第27話 学校
「この船はいいな」
「そうでございましょう」
「しかし二百隻とは水主の育成も重要だな」
「そんなに造れるんですかね」
「やると言ったらやる方だからな、その辺は心配していないが」
「が、なんですか」
「家臣の前で金が無いと言わないでくれると助かるな」
「そりゃあ、言われてもどうしようもないですしね」
「というより皆が必死になって金策を考えるようになる」
「良いことではないですか」
「我らは明との密貿易しか希望がないのだ、これが上手くいかなければ殿に褒めてもらえないでは無いか」
「あっしらは大殿様と会う機会もあまりありませんからよく分かりませんが、そんなに嬉しいもんなんですか?」
「殿に褒められた後の息子が誇らしくしてくれるのが嬉しいのだ」
「確かにお子様が喜んでくれると嬉しいですね」
「それと殿を舐めるなよ嘉兵衛」
「な、なにをでございますか」
「どうも噂なのだが、殿は陪臣は当然として陪々臣の名前も覚えているという話だ」
「ま、まさか」
「朝倉殿の家臣に加藤藤兵衛という者がいるのだが殿が何気なく藤兵衛の家臣の忠三郎という者に周囲の地形を調査するよう命じたのだ、忠三郎はそこの出身だったから土地勘があったらしい」
「それでどうなったんで?」
「陪臣というのは直臣とは違うからな殿が直接命令を本来は下せない、だからすぐに朝倉殿に謝罪し改めて朝倉殿に土地勘のあるものに周辺地形を調べさせたとのことだ」
「そりゃあすごいですね」
「当然嘉兵衛の事も知っていると思うぞ」
「そりゃあ光栄ではありますが」
「まあ、殿の事だそなたが無礼をしなければ何も言ってはこまい、忠三郎事件の後は意識して陪臣や陪々臣の名前はださないようにしているようだしな」
「何で事件なんで?」
「殿に名前と生地まで覚えて貰えていたことに忠三郎が泣き出して止まらなかったので事件となったのだ」
「忠三郎が武勇の士だったとかではなくてですか」
「ただの草履持ちだ」
「そりゃあすげえや」
「殿の前で油断してると、とっさに家臣の事を聞かれる可能性もあるから家臣の管理を真剣にやるようになったという話だな」
「もしかしてその為に忠三郎事件を起こしたのですかね」
「その可能性もあると考えている重臣は多いな」
「恐ろしい若様ですね」
「港がみえてきたぞ、その恐ろしい若様の為に銭をかせぐとするぞ」
そうだポトシだポトシ銀山すっかり忘れてた! 逆立ち何てしてる場合じゃないぞスペインより先に抑えないとしかしガレオン船は二隻とも出向中、そもそも今はガレオン船というハードが発達しているが日本の航海術なんてソフト面は恐らく高く無いはず、てことでミクロネシアを経由してのんびりする無のが一番の早道かポトシ遠いな。
ミッドウェー経由でハワイ取れないかな太平洋のど真ん中だしあると便利なんだがな
殿が再び逆立ちを始められた、大方様にもみっとも無いので止めるように言われているが善斎御坊は考えすぎて頭に登った血を戻しているのだろうから放っておけと言われてしまったどちらに従えばわからなく悩んだ私も逆立ちをしてみることにした、意外と難しいがなんとかなるか、とふと見上げれば殿が冷たい目で私を見ていた、抜身の刃をもって。
「お前はなんで主君の前で逆立ち何てしてるんだ」
「殿の真似をすれば考えが纏ると思いまして」
「はあ、もういいや出仕停止十日な」
「な、なんですと」
「忠盛にしぼられてこい」
ということで出仕停止十日になってしまったので父上がつけてくれた家臣と共に父上がいる霧山城に来ました。
きっと激怒されるだろうと覚悟をしてから理由を両親に話すと大笑いされてしまいました。
「父上も母上もなんですか、覚悟を決めて話したというのに」
「芳菊丸そなたが疲れているのだと殿が看破されたのじゃ、だから休暇をくれたのよ」
「そ、そうだったのですか」
「じゃなければ殿の前で逆立ちをしようなどと思うまい」
「それはその通りでございますが」
「まあ大人しく謹慎という名の休暇を楽しむがよい、そういえば晴寿丸もそろそろ若の所に送るべきかの」
「それについてなのですが父上、晴寿丸は朝倉の政治を担う人物になりとうございます」
「あえて殿の元にはいかず父の元で学ぶか、しかしそなたの寿の字は殿からいただいているのだぞ、不義理でないか?」
「殿には謝罪の手紙をだしとうございます」
「意外と頑固じゃしな、まあ良い近々殿の元のに行く用件があるからその時に話しておこう」
「ありがとうございます」
ポトシを手に入れることで財政面の目途は付いたが鉱山頼みの財政は健全とはいえないかな、やはり日本中の商業をあげていかないといかんな、ゲームみたいに銭ニ十を投資すれば商業が三上がるとかになれば楽なのにな。
ガレオン船たちがまだ陸上の近海を進んでいるうちは良いが太平洋にでるようになると天測航法が必要だよね、そのためには航海年鑑も必要かな? しかし私はそこまで詳しくないからな、熟練の航海士に命じて研究させるか、古湊の嘉兵衛なんかがいいかな、ただ虎則の顔を潰さないように虎則に命じるとするか。
と考え事してると朝倉忠盛と共に芳菊丸が帰還した。
「此度は我が息子がぷぷぷ」
てな感じで半分笑いながら、芳菊丸の事を謝罪していた、当然芳菊丸は憮然とした表情をしていた。
「もうよいから今日は休暇をやる明日から職務にもどるように」
「はは!」
「しかし倅が殿の前で逆立ちをするなどと」
「正直芳菊丸が狂ったのかと思ったわ」
「それで次男なんですが」
「晴寿丸はこないのか」
「よくお分かりで」
「そんなに言いづらそうにしてたら流石にわかるわ、理由はなんぞ」
「当家の家老になりたいと」
「ふむ、朝倉は今後も大きくなるだろうしな、一門の家老が複数人いた方がいいか」
「お許しいただけますでしょうか」
「まあ本人の意思では仕方があるまい、一万石やる故勉強につかわせよ」
「流石にそれは」
「聞け忠盛、百石の領主には百石の治め方がある対して一万石の領主には一万石の治め方があるという訳だ、そちとて急に領土が増えて困っただろう?」
「確かに千五百石から五万石だったので苦労しました」
「晴寿丸には段階を踏んでの苦労なぞいらん最初から万石の統治の仕方を学ばせろ、それに朝倉を含め藤林以外の七衆は加増予定だしな」
「攻めるのですね」
「財政の目途が付いたからな親衛隊の設立が終わり次第尾張を攻める」
「財政の目途がたったので?」
「世界最大級の銀山がある場所を思い出してな」
「他にもあるのでは? さあ逆立ちをして」
「なんじゃそりゃ、まあするけど」
中南米の銀山を頭の中で考えた結果、メキシコのグアナファトとサカテカスが頭に浮かびました。
そしていつも通り受け身を失敗する。
「世界的な銀山を二つ思い出したぞ」
「逆立ちは効果があるのですね」
「そんなことは知らん、それより忠盛何しにきたのか? 息子の謝罪の為だけにはこんだろう、手紙で済む話だしな」
「お任せいただいている馬車軌道に関してです」
「ふむ、楽しそうな話みたいだな」
「儲けが出すぎていかがしたものかと」
「軌道を鉄に変えるか?」
「すでに終えております」
「馬車側も車輪を鉄にするか?」
「それも終えました」
「鉄道維持のために多少の積み立てが必要だと思うが?」
「それも十分に」
「尾張を落とせば尾張にも延伸するぞ、その費用にしたらどうか」
「それも計算済みです」
「え、皆そんなに使ってるの?」
「行商人から大店まで広く使われています、さらには伊勢神宮参りが流行っておりましてそれにも使われております」
「そんなに頻繁に使える程安かったか?」
「当家は税が安いですからな」
「そんなに安くしたつもりはないが」
「四公六民は十分安うございます」
「そんなに余っているなら学校作ろうか」
「足利学校みたいにですか?」
「足利学校よりは広く人を集めたい、これからは色んな学問が必要になる、その際に身分を気に掛けていては有能な人材は集まらん、百姓だろうが武士だろうと関係なく学べる学校を作るぞ」
「教える者はどうするのですか?」
「最初は坊主どもでいい」
「殿は坊主からあまり好かれていませんが」
「坊主どもが欲しがっている安堵状をくれてやっていい」
「それなら集まりそうですが、字が読める者など一握りですぞ」
「字など教えればいいだけの話だ、口頭で問題を出してその答えによって入学の是非を決めればよいのだ、こちらは文学校とする、同時に軍学校を作るぞ、こっちは完全に武士を養成するための学校だ陸軍校と海軍校を作る」
「文官を育成するための学校と武人を育成するための学校ですか」
「正直文も武も慢性的に人が足りていないからな両校とも津に作るぞ、奉行は任せた」
「校舎の大きさとかはどうなさるので?」
「まだ実験段階だからな、適当に大きめに作っておいてくれ、伊勢中から人を集める予定だから宿泊施設を作るのだぞ」
「仕事の報告に来たら、新たな仕事が増えるとは」
「仕事なんてそんなもんだ、学校建設で私も仕事が増えることになりそうだしな」
ということで学校を作ることにしました、正直攻勢にあまり出られない理由が文官の不足にあるからね、何時作るかという問題だったのです。
そして忘れがちな親衛隊の創設、希望者から募る予定なんだけど誰も来なかったらどうしよう。母上に抱き着くことにする。
仮の話だけど希望者が多すぎたらどうするかっていうのも問題なんだよね、まあ多少は上限上げてもいいけど、現在の上司に推薦状書いてもらうとか? それ全部私読むの? そして一番重要な問題として指揮官をどうするかだよね。
取り敢えず尾張攻略は親衛隊が決まってからにしましょ。
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