第14話 加藤孝吉
ちなみに農兵達はすぐに出番があるので羽津城しばらく留まらせることとしました。
話は変わって信長は大高城の付城として鷲津砦と丸根砦を築いたりと義元の行動の動線をある程度コントロールしていたのが、似たような状況になって分かった。
やっぱ信長さん名将っすわ,太源雪斎が生きていればまた違ったのかな?
信長さんを褒めてもしょうがないし、今できる精いっぱいをしなければいけないと思いますが、朝明川の戦いで叩き潰しすぎて斎藤妙椿は更に軍勢を増やして三万近くになっています。三万対三千で勝つにはどうすればいいのか。
斎藤妙椿が死ぬのは未来人の知識だと文明十二年、つまり後七年は生きているのか、寿命待ちも出来ないとなると策は一つか。なんかやたら猛将揃いになってきているし行けるかな?
評定の間に行くと、鈍よりとした空気が漂っていました。
「なんだ、普段は煩いくせに今日は静かだな」
「しかし若、三万ですよ三万!」
「長門敵の布陣は? 三万が固まって行動しているのか?」
「いえ、この間叩きのめした斎藤利国が先鋒として早々に伊勢に入っていますが他の隊はまだですね」
「何故か?」
「若の首が欲しいのでしょう」
「なるほど、功名欲しさに私を狙っているため、伊勢に送る順番を斎藤妙椿が迷っているのか」
「陣立ての順番は大事ですからな」
「ふむ、取り敢えず斎藤利国を叩き潰すとしよう」
「清吉、今度は首を取りに行っていいぞ」
「へい、がんばりますだあ」
「出陣だ!」
私の真似をして朝明川を背にして布陣していたので、仮に策などあっても関係ないとばかりにそのまま突っ込んでみました
すると
「斎藤利国うちとっただー」
誰の声か分かりやすい声で大手柄上げる奴がいた。しっかしすごいな、まだ一刻も立ってないんですが
「敵将、成田秀元が討ち取った」
「全軍前進だ掃討戦に移る」
「逃がさないので?」
「逃げたところで斎藤妙椿の元にいかれるだけだ」
「わかりました、掃討戦に移れ!」
「これで五千を潰しこちらは少数の負傷者か、二万五千対三千か気が重くなるな、長門、敵の動きは?」
「ようやく二番隊が伊勢に入った所です」
「よし奇襲を仕掛けるこれからは丁度夜になる」
「急がれますね」
「急がないと斎藤妙椿の本隊が動く、一気に行くぞ!」
二番隊は石丸利光を主将とした部隊であった、先手争いという面倒があったこととまだ伊勢に入ったばかりということが彼を油断させました。
「大将とみただ、覚悟するだ」
加藤清吉には不思議と相手の大将をかぎ分ける特技を持っていたので、またもや大将首にありつけました。
「大将とったど!」
こうなると新月であることもあり恐怖心から同士討ちを始めてしまいました。我が軍はそれを離れて混乱が収まったら改めて突撃といきますか。
問題は加藤清吉だな手柄を上げすぎる、領土を上げようにも今の碌で間に合っているとか言う、農民上がりな事もあって領地経営の自信がないんだろうが、あれ程の手柄を上げているものに褒美が無しという訳にはいかない。この戦い以降に専用の槍でも打たせることにしようかな。
さてそろそろ斎藤妙椿も煮詰まってきたことだろう、今度こそ二万対三千弱で正面切ってたたかうことになるか、まあ丁度いい地形も見つけれたから勝機はあると思うが。
「利国が討たれただと! なんたることだ」
「御注進」
「なんだ? 今は機嫌が悪いぞ」
「石丸利光様討ち死に」
「なんだ、伊勢には一体何がいるというのだ」
「第三軍を戻されて全軍で動くのが良いと思いますが」
「羽津の兵力は三千か二万いれば確かに手を出すのは不可能だろうが」
「数の恐怖というのを教えてやろうではありませんか」
「進め利国と利光の仇を討つのだ!」
「妙椿は今どのあたりだ」
「本陣は五千程で多度山の麓に他の三軍はそれを囲むように布陣しています」
「つまりこちらの位置は掴んでいないということか、火縄の出番だと思ったが次に回すか、揖斐川と長良川を渡り多度山の後ろに周りこみ逆落としをして一気に妙椿の首を上げるぞ、良いか妙椿以外の首は討ち捨てでいい」
「結構大変な道のりですが敵の監視はそなたらに任せればいいのであろう」
『おまかせあれ』
そして苦労もありつつ寄る前には多度山の山頂付近に到着することに成功しました。
「少し休憩を取った後は一気にいくぞ!」
「準備は出来ております」
え、この人達疲れないの? 私が五歳だから疲れてるだけだよね?
「よし、うん?」
「若、驟雨にございます。早く陣幕にお隠れ下さい」
「我勝利を得た! この雨の音では我らの音は聞こえまい、一気に下るぞ」
そしてこの体では一番に降るの何て無理なので
「景兼離せ私が一番槍をとるのだ」
「無茶言わないで下さいよ、第一若は槍もってないではないですか」
「加藤清吉一番槍!」
「うわ」
「どうなされましたか」
「また清吉が武功上げてるよ」
「お嫌いなのですか?」
「そんな訳はない。あ奴無欲だから何渡そうとしても断りよる」
「君主泣かせなのですね」
「そういうことよ」
私達が妙椿の陣地に到着したことにはすでに戦闘は終わっていました。
「思っていた以上に脆かったのか?」
「それが妙椿は我らが来ると同時に逃げを打ちまして」
「なるほど、大将に逃げられたら雑兵なぞ戦う理由もないか、取り敢えず雑兵共には縄をかけておけ、そしてこれから妙椿がくるぞ陣を固めて陣城を作り上げるぞ」
「来ますか?」
「来るだろうよ、逃げ場のない探していた三千の兵がここにいるのだ、ここにいる敵を壊滅した訳では無いのだから二万は切っているだろうが近い数が来るぞ。三千で二万弱相手の防衛戦は滅多に出来る事ではないからな楽しませてもらおう。妙椿が軍を纏めてくるまで恐らく三刻くらいだ出来る限り良い陣城をこしらえろよ」
「陣城をこしらえても厳しいかと」
「本当は真っ当に妙椿を殺したかったが、やむを得ない火縄を使う」
「二百の火縄が遂にその力をみせるのですね」
「弾薬もそれほどないからな、指揮官級をひたすら狙う」
火縄の運用について話していたら小国虎義が
「若大体出来上がったので見分をお願いします」
「分かった行こう、えー!」
陣幕を出ると思った以上に立派な城が出来ていました
「これは城を撤去するの勿体ないな。戦いが終わったら対美濃の為の城として本格的に整備した方が良いかもしれないな。それと長島にも城を作りたいな。この多度山城と長島城で尾張と美濃を見張るのだ」
「それは随分先の話になりそうですな」
「実はそうではない」
「といいますと」
「今回の斎藤家の出兵のせいでこの辺りの諸豪族は壊滅したため、ほぼ空き地なのだ、当家が接収して北勢を制覇する。まあ見て見なくてもわかるくらいぼろぼろだからな再建に数年必要だろうが」
小国虎義と話していると長門が乱入してきた
「来たか?」
「来ました」
「長門殿数は?」
「二万近くとしか」
「虎義、虎政総指揮は両名に任せる。私は火縄部隊を指揮する」
「承知仕りました」
「さて火縄隊は初実戦だな緊張しているだろうが、深呼吸でもしてくれ」
「若あっしらは普段は足軽として戦線に立ってますので緊張なんでしませんですぜ」
そう言って私を茶化してきたのは鉄砲奉行の新井田大介です。
「それは困る、弾薬は各自十数個しかないのだある程度緊張感持って撃ってもらわなければ困る」
「ははは、そりゃそうですな」
「頼んだ」
「承知」
一気に武人の顔になるから武士は怖いわ。
「大介」
「は!」
「適当に偉そうな奴を狙え」
「妙椿を狙うのでは?」
「そちは妙椿の旗印を知っているのか?」
「いえ、知りません」
「では顔は」
「知っていたとしてもこの距離では」
「そういうことだ、妙椿など狙えん、故に上級の武士を狙う。そこで慌てふためく侍達がいる所に妙椿が居る、そこを見逃すなよ」
「なぜそこに妙椿が居ると?」
「上級武士が見知らぬ攻撃でやられているのだ、そうなると大将を守らねばと動くのが武士というものよ」
城門付近を見てもよく戦ってはいる、しかしそもそも籠城をしようと思って物資を運んできてはいない、三日持てばいいほうか。
鉄砲の方もいまいち運用が良くはない。鉄砲奉行の新井田大介は鉄砲奉行としては初陣もいいところだからな、大介に預けている二百の内百を私が指揮するか? だめだな大介から自信を失わせるうえ私は火縄の専門家ではない、どこまで届くかわかりゃしない。
つまり私はここで討ち死にするか妙椿を討ち取るかの二択なわけだが、ちと分が悪いな。まさか妙椿が一目散に逃げるとは思ってもみなかった。考え事をしながら火縄の飛ぶ方を見ていたら妙椿の陣が崩れた。まさか?
「虎義好機だ城門から出て妙椿を押してみよ」
「畏まりました」
それを見て虎政に任せていた方面も崩れた為
「虎政も城門から打って出ろ」
「は!」
「鉄砲隊は引き続き偉そうな奴を狙え」
「斎藤妙椿の首とったべさ!」
何なのこの加藤清吉、異常にに強すぎて怖いわ。
「全軍一気に押せ美濃勢に伊勢は怖い所だと教え込んでやれ!」
ちなみに逃げる敵の首を取っても追首と言ってさほど評価されない。後雑兵の首や白歯武者(未熟な者)も同様にいくらとっても数首と言って評価されない。
そして一番槍と一番首と大将首を上げる化物の様な強すぎる当家の猛将が加藤清吉である。もはや何を褒美とすればいいのか、ってことで閃いた。
「清吉よ、私は元服した時の名を忠孝とするつもりだそこで、そちの今の名を変え加藤清兵衛孝吉と名を送りたいと思うがどうか?」
加藤清吉改め加藤孝吉は人目があることも忘れて泣きじゃくって喜んでいた。
これで功には報いることが出来たわけだ、ついでに侍大将にしておこっと。
後は美濃との和平交渉です。首取り過ぎましたがどうしましょうねこれ。
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