれ」
正直熱田か津島のどちらかを焼いて恐怖感を持たせたかったので丁度いいです。
津島商人の大橋某は自分たちがいて初めて津島が成立していると思っていたみたいですが、正直立地がいいだけです。
改めて人を集めて新生津島を作ることにします。
それからも様々な人々が挨拶に訪れて来て、力尽きて寝ました。
翌日も夕方頃まで挨拶攻勢が続き夕方頃になってようやく終わりました、丁度津島の消化も終わったようです。
大島某が再び震えながら現れて津島再建の許可をもとめてきたので。
「津島は羽津が新たに作り直す、今の津島商人は不要だ何処へでも行くがいい」
と言って追い払いました。
ようやく進軍を開始し守護所である清洲近郊で斯波軍が待ち構えているとのことなので向かうと斯波家の足利二つ引の隣に水色桔梗の旗印が見えます土岐家やっちまったな。
間違えてたら困るので一応確認させます。確認するのは親衛隊で一番声が大きい大越棟守さんです。
「そこに見える水色桔梗は土岐家と存ずるが我々との停戦を破るということか!」
流石は大越さん停戦の前に鼓膜が破れそうです。
「羽津家の行為はまさに悪鬼羅刹の如き、そのような家と停戦などしていては我が家が悪の仲間と思われるわ、何が停戦か外道が」
続けて悪口を言われていますが、全くその通りなので気になりません、早馬を宗矩と守房に出して大垣攻撃をさせたいと思います。
しっかし話がながいですね、今のうちに評定をしましょう。
「時間も無いので端的にいうよ、陣形は鶴翼最右翼に八徳が入って中央に私最左翼に朝倉で七衆で適当に後埋めといて」
「適当って」
「ほら急いで演説が終わっちゃうよ」
「勝つ自信は?」
「戦う前から勝つとは言えんな」
意外と斯波勢の旗色がいいですね、これは油断はできませんね、だが土岐お前の旗色の悪さはなんぞ?
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